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共働き家庭における育児

公開日: : 子育て

ラーメンだのあややだの一体何のブログなのか方向性を見失うようなエントリーが続いたので(それもまた良しなのだが)少し真面目な話題を。
takashiさんのさいころじすと日記児童虐待に関するエントリーが続いています。非常に充実しており、納得できる内容なのですが、一点、些細なことではありますが私的にはひっかかってしまった部分があります。


takashiさんが言うところの

個人、家庭、会社、地域社会、国といったあらゆるレベルで養育力・教育力・問題解決能力が低下している

の「家庭」レベルでの養育力・教育力・問題解決能力に当たる部分であろうと思われる以下の点

共働きしないとやっていけない状況(少なくとも3歳ぐらいまでは、どちらかの親が休職するか仕事を減らして育児に入れる力を増やして欲しい)

…ここなんですが…takashiさんは3歳児神話(3歳までは母の手で育てなければならないという考え方)の信奉者ですか?
確かにここでは「どちらかの親が」とありますから、少なくとも「母親が育児をしろ」と言っているのではないことはわかります。で、例えば私自身のことを例にとれば、実際それが可能であるならば私が育児休暇を取って育児に専念したいくらいの考えが無いわけではありませんが、ただ今の私にとっては仕事も非常に大切です。私にとっての仕事は単に生活の糧を得る以上の意味を持っています。そうした理由から、今の時点では私は仕事を辞めるつもりはありません。
じゃあ私の妻はどうかというと、私は妻も仕事は辞めない方がいいと思います(本人は辞めたい辞めたい言ってますが)。私は私の妻を専門職人として尊敬しています。彼女のような人間が仕事を辞めるのは職場にとっての重大な損失であり、対人援助職でありますからそのために得られるはずの利益・恩恵を受けられなくなる人も出てきます。まあ、そこには経済的な問題もないわけではありません(なんせ夫が常勤とは言え不安定極まりない「心理職」ですから)。
こうなってくると世の中の趨勢としてはやっぱり「母親の手で」ということになってくるのかと思いますが、その点についてちょっと手元にあった本を引用してみたいと思います。

しかし、保育園で育った働く母親の子どもと家庭で母親に育てられた子どもとの間には、心身発達上、何ら有意な差はなく、母親が働いていること、保育園で育つことは子どもに対してマイナスの影響はないことが誕生から6歳までの継続健診データで確認されている(服部・原田, 1991)。また、近年盛んな多重役割についての研究でも、家族役割と職業役割を持つことが時間的身体的負担は大きいものの、母親の心理的充足感や幸福感を高めることも明らかにされつつある(小泉, 1998;土肥, 1999)。このように親による子育ての絶対性は認められず、働く母に対する世の憂慮や批判は杞憂であることがあらわになっている。保育園に子どもを預けることに対して、現在そうしていない母親(“母の手で”を実践している母親)さえもそうすることが母親にも子どもにとってもいかにプラスかを認めている(柏木・蓮香, 2000)。

引用文献
土肥伊都子 1999 “働く母親”,多重役割の心理学. 個人化する家族
 のなかで. 東洋・柏木惠子(編), 流動する社会と家族I, 社会と家族
 の心理学, ミネルヴァ書房.
服部祥子・原田正文 1991 乳幼児の心身発達と環境-大阪レポートと
 精神医学的視点. 名古屋大学出版会.
柏木惠子・蓮香園 2000 母子分離<保育園に子どもを預ける>につい
 ての母親の感情・認知:分離経験および職業の有無との関連で. 家族
 心理学研究, 14(1), 61-74.
小泉智恵 1998 職業生活と家族生活:“働く母親”と“働く父親”.
 柏木惠子(編), 結婚・家族の心理学, ミネルヴァ書房.

とまあ、こんな感じで仕事を辞めてまで親が育てなければならないという必要性は、少なくともこうした研究の上からは認められません。むしろ親が家族役割や職業役割などいくつかの役割をもつ中で子どもと関わることに加え、子どもが幼い時から複数の対象との愛着を形成しうること、複数ネットワークを持つことが重要である、という意見も出てきています。
といったように、両親が働いているということは子育てにおいて必ずしもマイナスにはならないとのいくつかの研究結果が出ていますが、みなさんはどう思いますか?「そんなことはない!」と思ったりする人もいるのでしょうか?ご意見いただけるとうれしいです!
…なーんて偉そうなことを言いつつ、別居生活を余儀なくされているため私個人としては満足に育児はできていません。そんなわけで明日は久しぶりに娘に会えます。妻は午前中仕事でいませんし、たっぷり二人きりの時間を味わいたいと思います。
#なおこのエントリーはtakashiさんのエントリーに対して重箱の隅をつつくようなツッコミをしてやろうなどというつまらない意図に基づいたものではありません。元々書きたかった内容だったのですが、今回のきっかけはたまたまtakashiさんの記事だったということで…お許し願えますか?>takashiさん。
参考文献

子育て臨床の理論と実際
日本家族心理学会

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2005/03/04 | 子育て

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コメント/トラックバック (10件)

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  1. ずっと働きたいと考えている私にとっては、なんだか安心する研究結果です。
    でも、なんだかとても難しい問題ですね。私のように働きたいと思っている女性にとっては、仕事は生きがいであったり、生活に精神的にも豊かさを与えるものといえるでしょう。
    けれど、特別働きたいと思っているわけでもないのに、経済的な理由から働かなければいけない人にとっては、仕事と育児の両立は苦痛でしかないのかもしれません。
    その結果、仕事のストレスから虐待につながるということも考えられますよね。
    私は、子どもが虐待されるという危険を防ぐために、両親にたくさんの選択権をあたえてほしいなと思います。
    それは、育児休暇がもっと取りやすくなることであったり、国から経済的な支援を受けれることであったり、家族や地域の人から援助がうけられたり…。
    takashiさんのコメントも私は、3歳児神話とは関係なくそう(育児に入れる力を増やす)できたらなあと思います。
    子育てをしていない私がいうのもなんですが、子どもは3歳ぐらいまでが一番手がかかるんじゃないんでしょうか?
    その間、子どもができる前とかわらない仕事の量というのもずいぶん厳しいという気がします。
    それにしても、明日はデートなんですね。。
    うきうきですね(笑)
    きっと、たくさんの娘さんの写真がブログで見れますね。。

  2. >あげはさん
    コメントありがとうございます。
    > けれど、特別働きたいと思っているわけでもないのに、
    > 経済的な理由から働かなければいけない人にとっては、
    > 仕事と育児の両立は苦痛でしかないのかもしれません。
    > その結果、仕事のストレスから虐待につながるということも
    > 考えられますよね。
    確かにそれはその通りだと思います。
    育児「したいけどできない」状況ってのはまさに虐待などに繋がるかもしれませんね。
    > 両親にたくさんの選択権をあたえてほしいなと思います。
    > それは、育児休暇がもっと取りやすくなることであったり、
    > 国から経済的な支援を受けれることであったり、
    > 家族や地域の人から援助がうけられたり…。
    同意です。そしてその中には「働き続ける」という選択肢もあるのでしょう。そのための支援体制作りというのは今後必要不可欠だと思います。
    > その間、子どもができる前とかわらない仕事の量というのも
    > ずいぶん厳しいという気がします。
    仕事の量というよりはその成果の質というか得られる満足が大切なのかも。それを親のエゴと呼ぶのはまた何か違うんではないかと思うんですね。
    > うきうきですね(笑)
    > きっと、たくさんの娘さんの写真がブログで見れますね。。
    もううきうきですよ~。なんかそんな娘の写真ばっか貼ってもいいんでしょうか?アクセス数減りそー…ですがきっとやっちゃうんだと思います。

  3. 三歳児神話から逸脱

    親愛なるロテ職人さんが、どんどん暴走しております(好感度かなりアップです)。
    TBが全部「あやや系」になる日は近いでしょう。
    で、彼のblogで遊んでこようと(笑)。
    が、ひっかかりどころがどうやら同じだったようなので、コメントのかわりに記事にすることにしました
    ロテ職人様
    柏木惠子先生の著書を追っかけてこちらのサイトにたどり着きました。
    ロテ職人様の事は”臨床心理士になりたい人のためのサイト”でよくお名前を拝見しておりました。
    私が探していた文献は、
    ”母子分離<保育園に子どもを預ける>についての母親の感情・認知 分離経験および職業の有無との関連で”
    でした。
    一般の書店でも手に入るのでしょうか?
    私は大学院入試の際提出する研究計画書で
    「保育園での養育者と子どもとの朝の”別れの儀式”についての観察と研究(仮題)をテーマの小論文を書こうと思っており、
    先行研究となる文献を探している最中です。
    ”別れの儀式”というのは”でんぐり返し”と”握手でバイバイバイ”のことなのですが、
    ロテ職人様はこの二つの保育園で展開される母子コミュニケーションについての
    文献をご存じないでしょうか?
    もしご存知でしたら、お教え下さいませ。

  4. すみません。まともレスを期待されていた方<ロテ職人さん以外で
    とりあえずTBさせていただきましたが、愚痴で構成されていますので「愚痴なぞ読みたくないわ」という方、やさしく放置してやってください。
    ではでは。娘さんと楽しんでくださいね♪

  5. 私は、ロテ職人さんの娘さんの写真見るの好きですよ。。
    難しい内容の多いブログの中で、ほのぼのとしたものを感じて安らぎます(笑)
    そんな意味で、ロテ職人さんのご飯の写真も好きです。。
    「子どもができる前とかわらない仕事の量」という発言は、主に時間についてです。
    夜泣きでほとんど寝れなかった時にも朝9時に出社して5時まで勤務というのはかなりハードだと思うので。
    「夜泣きは休日前」になんてことはできないですからね。。
    普通の会社だと週5、6日勤務だと思いますが、出産後3年までは週3日にするとかできたら、仕事と育児の両立がしやすくなったりするのではないかなぁと…。
    それができればかなり理想的な会社なんですけどね。。
    せめて、午後出勤ができるぐらいの仕事の量になればずいぶん楽になるのではないでしょうか。。

  6. [つれづれ][時事問題]見解、というか釈明か!?

    [http://blog.livedoor.jp/rotemeister/tb.cgi/15599632:title]から前回の投稿の >> 共働きしないとやっていけない状況(少なくとも3歳ぐらいまでは、どちらかの親が休職するか仕事を減らして育児に入れる力を増やして欲しい) > …ここなんですが…takashiさん
    ロテ職人様
    柏木惠子先生の著書を追っかけてこちらのサイトにたどり着きました。
    ロテ職人様の事は”臨床心理士になりたい人のためのサイト”でよくお名前を拝見しておりました。
    私が探していた文献は、
    ”母子分離<保育園に子どもを預ける>についての母親の感情・認知 分離経験および職業の有無との関連で”
    でした。
    一般の書店でも手に入るのでしょうか?
    私は大学院入試の際提出する研究計画書で
    「保育園での養育者と子どもとの朝の”別れの儀式”についての観察と研究(仮題)をテーマの小論文を書こうと思っており、
    先行研究となる文献を探している最中です。
    ”別れの儀式”というのは”でんぐり返し”と”握手でバイバイバイ”のことなのですが、
    ロテ職人様はこの二つの保育園で展開される母子コミュニケーションについての
    文献をご存じないでしょうか?
    もしご存知でしたら、お教え下さいませ。

  7. 今日は、待ちに待った娘さんとの再会ですね。
    また、お写真お待ちしています(笑)。

  8. 働きつつ育てやすいタイプの3歳娘と5ヶ月息子を育てております。
    どちらも生後2~3ヶ月くらいで仕事復帰をしておりますが、
    特に3歳までが手がかかる、という感触はないです。
    確かに3歳未満は身辺自立前なので、そういう手は必要ですが
    0歳児であれば同居の祖父の抱っこで満足するのに3歳児は「お母さんがいい」と叫びますので、
    結局手が掛かります。
    3年間、彼女の対人発達も眺めながら育ててきましたが、
    エリクソンの発達段階の話も込みで、私が仕事を減らす必要は感じませんでした。>takashiさん
    それこそ広義の3歳児神話だと思います。

  9. いつもROMで楽しませていただいております.
    「3歳くらいまで...」の話は虐待の文脈で考えると,ロテ職人さんの指摘なさった子供の発達の問題だけではなく,大人の加虐性の問題としてとらえることもできるのかなと思います(Takashiさんの意図とは違うかもしれません).
    進化心理学が興味深いデータを提供しています.実物が手元になくうろ覚えになるのですが,ご容赦を.
    子供への虐待は実子よりも継子に多く起こります.継子に対する虐待は同居開始年齢が上がるほど多くなります.これらは乳幼児期に共有した時間が少ないと虐待が起こりやすいことを示唆しているのかもしれません(デイリー・ウィルソン「人が人を殺すとき」新思索社).
    これらはほかの解釈も可能ですし,本当の問題の焦点は別のところにあるのかもしれません.また,時間が少ないから虐待が生ずるという因果関係の推論を許すものでもありません.ただ,「3歳ぐらいまで...」の話は子供の発達以外の視点から考えてみる必要もあるのではないかと思わせる知見だと考えます.

  10. ロテ職人様
    柏木惠子先生の著書を追っかけてこちらのサイトにたどり着きました。
    ロテ職人様の事は”臨床心理士になりたい人のためのサイト”でよくお名前を拝見しておりました。
    私が探していた文献は、
    ”母子分離<保育園に子どもを預ける>についての母親の感情・認知 分離経験および職業の有無との関連で”
    でした。
    一般の書店でも手に入るのでしょうか?
    私は大学院入試の際提出する研究計画書で
    「保育園での養育者と子どもとの朝の”別れの儀式”についての観察と研究(仮題)をテーマの小論文を書こうと思っており、
    先行研究となる文献を探している最中です。
    ”別れの儀式”というのは”でんぐり返し”と”握手でバイバイバイ”のことなのですが、
    ロテ職人様はこの二つの保育園で展開される母子コミュニケーションについての
    文献をご存じないでしょうか?
    もしご存知でしたら、お教え下さいませ。


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