- 2006-05-17 (水) 8:00
- 臨床心理学
私もそれなりの期間この業界にいたりすることもあって(ってもまだまだ若手、ひよっこではありますが)、人に教えたりする機会があったりします。とは言っても私なんぞが教えられることはロールシャッハを中心とした心理アセスメント位しかないんですが、その辺についてちょっと思うところなぞ書いてみたいと思いますよ。
…と、その前にまずは私がロールシャッハを教えてもらった時のことを思い出してみましょうか。
私が育った研究室の伝統としては「ロールシャッハを教わる前にまず(習熟した人に)とってもらう」ってのがあります。私自身は大学3年次の冬?でとってくれた先輩はそのときD2だったと思います。よく「授業でとり方を教えてもらった後に学生同士で相互にとりあう」ってやりかたありますよね。あれはちょっと…と思いますですよ(理由は後述)。
で私らの場合、その後スコアリング・解釈について練習問題などをこなしつつ教わり、最終的には自分のロールシャッハをスコアリング・解釈する…というような感じになっておりました。もちろん、その後かなりのケース数をこなして「ようやく半人前」ってところですかね。
これは教わる場合に限らず実際の臨床場面においてもそうなのですが、「最初に受けるロールシャッハ(あるいはその他の投影法)」ってのは、かなり貴重な体験なのではないかと思うのですよ。なぜなら…ロールシャッハを知っている人はその理由が分かると思いますのでここでは書きませんが、その貴重な機会を「(お互いに)練習台」として、しかも中途半端に知識を持ってしまった状態で経験してしまうなんて非常にもったいないことだと思いますよ。
例えるなら「まわりのみんなはもう済ましちゃってるから、私も早く捨てたい!」なんつって、つまんない男に処女をあげちゃうくらいもったいないですよ。若さ故の過ちですよ!(←意味不明)
学生さんなんかが書いているブログを見ていると、たまに「授業でロールシャッハ教えてもらいました☆」とか「友だちととりあってその結果をレポートで提出です☆」とか書いてあったりするんですが、そういうの見てると「教えてる人間はちゃんとわかってんのか?」とか思っちゃいますな。これを読んでる皆様が教わった時は…どうでしたか?
・・・・・・・・・・・・
あー…あと、学部生に対して教えるってことにそもそも違和感を覚えるわたくしですよ(って学部の時に教えてもらった私が言うのも何ですが…)。心理アセスメントの技法なんて現場に出ない人にとっては無用の長物以外の何物でもないじゃないですか。「教養として知っておくのはムダではない」とかって意見もあるかもしれませんが(あるのか?)、そんな教養、持っている方が持ってないよりも明らかに弊害が大きいですよ。
…身に覚えるある方はいませんか?
もし「その講義に出ている学部生は全員将来現場に出る人だから、教えても問題ない」…って大学・学部・学科があったとしたら、あるいはそういう教員がいたとしたら、それはかなりの高確率で「糞」確定です。全員が大学院試験及び臨床心理士試験に合格する保証はどこにもないわけですから。内部受験が有利で、それこそ内部の学生が全員合格してしまう大学院だったりした日には、もうその時点で「糞」確定ですわな。
…身に覚えのある方はいませんか?
なんだか長くなりそうですし、長くなると読む気が失せるってことはしばしばありますのでとりあえずこの辺にしておきたいと思います。もうちっと書きたいことがあったりするので(教え方・教わり方の具体的なところなど)、シリーズ化決定です。
この件に関してご意見・ご感想などありましたら、コメント欄にどしどしどーぞ。なかなかお返事を返せず申し訳なかったりもするのですが、ご意見・ご感想・叱咤激励・罵詈雑言お待ちしております(最後のは余計)。
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コメント (Close):12
- ナルホド 06-05-18 (木) 0:56
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「この講義に出ている学部生は、将来現場に出る可能性があるから、より興味を持ってもらうためにも教えたい!」…って大学・学部・学科・教員がいたとしたら、それはかなりの高確率でよい先生でしょう。誰を見て教えるかですよね。
- BlogStation 06-05-18 (木) 4:10
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http://www.blog-station69.com - たかこ 06-05-19 (金) 0:12
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ロテ職人さま
ちょっとエントリの内容とは逸れてしまう質問で申し訳ありません。(逸れまくりだったら,ぜひ無視してくださいませ)
>私もそれなりの期間この業界にいたりすることもあって(ってもまだまだ若手、ひよっこではありますが)、
あのう,もし可能であれば教えていただきたいのですが,この業界における「若手」「ひよっこ」というのは,純粋に「期間」に限定して考えた場合,どの程度の期間をロテ様は想定しておられるのでしょうか?
実際は「期間」だけの問題では全くないと私は考えておりますし,ロテ様もそのようにお考えではないかと推察しておりますので,期間という基準だけに限定してのご回答が難しいのであれば,ロテ様のお考えになる「若手か否か」「ひよっこか否か」の基準について教えていただけると嬉しいです。
過去のエントリでそのような記述があって,私が見逃していたら,大変すみません。その場合はエントリを教えていただければ幸いです。 - wek 06-05-19 (金) 0:51
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ロールシャッハテストは信頼性と妥当性が乏しいと言われているので,それを教えているというのは,どんなものでしょう?
- ロテ職人 06-05-19 (金) 8:03
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>wekさん
> ロールシャッハテストは信頼性と妥当性が乏しいと言われているので,
> それを教えているというのは,どんなものでしょう?
「信頼性と妥当性が乏しい」という意見もありますが、「信頼性と妥当性はそれなりにある」という意見もありますな。
重要なのは一方の見方に偏るのではなく、常に批判的な視点を持ちつつ検証していく姿勢というか行動なのではないですかね。
少なくとも私は、「使い方さえ間違わなければ」(←ここ重要)ある程度の信頼性と妥当性があると思っておりますので、それを踏まえていれば教えること自体は問題がないと思っております。 - ロテ職人 06-05-19 (金) 8:15
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>ナルホドさん
> 「この講義に出ている学部生は、将来現場に出る可能性があるから、
> より興味を持ってもらうためにも教えたい!」…って
> 大学・学部・学科・教員がいたとしたら、
> それはかなりの高確率でよい先生でしょう。
私はそうは思わないです。
「この講義に出ている学部生は将来現場に出る可能性がある」ということはつまり「この講義に出ている学部生は将来現場に出ない可能性もある」ということなわけで。
さらに「この講義に出ている学部生は将来患者・クライエントとしてロールシャッハを受ける可能性がある」わけで、それを考えると学部生に対して一律に心理アセスメントの技法を教えるのは、臨床実践に対して誠実な態度ではないと思うのです。
そういう意味で私なんかも精神科の患者・クライエントになる可能性はゼロではないわけですが、そうなった時にロールシャッハを知ってしまっているのはもったいないことだなぁと思いますよ。 - ナルホド 06-05-20 (土) 0:53
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病気になってしまったときに、ロールを知ってしまっていたらもったいないっていう発想は、教育者としての発想ではないですね。
- ロテ職人 06-05-20 (土) 1:28
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>ナルホドさん
> 病気になってしまったときに、
> ロールを知ってしまっていたらもったいないっていう発想は、
> 教育者としての発想ではないですね。
…とおっしゃる根拠は?
「自分(=ロテ職人自身)が」病気になってしまった時に、ロールシャッハを知ってしまっているので「もったない」と言っているのですが…
私の言っていること理解されていますか? - ロテ職人 06-05-20 (土) 1:35
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>ナルホドさん
付け加えると、心理臨床の技法に関して教える場合には、教わる側の知的(あるいは知的ではない)好奇心を満たすことよりも、将来の患者・クライエントの利益が優先されなければならないでしょう。
そういう意味では「教育者の発想」よりも「臨床家の発想」の方が優先されるべきだと思いますがいかがでしょうか?
個人的には「敢えて教えない」というのも「教育者の発想」としてはアリなんじゃないかと思いますがね。「相手が教わりたいと思っているから教える」ってのが必ずしも「教育者の発想」であるとも言い切れないのではないでしょうか。 - ナルホド 06-05-20 (土) 16:34
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「この講義に出ている学部生は将来心理士としてロールシャッハを取る可能性がある」という発想より、「この講義に出ている学部生は将来患者・クライエントとしてロールシャッハを受ける可能性がある」という点を優先しているところが根拠です。
講義に興味をもって、「自分も臨床家になりたい!」「ちゃんとロールが取れる心理になりたい」っていう学生が増えることが、将来の患者・クライエントの利益につながるのではと思います。これが教育者の発想でしょう。 - ロテ職人 06-05-20 (土) 21:11
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>ナルホドさん
> 講義に興味をもって、
> 「自分も臨床家になりたい!」
> 「ちゃんとロールが取れる心理になりたい」っていう学生が増えることが、
> 将来の患者・クライエントの利益につながるのではと思います。
別に大学院に入ってから教えても問題ないと思いますが。
私が問題にしているのは「将来臨床家になるかどうかわからない学部生にロールシャッハを教えることの弊害」です。私が言いたいことおわかりですか?
ついでに「臨床家になりたい子ちゃん」の要望を満たした結果が現在の日本の心理臨床の惨状を生み出した一つの要因だと思うのですがね(ってのは過去ログで散々述べておりますが)。
で、私は前のコメントで
> そういう意味では「教育者の発想」よりも
> 「臨床家の発想」の方が優先されるべきだと思いますが
> いかがでしょうか?
と書いたのですが、それについてはどのようにお考えでしょうか?>ナルホドさん - Y..(なんちゃって…管理人) 06-06-14 (水) 22:52
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トラックバックありがとうございます。お礼の書き込みはここでよろしいのでしょうか?なにしろトラックバックをしてもらったのが初めての体験でしたので、少々戸惑っております。
さて、心理学の授業で心理検査を実施することについてですが、まず、私が行っている授業は心理学科の学生を対象としているものではありません。したがって、「心理アセスメントの技法」を教えることが目的ではなく、心理検査を体験することによって自分のありようについて理解を深めるきっかけにするということが目的ですので、その点はご理解ください。
まず、ロテ職人さんの「『最初に受けるロールシャッハ(あるいはその他の投影法)』ってのはかなり貴重な体験である」という考えについては、まったくその通りだと思います。したがって、授業で投影法を受けるのではなく、専門家のもとで投影法を受けることができれば、その方が理想的であろうことは私も同意いたします。しかし、普通の学生が全員そのような体験ができるということは今のところかなり困難であるのは間違いないと思います(だから、臨床家になる学生は大学院に入学した後に、専門家のもとで、検査を受けるべきだという主張には同意します)。
したがって、ここで考慮しなければならないことは、①授業で心理検査を受けなければ(将来的にも)心理検査を受ける体験を持たない学生が心理検査を受けることによってどのくらいの利益を得るのか(もちろん、誰がその範疇に入るのかは現在分かりませんが、こうした学生は存在すると思います)ということと、②将来、臨床場面で心理検査を受けることになる学生が授業で心理検査を体験することによって受ける害がどのくらいか、ということだと考えられます。
以上のことを考慮した時に、私は①の方が、②よりも大きいのではないかと考えます。(ただ、こうしたことを量の問題として考えることは意味がないかもしれません)。
ここでは、②はあまり大きくないと判断した理由を述べます。それは、「一般教養の中で数回心理検査について学んだ」という理由で、その人が臨床場面にやってきた時に、その理解が困難になる可能性は非常に低いのではないかと思うからです。もちろん、多少の影響があることは認めます。しかし、患者を総合的に判断するにあたって、一般教養で学んだ程度の知識がそれほど大きな影響を与えるとは思われません(しかし、ここのところはあくまでも、拙い経験上ということなので、異論があるかもしれません)。
ここまで、私が授業で投影法を実施した理由について述べましたが、しかし、正直に書くと、ロールシャッハを実施する(図版を見せる)ことに関してはやはり戸惑いがあります。その理由は、ロールシャッハについて簡単に教えても自分について考えるきっかけにはなりにくいこと、描画法に比べると解釈法について知っていることの影響が大きいこと、などでしょうか。
いろいろと考えるきっかけになりました。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。














