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【ようやく】実践女子大の二木先生の調査【レビュー】

公開日: : 食育

偏食シリーズの続き。過去ログ未読の方はまずそちらから。
娘の偏食(06/08/23)
娘の偏食その2(06/08/25)
栄養的に極端な偏りがなければ偏食してても問題ない(06/08/31)
偏食と社会性(06/09/01)
ようやく「実践女子大の二木先生の調査」に入りたいと思います…が、とりあえず前提として覚えておいていただきたいのが、その調査で「偏食はわがままを助長し、意欲や好奇心をなくす」と言われているわけではないということです。
これは06/08/23のエントリ、娘の偏食で引用した千葉県栄養士会のサイトにあった表現です。
で、件の調査はこの本で見つけました。

小児の発達栄養行動―摂食から排泄まで/生理・心理・臨床 小児の発達栄養行動―摂食から排泄まで/生理・心理・臨床
二木 武 川井 尚 帆足 英一

医歯薬出版 1995-09
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この本自体はそんなに悪くない本だと思います。栄養学的観点に基礎をおきながら、栄養と発達を身体的・心理的側面から詳しく解説しており、栄養学に関しては門外漢の私にとっては勉強になるところもあります。
ただ…この調査はいただけないですよ。
そんなわけでp.21の3)食欲・意欲発達の相関の臨床成績のレビュー開始。引用していきますよ。

 筆者は食欲と意欲の実際の相関関係について調査した(1990)ことがあるので、その概要を述べる。

 対象は1~5歳の東京都内の保育園児2,000名で、子どもの食欲を中心とした食行動と、意欲を中心とした心の状態の関連性の有無を知るため、母親に対するアンケート調査をおこなった。

 調査項目は摂食行動については「食べるときの楽しさ」、「食欲」、「食べる量」、「好き嫌い」、「食べる速さ」、「食事の催促」、「食事の評価」、「食事中の表情」の8項目である。これらを3~4段階で評価してもらった。また心の状態は、「活発さ」、「好奇心」、「意欲的」、「積極的」、「表情がいきいき」、「自発性」、「友達とよく遊ぶ」、「きげんがよい」の8項目を5段階で評価してもらった。

「摂食行動」についての3~4段階(なんで固定してないの?)評価についてはある程度は客観的な評価であると言えるのですが(いや…それも怪しい項目がいくつかありますが)、「心の状態」なんて全て母親の主観でしかないですよね。となると、母親の心理的要因によってかなり結果が歪んでくるのではないかと思うのです。
その時点で既に調査の目的は外れてしまっているような気がするのですが…気をとりなおして続きいきますよ。
結果の「(1)食行動の年齢差」「(2)心の状態の年齢差」は省略。(3)食行動と心の状態の相関度いきます。
表1-3をご覧ください(リンク先参照)。

(3) 食行動と心の状態の相関度

 次に摂食行動と心の状態との関連を検討した。

 すなわち、上記摂食行動と心の状態の各項目についての関連を年齢別にχ2検定をおこなった結果では両者に密接な関連がみられた。ことに表1-3cの如く3歳児ではほとんど全項目に有意相関があり、要するに食欲があり、楽しそうにいきいきと食べる子は意欲や好奇心があり、自発性に富むということで、逆に食べるとき楽しくなく、いやいや食べる子や食欲のない子は意欲や好奇心などポジティブな心の貧しい子という傾向が見られたわけである。

えーと…この表、一瞬何が何だかわからなかったりします。何の表かと言いますと「摂食行動」×「心の状態」という3(or 4)×8のクロス集計表に関してχ2検定をやって、その結果をまとめて表にした…というわけですが、この表だと一体クロス集計表のどのセルで差があったのか全くわかりませんですよ。
で、この表を見て改めて思うのは3歳の時点での母親の子どもに対する評価(=心の状態)は摂食行動に対する評価と結びつきやすいのだなぁということだったりします。
少なくとも「食欲があり楽しそうにいきいきと食べる子は意欲や好奇心があり、自発性に富む」とか「食べるとき楽しくなく、いやいや食べる子や食欲のない子は意欲や好奇心などポジティブな心の貧しい子」なんてことじゃないでしょう。あくまでも母親の主観的評価なんだから。
で、その後もコピペ。

 またこの両者の相関度には(※ロテ職人ツッコミ:相関度って何だよ?)年齢的差異がみられ、3歳児でもっとも相関が密接であったが2歳児はこれに次ぎ、全体の2/3の項目で有意な関連がみられた。とりわけ心の状態のうち「活発さ」、「意欲的」、「積極的」、「表情がいきいき」といった意欲を示すものが3歳児同様摂食行動と関係が深かった。

繰り返しになりますが、母親からのそれらの側面に対する評価は食行動と結びつきやすいということですな。

 一方、1歳児(表1-3a)では有意関連項目は未だこれより少なかった。関連することが多いのは、摂食行動の項目では「食事の催促」と「食事の評価」(おいしいなど)であり、心の項目では「表情がいきいき」、「きげんがいい」などであったが、これらは母親のわが子の摂食行動への関心によるところが大きい。

つか、1歳児だと「意欲的」とか「積極的」とか「自発性」とかってのは母親が(というかその他の人でも)評価するのは難しいのではないですかね?

 さらに4歳児になると有意相関項目は2~3歳児に比し急減し、その半分以下となり、1歳児とほぼ同じようになるが、異なるところは「食べるとき楽しそう」、「食事中の表情」といった情緒的な行動において関連がみられることが多くなっていることである。また5歳児(表1-3e)になると、わずか4項目でしか有意相関がみられなかった。

ってのは、子どもの性格?というか行動?に対する母親の評価は4,5歳になると食行動とは結びつきにくくなるってことでしょうね。

 以上の成績は、乳幼児の意欲や好奇心などの生きるのにもっとも必要な心の発達は、進化的に食べようとする意欲(食欲)の発達が原動力になっているという筆者の考えから次のように考えるとわかりやすい。

えーと…自分の仮説を検証するための根拠として、自分の仮説を持ってくるのはどうかと思いますよ。具体的な内容は以下。

 すなわち、1歳児で両者の関係が2~3歳児に比し比較的ゆるやかなのは「食行動」→「心の状態」または「心の状態」→「食行動」への影響が発達途上、つまり不十分のためと考えられる。ただし食行動と心の状態のいずれが先導的に作用しているかは、いわばニワトリが先か卵が先かと同様、判別困難である。ただし上述した進化論的立場、および本成績での食行動の年齢にともなう変化が大なのに、心の状態の変化が少なかったこと(ただしそれらの評価法の客観性についての検討が必要)より、どちらかといえば筆者は食行動の方が心の状態を先導していると想像している。

「想像」て。
因果関係としては「心の状態」→「食行動」の方が自然な考え方だと思うんだけど、その逆と考えるにはおっしゃっていることの説得力が足りないですよ。
てか「評価法の客観性について」の問題も気づいているのですね。気づいていながらこの結論は…。

いずれにしても両者の間に密接な相互作用があると考えて間違いないであろう。そして2~3歳児になるにしたがい、両者の関係がより密になるのはそれらの行動発達とともに相互作用が強力な影響を及ぼすためであろう。

これは違うと思いますよ。くり返しますが、それが密になるのは母親の関心の向く領域が関連してるんじゃないですかね。

しかし4歳以降になると、かかわる世界が広がるとともに心身の機能はしだいに分化してゆき、食行動と日常場面全体における心の状態は独立したものとなり、互いの影響は相対的にではあるが、小さくなると考えられる。

ってことではなく、母親の評価としてそれらを結びつけなくなった…ってことでしょうね。

いずれにしても、乳幼児期の食行動(食欲)と心(意欲)の発達には、密接な相関関係ないし相互作用があるので、とくに幼児期前半までの食べさせ方・食行動は、子どもの心の発達にとってきわめて重要であることを認識したい。いわゆる「三つ子の魂百までも」といういい伝えと類似の現象と解したいのである。

出ちゃいました。「三つ子の魂百まで」。
専門家のこういう発言が、母親の育児ストレスを増すことにつながるんじゃないかってのは考慮してもらいたいものでございますよ。
・・・・・・・・・・・・
こんな感じのレビューですがいかがでしょうか?ざっと見ていったのでわかりにくいところがあるかもしれませんので、ご質問等ありましたらご遠慮なくどーぞ。
私の受けた衝撃が少しでも伝わりましたら幸いでございます。
…てか、この研究って論の組み立てが心理の卒論レベルじゃね?卒論でももっとマシな人はたくさんいると思われますよ。

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2006/09/04 | 食育

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コメント/トラックバック (7件)

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  1. ちょっと話の本質からはズレルので恐縮なんですが,気になったので。
    表1-3ってχ2検定の結果の表なんですか?見る限り,相関係数の表にしか見えませんけども。
    なんか文中でも相関相関言ってますし,スピアマンだかピアソンだかの相関係数をとって,有意だったところに*入れただけな希ガス。
    それなら一応表の意味するところは理解できます。結果の解釈は,激しくオ イ ト イ テ。
    あと普通,χ2検定の結果を記述する際に,「有意相関」という表現は使わない,というか不適切だと思います。
    まぁ,「相関度」なるオリジナルな概念なのであれば,どうかは分かりませんが。
    つか,なんの表だかよく分からないような書き方をするなってだけの話なんですけどね。
    で,この測定法だと,一応順序尺度以上の尺度水準はありそうだし,間隔尺度と見なせなくもなさそうですよね。なので,そもそもχ2検定でやる必然性があったのかどうか分からないし,なんだったら,どういうクロス集計表で,どんなことをしたのかもよく分かりません。
    分布を特定できなかった,ってーんならノンパラを使うこともあるでしょうが,χ2が適切かどうかはよく分かりませんね。実際どうなんでしょうか。
    もうここまで来ると,ここにある情報だけでとやかく言える範囲の話ではありませんが,この研究の仮説は「食行動と心の状態との間には関連性がある」程度のこととしか読めません。
    この場合は違いとか因果ではなく,「関連性」を見たいわけですから,まぁノンパラであっても,相関で十分っちゃ十分だと思います。ん~…,χ2検定で何したんでしょうかね。
    つか,
    >上記摂食行動と心の状態の各項目についての関連を年齢別にχ2検定をおこなった結果では両者に密接な関連がみられた。
    そもそもこの日本語がよく分かりません。
    せめて方法くらいはちゃんと書いてYO!!

  2. 基本的に心理屋から見れば突っ込みどころ満載なんですけど,そもそも,順位相関にしろ積率相関にしろ,とりうる値が非常に狭い(3~5)変数間の相関ってどれだけ意味があるんだろうか?

  3. >Decoさん
    > 表1-3ってχ2検定の結果の表なんですか?
    そうなんですよ。χ2検定の結果の表なんですよ。どう見ても相関係数の表ですよね。
    一応、χ2検定をたくさんやって、その結果を一つの表にまとめたという感じなのでしょうが、あんな表は見たことないです。
    > なんか文中でも相関相関言ってますし,
    > スピアマンだかピアソンだかの相関係数をとって,
    > 有意だったところに*入れただけな希ガス。
    いや。スピアマンとかはやってないと思いますよ。文中で「相関」って言ってますが、そもそも「相関」見てないし。
    それに相関が有意だからって、相関係数がどれくらい大きいかを見ないと意味ないっすよね。たぶん筆者にはそういう発想はないだろうけど。
    > あと普通,χ2検定の結果を記述する際に,
    > 「有意相関」という表現は使わない,というか不適切だと思います。
    ですね。
    > つか,なんの表だかよく分からないような書き方を
    > するなってだけの話なんですけどね。
    ですね。
    >RAさん
    > とりうる値が非常に狭い(3~5)変数間の相関って
    > どれだけ意味があるんだろうか?
    それは私も思いますが、そもそもあの表は相関係数の表じゃないですからね…。
    本文にも書きましたが、これ普通だったら卒論でもアウトのレベルかと。1990年の調査だから…ってのも言い訳にはならないですよね。
    ただ、方法論やプレゼンテーションの仕方は百歩譲っておいといても、注目すべきは「どんだけ手前味噌な考察だよ?」ってところなんではないかと。

  4. ロテさま
    >それは私も思いますが、そもそもあの表は相関係数の表じゃないですからね…。
    有意差表という新たな表を作成してますね(笑)。
    まじめな話,いわゆる推測統計の学習で気をつけなければいけないのは検定と推定は別物なんだ,ということですよね。検定の結果,帰無仮説を棄却するというのはt検定であれば「2つの平均値の差が0ではない」,相関であれば「r=0じゃない」ということであって,具体的にどのぐらいの差がある,とかどのぐらいの相関がある,というのは推定のお話になるわけで。30人のデータで相関とって,rが0.6ぐらいだったとして,有意差ありだから「結構相関高くね?」という考えが間違いだ,とは思っちゃいない。
    #その前に2000名のデータで検定やればほとんど有意差出ることに突っ込むべきか?いやそもそも研究デザインが・・・むにゃむにゃ。
    >本文にも書きましたが、これ普通だったら卒論でもアウトのレベルかと。1990年の調査だから…ってのも言い訳にはならないですよね。
    アウトでしょう。でも最近統計とかわからん人が教員になってるケースがあるからなあ・・・そういう人に指導を受けてる学生はこんな間違いはバンバンしてるかも。

  5. ロテさま
    >それは私も思いますが、そもそもあの表は相関係数の表じゃないですからね…。
    有意差表という新たな表を作成してますね(笑)。
    まじめな話,いわゆる推測統計の学習で気をつけなければいけないのは検定と推定は別物なんだ,ということですよね。検定の結果,帰無仮説を棄却するというのはt検定であれば「2つの平均値の差が0ではない」,相関であれば「r=0じゃない」ということであって,具体的にどのぐらいの差があるのか,とか,どのぐらいの相関係数になるのか,というのは推定のお話になるわけで。検定だけじゃその辺は分からない。30人のデータで相関とって,rが0.6ぐらいだったとして,有意差ありだから「結構相関高くね?」という考えが間違いだ,とはなかなか思わない。pは小さければ小さいほどいい,と思ってる人が多すぎ。
    #その前に2000名のデータで検定やればほとんど有意差出ることに突っ込むべきか?いやそもそも研究デザインが・・・むにゃむにゃ。
    >本文にも書きましたが、これ普通だったら卒論でもアウトのレベルかと。1990年の調査だから…ってのも言い訳にはならないですよね。
    アウトでしょう。でも最近統計とかわからん人が教員になってるケースがあるからなあ・・・そういう人に指導を受けてる学生はこんな間違いはバンバンしてるかも。

  6. >RAさん
    > 有意差表という新たな表を作成してますね(笑)。
    あー、確かにあれば「有意差表」ですね。そりゃ見たことないはずだわ。新たな表だから。
    多分この著者は心理学教育を受けた人ではないので、この手の調査研究の方法論には詳しくないのかもしれませんが…でもねぇ…周りで誰か言ってあげる人がいなかったのか?と。
    > 最近統計とかわからん人が
    > 教員になってるケースがあるからなあ・・・
    > そういう人に指導を受けてる学生は
    > こんな間違いはバンバンしてるかも。
    その辺は前に書いた「朝ごはん実行委員会」の調査を見ていただけると、いっそう恐ろしいことになっているのがわかるかと思いますよ。
    私もあんまり統計は得意ではないので偉そうなことは言えんのですが、でもこれからそういう心理学徒が増えていくのはヤバイですよねぇ…。

  7. やばいです、やばいです。教科書を書くというのは論文を書くのとは違って、それで勉強する多くの初学者がいるのです。わたしもかつて、『行動療法』なる本をかきましたが、完成に20年かかっています。怖いのは統計ですね。わたしは学部生の時代に岩原信九郎先生から、洋書で統計学をならいましたが、弱い横文字と数的機能のため、単位を得るだけで必死でした。ここ2年栄養学のコースで行動変容の講義をさされ、栄養行動学なる方面の書物を読み漁りましたが、心理学者と違って統計や要因統制の知識をお持ちの栄養学者は殆どいらっしゃらないのです。臨床や応用の世界では正論を吐くといじめとしか受け取られず、感情のみが残って大変です。でも、このような辛口のコメントを提示し、続けることが大切だとおもっています。


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  • 某総合病院精神科勤務の臨床心理士であり臨床心理学者(自称)。なんだかんだで2児の父。妻との仲もそれなりに良好
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