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学部教育は確かに大切なんだけど…

日本学術会議による職能心理士(医療心理)の国家資格化提言に関して、いくつかの心理系ブログで言及がなされております。
提言「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」(pdfファイル)
afcpさんのA Forward-looking Child Psychiatristの昨日のエントリ
職能心理士 ブログ界隈の反応
を見ればどこのブログで言及がなされているかわかりますよ。
この件について、私はまだちょこっと意見を保留しております。少ししたら関連エントリをアップするかもしれないですし、しないかもしれません。
ちなみに私のスタンスはMochiさんのMochi’s-Multitasking-Blogの昨日のエントリ
「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」
で述べられているところに一番近いような気がします(Mochiさんとは社会的な立場も学問的な立場も全く違うんですけどね)。
…ええと何を言いたかったんでしたっけ?…ああ、あれだ。それがらみの話で、すげえ気になったエントリがあったですよ。
つなでさんこと今井たよかさんの臨床心理職能メモの一昨日のエントリ
学部教育の充実と臨床心理士
ですよ。
というわけでコピペしていきます。

昨日のオンラインニュースのひとつに、法科大学院の新司法試験合格率低下についてのものがありました。

この記事の中で私が注目したのは、「合格者のうち大学の法学部を卒業するなどした法学既修者は1331人で、合格率は44・34%と昨年(46・01%)の微減にとどまったが、法曹人口の増加に向けて期待されている社会人出身者などの未修者は734人で、合格率も22・52%と昨年(32・35%)を大幅に下回った。」という部分です。



つまり、学部でも法学を修めた人たちと、法科大学院だけで勉強した人たちとの間に差が出たということですね。



臨床心理学と法学とを同じようには論じられないと思いますが、法科大学院は、「大学院における高度専門職業人の養成」を目指している「臨床心理士」にとって、専門職大学院のひとつのモデルとして参考になる存在だと思います。

そしてこの辺を踏まえて

何につけても長い時間をかけてひとつのことをするのが、質の向上にとって大切であることは、新司法試験の上記の結果が証明しているように思われます。

と今井さんは書かれておりますが、そういう論理展開は違うんじゃね?と個人的には思いますよ。


現在の法科大学院制度が抱える問題点に関してはWikipediaの記述が非常にわかりやすいです(ホント便利だなあ。Wikipedia最高)。
法科大学院 – Wikipedia
この中の制度自体の問題点というところ。
心理職の需要の問題に関して以前から散々述べてきているワタクシにとっては「法曹需要増大の真偽」って辺りは非常に興味深かったりもするのですが、今回の話題に関して問題になるのは「入学者数と合格率」そして「法科大学院の教育能力」ってところです。

法科大学院導入が決定された当初、新司法試験の合格者は、修了者の7~8割になると言われていた。これは、司法試験制度改革審議会意見書において「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」との意見が盛り込まれたことに基づく。



司法制度改革審議会の議論では、各大学の要望として「7割とか8割ということが多い」が、「どの大学も7割、8割ということは制度設計としてはあり得ない」と認識されている。



法科大学院の定員と新司法試験の合格者数から単純計算しても、そのような高い合格率にならないことは明白であった。合格率が5割を下回るのは明らかであるし、不合格となっても3回まで受験できることを考えると2割を下回るとする試算もある。

法科大学院は、旧司法試験合格者の輩出がない又は極端に少ない大学にも設置されている。法科大学院の法曹教育機関としての能力を疑問視する声も一部ある。(相変わらず、予備校に通っている学生が多い)

この辺を踏まえた上で新司法試験における法学既修者と未修者の合格率の差に関して、確かに表面的には「学部で法学を学んでいた人の方が合格率が高い」ということなのですが、その背景には「法科大学院のレベルの低さ」があるのではないでしょうか。
他の可能性もあるかもしれませんが、とりあえず現在の法科大学院が抱えている諸問題を考慮せず、単に既修者と未修者との合格率の差のみから「学部教育が大切」って結論を出してくるのはいささか短絡的すぎるのではないかと思う次第であります。
・・・・・・・・・・
もちろん、学部教育は大切ですよ。でも正直、別に心理系学部卒じゃなくとも独学で知識(これはもちろん臨床心理学の知識だけじゃないですよ)を修めていて、研究及び臨床実践に必要な論理的思考ができていれば、そしてそれを受け入れる大学院側で正当な評価が出来るのならば、別に現行の指定大学院制度でも問題ないんじゃね?と思うワタクシもいます。
逆に充分な知識(繰り返しますが、幅広い「心理学」に関する知識です)を持っていない人、研究及び臨床実践に必要な論理的思考ができていない人は、単純に試験で落とせばいいだけの話しであり。
…と考えると、別に学部での心理学教育をそれほど重視する必要もないんじゃね?ってことになるかと思いますし、むしろ現在の指定大学院がその辺の受験生の能力をしっかりアセスメントしているのかってことなんじゃないかと思うわけなのですよね。
…という辺りが、Mochiさんのご意見に思いっきり共感してしまうところなのではないかと思ったり。
そしてMochiさんの

この問題はものすごく「政治的な読み」が必要なんじゃないでしょうか。国会とかに関係なくふつう使う意味での「政治的」という意味で。そういうことって,どちらかの側にいるような人々には見えにくいんでしょうね。

という意見にもブンブンと首が折れんばかりにうなずいてしまうのでございましたとさ。
色々と政治的な思惑があるであろうところに、「どちらかの側にいるような人」としての単純な(というかあんまり考えてないような)意見表明ってのはアレな感じだなあと思うのですよ。

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コメント (Close):4

afcp 08-09-15 (月) 12:53

リンクでの記事のご紹介、ありがとうございました。
>逆に充分な知識(繰り返しますが、幅広い「心理学」に関する知識です)を持っていない人、研究及び臨床実践に必要な論理的思考ができていない人は、単純に試験で落とせばいいだけの話しであり。
このあたりに関して、入試でその後に必要とされる能力を十分に確認するというのは、それほど簡単ではないと思うのですよね。入試の選抜機能に求める水準をあまり高くしてしまうと、大学院の教官の入試業務の負担がますます大きくなって、結局は教育力を減じることにもなりますし。
確かに心理系学部卒のみに限る必要はないのかもしれませんが、入試だけで選ぶのはなかなか大変そうな気がします。

ロテ職人 08-09-16 (火) 12:46

>afcpさん
コメントありがとうございます。
> 入試でその後に必要とされる能力を
> 十分に確認するというのは、
> それほど簡単ではないと思うのですよね。
実はこれはそれほど難しくないのではないかと思います。学部教育を充実させるということは、つまり基礎系の教員を一定数置くということであり、そうなってくると大学院入試で幅広い分野のバランスの取れた問題は出せるのではないかと思います。
論理敵思考云々は研究計画プラス小論文的な問題である程度見ることはできるでしょうし。
そういう意味では「その後に必要とされる能力」というよりも「最低限の知識と能力」なのではないかと思います。
> 入試の選抜機能に求める水準をあまり高くしてしまうと、
> 大学院の教官の入試業務の負担がますます大きくなって、
> 結局は教育力を減じることにもなりますし。
問題は教員の入試業務の負担よりも、「入試問題が難しくて学生が集まらない」という大学院経営の側面かもしれません。
…となってくると、やはり「指定大学院はそれほど増やすべきではない(なかった)」みたいな根本的なところにまた戻ってしまうような気も。

riek 08-10-01 (水) 3:25

個人的な意見ですけど,学部段階では心理学を中心としつつも,周辺諸学を幅広く学ぶ時期にしてほしいと思うのです。
私は教育臨床専門ですけど,不登校の研究ってのは,歴史的に見れば精神医学として始まり,1970年ころを境として心理学・教育学にシフトし,最近ではむしろ社会学のテーマになっているんですね。個人の心の問題であっても,実は社会的動向と密接に関連している事象は結構あるわけです。
こういう例を見ていると,学部のうちは,さわり程度でいいので社会学,教育学(特に教育臨床系を志す場合),福祉学など周辺諸学を学んでおき,広い視野をもてるようにしてほしいと思うんです。そういう意味では,学部段階で余り心理学の専門性ばかりにこだわった教育を行うことは良くないと考えています。
私は指定大学院についてはその理念を全く理解しないわけではありませんが,やや閉鎖的で,大学院での養成に偏りすぎという感想も持っています。
端的な例としては,例えば心理職の公務員は学部卒でも受験できるし,実際に沢山の人が学部卒で合格しています。また,外国の大学・大学院で学んだ人もいます。こうした人々が指定大学院を経ていないと言うだけで受験資格さえ認められず,門前払いになるのはどうかという感想があります。
資格は能力に対して与えられるべきものです。その意味では,指定大学院を経ない限り,現に心理職として実務も研究もこなしているにもかかわらず,受験資格さえ認められないというのでは資格の形骸化ではないでしょうか。医学部医学科に入って医師資格を得なければ法律上実務に就けない医師とは違い,現に指定大学院を経ずして心理職になっている人がかなりの数いるわけです。逆に言えば,指定大学院を経て資格を取っても心理職として生活できる保障はなく,これでは何のために資格があるのかという話になってしまいます。
 個人的には学歴不問の旧司法試験方式で,ペーパーテストをやるなりケースレポートを提出させるなり方法は何でもいいので能力自体を測定し,資格を認定すべきだと思います。それが手間暇かかって大変なのは分かりますけど,仮にも資格を認定する以上,そういう労力も必要なのではないかと考えます。

ロテ職人 08-10-04 (土) 21:53

>riekさん
コメントありがとうございます。
> 個人的な意見ですけど,学部段階では
> 心理学を中心としつつも,周辺諸学を
> 幅広く学ぶ時期にしてほしいと思うのです。
確かに私もそう思います。というか、どこかで同じことを書いているような気もします。
> 学部のうちは,さわり程度でいいので
> 社会学,教育学(特に教育臨床系を志す場合),福祉学など
> 周辺諸学を学んでおき,広い視野を
> もてるようにしてほしいと思うんです。
あと医学とか法学とか倫理学とか…
…って今、検索して見つけました。
ぼくのかんがえたりそうのりんしょうしんりしようせいかてい その2
http://blog.rote.jp/2006/03/05-235959.php
ここで書いたように、まともな大学だったら、その辺を学部段階で幅広くってのは割とやられていることだったりするんじゃないかと思うんですが、実際のところどうなんでしょうね?
> 資格は能力に対して与えられるべきものです。
本来であればそうなんですが、現在、非常に多岐にわたっている心理臨床実践の能力をペーパーテストで測定しようってのがそもそも無理があるわけで。
というか、現実的に多くの資格は「能力」というよりは、「知識」を問うているものですよね。医師も弁護士もその他筆記試験メインのものはほとんど。
結局のところ臨床心理士の資格も「最低限の知識を持っているかどうか」を問うものでしかなく、それでとりあえず最低限の能力を保証するものとしての指定大学院なのではないかな、と。
> 学歴不問の旧司法試験方式で,
> ペーパーテストをやるなり
> ケースレポートを提出させるなり方法は何でもいいので
> 能力自体を測定し,資格を認定すべきだと思います。
ケースレポートの提出ってのはいいですよね。そういう意味では、私が前に挙げた実習重視の考え方、今と同じようなペーパーテストでとりあえず「仮免許」みたいなものを取得でき、実習の評価によって「本免許」が取得できるといったような。
私の考える理想の臨床心理士養成課程Vol.3
http://blog.rote.jp/2006/08/16-124500.php
まあ、現行の指定大学院制度ってのはある意味「必要悪」なんじゃないかって気もします。これがこのまま続くのはマズイよなぁという感じも含めての「必要悪」ってことで。

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