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「記憶を戻すカウンセリング」って何じゃらほい

公開日: : 臨床心理学

凶悪事件の報道が多い中で、結構忘れてる人も多いかもしれない2006年に起きた秋田児童連続殺害事件。
秋田児童連続殺害事件 – Wikipedia
この事件に関して、最近こんな続報がありましたよ。
橋の上で何が? 臨床心理士が畠山被告をカウンセリング河北新報ニュース

秋田県藤里町の連続児童殺害事件で殺人などの罪に問われ、一審で無期懲役(求刑死刑)の判決を受けた畠山鈴香被告(35)と面会を重ねている臨床心理士の長谷川博一・東海学院大大学院教授が15日、畠山被告が健忘したとされる2006年の事件当時の記憶を戻すカウンセリングを始めた。「記憶を想起させて真実を明らかにしたい」と話している。



長谷川教授が呼び戻したいというのは、死亡した長女彩香さん=当時(9つ)=が転落した大沢橋上での畠山被告の記憶。畠山被告は控訴審の被告人質問で、一審よりも記憶が薄れているとし、「当時の気持ちも行動も思い出せない」と述べた。



長谷川教授によると、15日に秋田市の拘置施設で畠山被告と会い、トラウマ(心的外傷)で失った記憶を呼び戻す専門的な手法でカウンセリングを実施した。16日も続け、成功すれば大沢橋での出来事を思い出す可能性があるとしている。



畠山被告の控訴審で長谷川教授は昨年、弁護側の依頼で「迎合性が強く、思っていなくても他者の考えを認めてしまう」などとする畠山被告の性格についての鑑定書を作成。仙台高裁秋田支部が弁護側の証拠申請を却下したため、長谷川教授は鑑定書の証拠採用を求める上申書を出した。



今回のカウンセリングは独自に実施し、控訴審と関係はない。



長谷川教授は、子を虐待してしまう親や犯罪者の心理療法が専門。山口県光市の母子殺害事件や大阪・池田小事件の被告らと面会した経験がある。畠山被告とは15日までに計14回の面会を重ねている。畠山被告の控訴審は昨年9月に始まり、今月30日にも結審するとみられている。


そして関連してこんなニュースも。
畠山被告「彩香が誤って落ちた」 臨床心理士に話す、藤里連続児童殺害さきがけonTheWeb

藤里町の連続児童殺害事件で、殺人などの罪に問われ「事件の記憶が薄れた」などと供述している畠山鈴香被告(35)が、接見した岐阜県の臨床心理士に、長女彩香ちゃん=当時(9つ)=について「彩香が誤って橋から落ちた場面を思い出した」という趣旨の話をしていることが16日、分かった。臨床心理士が県庁で会見して明らかにした。



臨床心理士は同日の接見の際、畠山被告に、19日以降の控訴審公判でこのことを話すよう提案。これに対し畠山被告は明確な意思表示をしなかったという。



臨床心理士は弁護人から畠山被告の心理的ケアを依頼され、これまで15回接見。15、16の両日には被告の承諾を得て「記憶を呼び戻すため」に、カウンセリングを行った。



臨床心理士によると、畠山被告はカウンセリングにより、彩香ちゃんが▽橋上で腹ばいになり、橋と欄干のすき間から身を乗り出している▽おもちゃを落として手を伸ばした▽バランスを崩し転落した?などの場面を、順を追って思い出したという。



畠山被告は捜査段階で「欄干に乗った彩香を、殺意をもって川に落とした」と供述したとされ、一審では「抱き付かれそうになって驚き、思わず手で払った」と殺意を否定。控訴審では「頭にかすみがかかったように記憶が薄れた」などと供述が変遷している。

(2009/01/17 09:30 更新)

ええと…思わずこの本を思い出したワタクシでしたよ。

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もし、実際にはなかった性的虐待やトラウマの記憶が、暗示や誘導によって作られていたとしたら…。実例や実験から「抑圧された記憶」の形成を検討し、行き過ぎたカウンセリングや面接の危険性を指摘するノンフィクション。

記事になっている長谷川氏の「記憶を戻すカウンセリング」ってのはどんなもんなんでしょ?
つか、弁護側が「迎合性が強く、思っていなくても他者の考えを認めてしまう」ってところがあるわけですよね?
「彩香ちゃんが▽橋上で腹ばいになり、橋と欄干のすき間から身を乗り出している▽おもちゃを落として手を伸ばした▽バランスを崩し転落した?などの場面を、順を追って思い出したという」ってのが事実に基づく記憶だという確証はどこにもないはずであり…
いや、もちろん長谷川氏のカウンセリングが「暗示や誘導によって作られている」とか「行き過ぎたカウンセリング」であるという証拠もないわけなんですけどもね。ただ、元々は弁護側の依頼による介入であり、そしてカウンセリング自体を被告は本当に望んでるですかね?仮に(少なくとも表面的には)カウンセリングを希望していたとしても、それが「迎合性が強く、思っていなくても他者の考えを認めてしまう」という性質に起因するのではないかという可能性も考えられますよね。
うーむ…。
あと素朴な疑問なんですが、こういう形態の「カウンセリング」ってそもそもあまり聞いたことがないのですが…例えば、拘置所などで精神医学的介入が必要になった場合はどうすんの?と思いちょこっと検索したところ…。
うーむ。これまた色んな問題がありそうです。
とりあえずこんな本を発見。

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…なんか色々難しい問題がありそうなので、これ以上何か言うとしたらもう少しちゃんと調べてからにします。
あ、記事で取り上げられている長谷川博一氏ですが、Wikipediaの記述がなんか妙に充実していて妙な感じです。
長谷川博一 – Wikipedia
まずは密かに続報を追っていきたいと思います。

よかったら…学問・科学ランキング

2009/01/19 | 臨床心理学

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コメント/トラックバック (3件)

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  1. 長谷川氏は,大阪の池田小児童殺害事件でも被告と面接し,控訴しない意思を表明していた被告に対して「贖罪のための控訴」を勧めていた方ですね。
    そもそも,カウンセリングなり精神療法なりによって呼び起こされた「記憶」が,裁判で認定された事実よりも,実際に生起した事柄に近いという保証は全くないと思うのですが。
    常識的に言えば,裁判での事実認定は,自白だけに頼って行われているわけではありません。物証と照らし合わせて,合理的な疑義がないことを条件としているはずです。
    長谷川氏は,裁判の事実認定に疑いがあり,自分のカウンセリングによって事実を明らかにできると思っているのでしょうか。ちょっと不思議です。

  2. パブリック(一般市民)が臨床心理についてどのようなイメージを抱いているか。
    パブリックにどのようにアプローチしていって、どのような成果を残していくのか。
    こういった成果(?)は世の関心とニーズを掘り起こすと思います。
    しかし、恐らくは、それに応えることはできない。
    結果を残したからOKとされる職ではないと思うんですよね(誤解を恐れずに言えば)。
    こういった派手な(パブリックに与える影響が大きい)業績でイメージが形成されていくんでしょうが、何か諸外国の過去の後追いな気がします。
    諸外国の後追いを延々と続けていくのであれば、諸外国の歴史をなぞるだけだなあと。
    データ(決して流行りのエビデンスベースドというわけではなく)に沿ったアプローチを続けていきつつ、その結果を検証しつつ、真摯に臨床を続けていかねばなあと思います。
    そしてそういった業績を世に発表していかないと、派手な業績でパブリックイメージが形成され、己で己の首をしめる結果になるんだろうなあと。

  3. やっぱ、これは、催眠のことを言っているんじゃないでしょうかね。
    アメリカなんかでは、ひき逃げした車のナンバープレートを思い出させたり、といったことに催眠が使われていたこともあるらしいですが、催眠で思い出された現実は、法的にも事実とされてはいません。
    これは催眠実験でも明らかだそうで、嘘を催眠中にねじ込むと、その嘘を現実と認識するんだそうですよ。実験者が「あれ、嘘ですから」と言ってもなお、真実だと譲らないのだとか。
    この辺りの興味深い話については、「臨床心理学」47号の特集:催眠と臨床応用(金剛出版)に詳しく述べられています。


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