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WAIS-RからIIIへの改訂ってぶっちゃけ微妙じゃね?

たまには「心理の人」っぽいことでも書いてみよう。

以前、どっかで書いたエピソードかもしれませんが、こんなことがあったです。

数年前、大学院時代の某イケメンな後輩が、某学会の会場にてかわいらしいおにゃのことお話ししてたです。あとで聞いたら完全初対面だったそうで、「初対面の女の子とあんなに親しげに会話できるなんて、さすがリア充は違うな」と思わせられた次第であるわけなんですが、後輩曰くその女の人はWAIS-IIIの日本語版標準化の仕事に携わっていたとのこと。

さらにその女性曰く「WAIS-IIIが発売されても、当分は自分のところで導入はしない」とのことで、その理由は「(WAIS-Rと比較して)施行に時間がかかるから」だったのだそうな。

『日本語版WAIS-III 実施・採点マニュアル』には、実施時間について

IQおよび群指数を求める場合の13の下位検査の実施時間は、平均約80分であり、65分から95分の範囲である。これらの実施時間には、代替検査の「組合せ」の時間(平均約10~15分)は含まれていない。

ということで、全14の下位検査を実施した場合、結局90分くらいかかっちゃうわけですよ。というか、丁寧にやると2時間近くかかると思います。これは私の手際の悪さの問題ではないと思いますですよ。

WAIS-Rの場合、換算表は74歳まで用意されていたのに対し、IIIは最高89歳まで適用されるとなっております。でも、そんなじいちゃん、ばあちゃんに2時間近く集中しろってのは過酷な話ですわな。

その辺を見越してマニュアルには

検査実施においては、1回の実施ですべての下位検査を終了できるように最大限努力する必要がある

(※太字強調はロテ職人)

とありますが、同時に

臨床的条件や動機づけの不十分さ、受検者の疲労、その他の理由で1回の検査実施が不可能な場合には、検査を中断し、次回の検査日を決めた方がよい

とも書かれておりますし、検査用紙にも

__回に分けて実施

と書く欄が設けられております。

でも、病院なんかで使用する場合、2回に分けて実施すると1回は無料にせざるを得ないですよね。二重取りするわけにはいかないから。それでも交通費なんかはかかってしまうわけで、被検者に余計な負担を強いるのですよねえ。

そんな感じで「時間がかかりすぎる」ってのが微妙ポイントその1.

微妙ポイントその2は、「多くの数値が出るので、なんとなくそれらしい所見が書けてしまうこと」です。

それって一見「便利なんじゃね?」と思われてしまうかもしれません。

以前書いた『日本版WAIS‐Rの理論と臨床―実践的利用のための詳しい解説』の紹介記事の一部を引用しますよ。

【まさかの】WAIS-Rの理論と臨床【紹介し忘れ】(06/09/09)

プロフィール分析使えば、誰でもそれなりに解釈できてしまいます…が、それこそプロフィール分析の落とし穴だったりもします(って前にもどこかで書いたんですけどね)。

これ、ロールシャッハのエクスナー法にも言えることですが、ある解釈仮説があるとしてそれがなぜそういう解釈仮説になっているのか理解していないと、臨床では使いものにならないっすよね。ちゃんとしたアセスメントをしようと思ったら、解釈仮説がどのように導かれたのか知ってないとダメだし、疾患などそのものの知識もないといけないわけで。

そしてさらに、そのアセスメントをその後の治療やカウンセリングにどのように反映させうるか、そうした視点も必要不可欠です(ってすんげー当たり前の話ですが)。

結局、検査しか知らない人には検査はできないってことです。

これはWAIS-IIIにも(というか、全ての心理アセスメント技法に)当てはまります。なんとなく色んな数値が出て、なんとなくそれっぽいことは書けちゃいかねないのですが、それではヤバイと。ちゃんとトレーニングした人は当然できていることでしょうけれども、治療だったり何らかの改善に活かせるような所見を書くためには、検査そのものに対する知識以外のものがむしろ必要になるわけですよ。

そんな感じで、微妙ポイント2はともかく、少なくとも微妙ポイント1に関しては実際の運用を考えると色々痛いよなあと思うわけなのでございました。

いや、さすがにRは問題も古くなってるんで、そのまま使い続けるわけにもいかないですし…検査用紙は2015年までは買えるそうですけれども…。

そういや、既にWAIS-IVの情報も色々入ってきてて、聞くところによるとIVではあの下位検査が削除されるそうで。確かに現行のIIIでも群指数の算出には関係しないのですが、昨今の色々な状況を踏まえた上であの下位検査を削除するってのはいかがなものなのでしょうか?…なんて話をこういうオープンなところでするのは色々問題があったりしますので、いつかリアルな場で誰かと議論できたらいいなあと思ったり。

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  • 某総合病院精神科勤務の臨床心理士であり臨床心理学者(自称)。なんだかんだで2児の父。妻との仲もそれなりに良好
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