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心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さんへ – 「本当にその選択でいいのですか?」

公開日: : 最終更新日:2013/12/05 臨床心理学 , , , ,

去る1月19日・20日の2日間、大学入試センター試験が実施されました。受験生ご本人はもちろんですが、高校教員や塾・予備校関係の方々、そしてご家族の皆様も含め、本当にお疲れ様でした。入試シーズンもこれからが本番。受験生の皆さんにおかれましては体調管理に気をつけて、持てる実力を全て発揮できることをお祈りしております。

大学

※イメージ画像 Prabhu B Doss via photopin cc



受験生の皆さんはそれぞれの将来を見据えて志望学部・学科を選択していることと思います。長引く不況の中、受験生にとって人気が高いのは看護系や医療技術系など国家資格に直結する学部・学科、あるいは就職状況が相対的に良好な理系学部全般なのだそうです。

参考:【親も知らない今どき入試】2013年入試で人気になりそうな学部系統は?ZAKZAK

それに対して文系学部・学科では、こちらも就職に直結しやすい教員養成系の人気が高いようです。そして心理学系もかろうじて人気トップ10にランクインしており、その理由は「高校生が大学で学んでみたい分野」という理由だとのこと。

さて、心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さん…と言ってもさすがにこれから受験をする現3年生ではなく、高校1、2年生の皆さんに向けて質問。あなた方の選択は本当に正しいのでしょうか?

「考えた直した方がいいのでは?」

もし私の子どもが高校生で、進学先として心理学系の学部・学科を考えていたとしたら…とりあえずこう言うでしょう。

「考え直した方がいいのでは?」と。

理由は簡単です。

リンク先の記事にはこう書かれています。「10位の心理系は就職率は高くないものの」と。そうなんです。就職率は高くありません。

そうは言っても学部卒で就職をする場合、確かに理系学部と比較すれば厳しい部分もあるかもしれませんが、基本的には文学部や教育学部(教員養成系を除く)の各学科と大差はありません。不況の昨今では「普通に厳しい」程度だと思います。

問題は、大学院修士課程を修了して、臨床心理士資格を取得したいと考えている場合です。少し前だとまだまだ世間的な認知度が低かったため、臨床心理士資格を持った人が例えば病院や教育現場で働く際にどの程度の待遇となるのかといったことについては、知らない人が大半でした。臨床心理士という資格が、国家資格であると思っている方さえ少なくありませんでした(今でも少なからずそういう方はいますが)。

現状としては少なくとも常勤職、つまりフルタイムの正社員として保険等の社会保障も整備されていて、昇給やボーナスもあるなんていう職場は、特に都市部においては非常に狭き門となっています。大学院修士課程修了したばかりの若者が常勤職に就くというのはかなり難しいですし、運の要素も色々と関わってきます。

それに対して、非常勤、つまりパートタイマーとしてはそれなりに働き口はあります。最も多い職種としてはスクールカウンセラーでしょうか。確かに時給ベースで見ればもらえるお金は少ないわけではありません。しかし、正職員ではないため非常に不安定です。そして自分で税金や保険等の煩雑な手続きをしなければいけないし、それらを払った残りが純粋な収入であると考えれば決して儲かるわけでもありません。

さらに資格を取って就職できたとしても、この仕事を続けていこうと思えば常に自己研鑽は必要となります。定期的に学会や研修会に出るとなると、その参加費や旅費等もかかりますし、書籍代などもかさみます。そして臨床心理士資格は5年に1度、資格更新をする必要があり、その際には学会や研修会への参加証明が必要ですし、更新料も払わなければなりません。それを決して多いとは言えない収入の中から賄わなければならないのです。

就職率はともかくとして、資格取得までにかかる時間と費用、そして収入に比して出て行くお金などについて考えると、はっきり言ってコストパフォーマンスは悪いです。

「なぜ心理学を学びたいの?」

そうは言っても「考え直した方がいいのでは?」と最初から否定してしまうのは我ながらひどい話です。むしろ大事なのは、なぜ心理学を学びたいのかという理由ではないかと思います。

しばしば目にする、耳にする意見として「心理学を学ぶことで自分が抱えている問題を解消できるのではないか」という期待からというのがあります。

思春期、青年期ってのは悩み多き時代ですし、だからこそ心理学に助けを求めるということもあるでしょう。しかし、もしも心理学を学ぶことで心理的な問題が解消するのであれば、精神科医もカウンセラーもいりません。それとこれとは話が別です。逆に知識を取り入れることでさらに混乱を来す可能性も否定はできません。

「臨床心理士になって人の役に立ちたい!」という方もいるかもしれません。

でも、人の役に立ちたいなら何もカウンセラーや臨床心理士である必要はないでしょう。医療現場であれば、精神科のみに限定しても精神科医、看護師、精神保健福祉士などの職種がありますし、学校現場であればスクールカウンセラーよりも教師の方がよほど濃密で「役に立つ」関わりができるはずです。

さらに心理学は「臨床心理学」だけではありません。基礎から応用まで様々な分野があります。

本来、大学や大学院は「学問の場」だと私は思っています。職業訓練的な要素を否定はしませんが、小・中・高校での「勉強」ではなく「学問」に触れることが出来るというのは、とても素敵な体験なのではないかと私は思うのです。

そして実は社会の様々な領域で心理学は役に立っています。臨床心理学だけが「人の役に立つ」心理学ではないのです。

もちろん臨床心理学以外の分野の心理学を専攻したい人もいると思いますが、少なくとも「どんな分野を学んで」「どう役に立ちたいのか」は説明できて欲しいと思います。

それでもやはり、やる気のある人には来てほしい

色々と厳しいことを言ってきましたが、それでもやはりやる気のある高校生が心理学系学部・学科を志望してくれて、そして将来、心理学という学問を担っていく研究者や優れた臨床家になっていってくれたら、それはとてもうれしいことだと思います。

今回私が述べたようなことを考えてもらった上で、それでも心理学を学びたいと思うのであれば、その気持ちを忘れずに学問に邁進していただければと思います。

心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さん、がんばってください。皆さんが目標に到達されることを心より応援しております。

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  • 某総合病院精神科勤務の臨床心理士であり臨床心理学者(自称)。なんだかんだで2児の父。妻との仲もそれなりに良好
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