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WISCマシーン・WAISマシーン

公開日: : 最終更新日:2013/11/21 仕事, 心理・精神医学本, 臨床心理学 , , , ,

知り合いの精神科医がぼやいてました

先日、知り合いの精神科医(同僚ではないです)と話をしていた際、その精神科医が自分の勤務先の臨床心理士を「WISCマシーン」「WAISマシーン」と称しておりました。

ロボット

photo credit: Ѕolo via photopin cc



曰く「忙しい忙しいと言っているが、ただ知能検査のオーダーが多いだけ(その医者も必要な時はオーダーする)」「検査所見は書くけど、主に数値を出しているだけ。結果の解釈は出来てない」「あげく、結論はほとんど『発達障害の可能性が高い』となる」のだそうな。

そして「そんなんだったら別に人間がやる必要はない」「そんなの単なるWISCマシーン・WAISマシーンでしかない」とのこと。

私もほぼ全面的に同意いたします。

問題の心理士をちょっと擁護してみる

いくつかその心理士を擁護するのであれば(擁護する義理もないっちゃあないんですけど)、そうなってしまうのはオーダーする医者側の問題もないとは言えないかと思います。

WISCやWAISをオーダーしてその結果の数値しか見ない医師がいるから、オーダーを受ける側の心理士もそうなってしまうのは仕方がない…と言うわけではないのですが、ちゃんと教育する体制が整っておらず、その心理士も自分の技術を高めようとする意志がないからそうなるのだろうなあと思います。

実際、ろくに所見に書かれていることを読みもせず、数値しか見ない医者というのは私も少なくない人数知ってます。

また、オーダー数が多くなってしまうことで、本当は許されないことなのですが、ケースの見方が雑になってしまうこともあるかもしれません。いや、それはそれでとてもダメなんですけどね。

1つの所見に1ヶ月以上かかる論外な心理士もいる…なんて話も聞きますが…。早く検査所見を書かねばならないとは言っても、でももっとちゃんとやらなきゃダメだろう、と。

うん。やっぱり擁護できないです。

もっとちゃんと出来るんじゃないだろうか?

数値しか見ない医者がいるならば、その医者でも理解できるような所見を書かなきゃならないです。最終的なまとめを数行で簡潔に書くとか、あるいは箇条書きにするとか。場合によっては、口頭で結果を伝えた方が分かりやすいかもしれません。

オーダーが多くてこなしきれない、それで仕事の質を落とさざるを得ないのであれば、それを踏まえてオーダーを断る必要もあるのではないでしょうか。それでもWAISにしろ、WISCにしろ、丁寧にやってれば1日2件が限界でしょうし、その程度ならばある程度のクオリティの所見は書けると思うんですが。

先に述べた医師が言うように、そんなんだったら機械がやったって一緒です。むしろ、コンピューター上で出来るようカスタマイズされた知能検査アプリを開発する方が、心理職の人件費がかからない分、よほどコストパフォーマンスがいいかもしれません。

所見を書くのにも、ローデータさえ入れれば自動で解釈してくれるようなアプリを使った方が余計な感情が入ったりしない分、まともな結果が出せるんじゃないでしょうか。

「心理アセスメント」とは何なのか?

…と、ここまで読んで「え?数値じゃなくて何を書くの?」とおっしゃる方はいないですよね?

数量データの記載は必須です。それを踏まえた上で質的な解釈はしていますよね?という話です。

課題遂行の結果だけではなく、そのプロセスを見ていくことが重要です。言語的な課題においては、正解・不正解だけではなく、出来る限り逐語に近い形での記録が望ましいです。それらを詳細に検討していくことで、なぜそのような数量データが導きだされるのかを考えねばならないでしょう。

また、課題遂行に際して、被検者の病理であったりパーソナリティであったりが影響を与えている可能性もあります。被検者の背景情報を踏まえた上で、知能検査の結果を補完するために人格検査などをバッテリーに加えていく必要もあるかと思います。

それらは少なくとも現在の技術では機械には出来ないことです。数量データからいくつかの仮説を産出することは機械にも出来るかもしれませんが、その仮説からもっとも適切なものを選び出し、さらにその仮説を補強するために他のテストバッテリーを組んでいくというのは(今のところ)人間にしか出来ない作業です。

そしてそれが「心理アセスメント」ということだと思います。

WISCマシーン・WAISマシーンになってませんか?

もちろん、そこでアセスメントが終わるわけではありません。あくまでもその後の支援や治療あってこそのアセスメントなわけですから、検査から得られたことを今後、どのように活かしていくかを考える必要があります。

さらに、フィードバックが必要になるケースもあるでしょうし、そこまでやって初めて「心理アセスメント」と言えるのではないでしょうか。

これは別に知能検査に限った話ではありません。全ての心理検査に共通することだと思います。

職場によっては検査がメインになってしまう所もあるかもしれませんが、逆にそういう職場だからこそ、丁寧な心理アセスメントが出来るとも言えます。

皆さんはどうですか?WISCマシーン・WAISマシーンになってませんか?

という感じで本日は自戒を込めつつお開きとさせていただきます。

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  • 某総合病院精神科勤務の臨床心理士であり臨床心理学者(自称)。なんだかんだで2児の父。妻との仲もそれなりに良好
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