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大うつ病性障害の「大」って…

公開日: : 最終更新日:2014/01/22 臨床心理学 , , ,

大文字

「大」?

知ってる人にとっては「今さら?」な話かもしれませんが、気になったので少し。

アメリカ精神医学会の精神障害の診断ガイドラインであるDSM-IV-TR(もうすぐ5の日本語版も出そうですが)。その中に「大うつ病性障害」ってありますよね。

「大うつ病性障害」とはざっくり言ってしまえば狭い意味でのいわゆる「うつ病」なんですが、さて、この「大」って何でしょう?

major depressive disorder

元々の英語名である“major depressive disorder”の“major”を「大」と訳したのですよね。

確かに“major”には「大きい方の」とか「より大きい」という意味があります。

majorの意味 – 英和辞典 Weblio辞書

a(大きさ・数量・程度など他のものと比較して)大きいほうの,より大きい

じゃあ、一体「うつ」の何が「大きい」んでしょうか?

「大うつ病性障害」って誤訳ですよね

この“major”は、むしろ「めだった」とか「主な」という意味ではないでしょうか。

こんな記述を見つけました。

大うつ病とは主うつ病の誤訳で(中うつ病や小うつ病はありません)、最も多いうつ病を指している言葉です。

市橋クリニック : 心の症状と解説 : 病気と治療方法より

ですよねえ。

DSM-5で修正しないの?

先ほども触れたように、もうすぐDSM-5の日本語版が出そうな感じです。

関連本も色々と出てきてますね。

で、疾病概念の大幅な変更なんかもあったみたいなんですが、“major depressive disorder”はしっかり生き残ってます。

DSM-5勉強メモ:DSM5の全体像、試訳を集めてみる自殺サイト:自殺 臨床心理学 (和光大学末木新研究室ブログ)
双極性障害(躁うつ病)の診断基準 DSM-5ぷしこノート

DSMも新しくなることだし、訳語も変更しよう!ってことにはならないのでしょうか?…ならないのだろうなあ…。

確かに臨床上困ることはないでしょうけれども、でも「誤訳である」というのは、修正する理由としては十分である気もするのですが。

ちなみに“major league”→「大リーグ」の件

アメリカの最上位のプロ野球リーグは“Major League Baseball; MLB”です。今ではみんな「メジャーリーグ」と言ってますが、一昔前は「大リーグ」と言っておりました。

「大リーグボール養成ギプス」なんてのもありましたね。

この「大リーグ」の「大」も“Major”の訳…と思われがちなのですが、実はメジャーリーグの別名「ビッグリーグ(Big League)」の訳語なのだそうな(参考:メジャーリーグベースボール – Wikipedia

以上、まめ知識でございました。

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コメント/トラックバック (6件)

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  1. えと。

    「大」うつ病、が誤訳かどうか、と言うところはま、いいとしてですね。

    小うつ病性障害 minor depressive disorderというのはDSM-Ⅳ-TRにはちゃんとある概念です。そして、major depressive disorderは最も多いうつ病を指して言う言葉ではありません。

    そして、「大うつ病性障害」という概念は「うつ病」とは全然別次元の概念で、大うつ病性障害をざっくり言ってもうつ病にはなりません。狭い意味でのうつ病でもありません。「大うつ病性障害」というのはあくまで症候学的分類としての用語であって、病理分類の用語でありません。

    わかりやすく言うと。
    胃がん。膵臓癌。肺がんにあたるのが「大うつ病性障害」で
    扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌にあたるのが「うつ病」です。

    これを「大中小」と訳すのか、他の訳語の方が適切なのか、というのはものすごい議論の末になされたことを忘れないで下さい。major depressive disorderを大うつ病と訳さずに例えば「目立ったうつ病」と訳したらminor depressive disorderはどう訳せば良いのでしょう?「目立たないうつ病」?そんなことはないですね。「主なうつ病」と訳したらどうなりますか?「末端的なうつ病」?そんなことはないですね。

    ただ、この辺の訳語は実は変更しようという動きがあるのも確かです。

    というより。

    「minor depressive disorderと言う概念はない」と言うのはむちゃくちゃ間違ったことなので、修正された方が良いと思います。

    DSM-Ⅳ-TRのポケット版しか読んでない人はそういう誤解をしがちですが、精神科診断の診断体系を理解するには、ちゃんとマニュアル全体をお読みいただく必要があります。これはDSM-5になっても変わらないと思います。

    ちなみに DSM-ⅤではなくDSM-5です。この名称変更もかなりの議論の末に行われたことをご承知おき下さい。

  2. >けろすけさん

    ご指摘ありがとうございます。
    …ということは、リンク先の記述が間違っているということでしょうか。

    ちょっと調べてから修正させていただきたいと思いますので、もしよろしければ

    “これを「大中小」と訳すのか、他の訳語の方が適切なのか、というのはものすごい議論の末になされたことを忘れないで下さい。”

    この点について参考になる文献等、教えていただけるとありがたいです。

    一カ所だけ“V”になっていた点については修正させていただきました。

  3. 管理人さん>
     
     まずは新しい文献に当たる前に、
     DSM-Ⅲ-R、DSM-Ⅳ、DSM-Ⅳ-TRの訳者序をお読み下さい。
     そこに、訳語をどうするかの議論の一端が載っています。

  4. 管理人さん>
     
     追記です。
     ちなみに、リンク先のHPの記述は
     「完全に」間違っています。

  5. 管理人さん>
     
     更に追記です。
     こんなことを書く人が、日本うつ病学会の評議員、、、、
     世も末ですね。。。
     私は日本うつ病学会には入っておらず、今後入るか検討していたのですが、かなりその気が失せてしまいました。

  6. 小うつ病性障害は研究用基準案としては存在しますが、特定不能のうつ病性障害と診断されるわけで、現実には小うつ病という概念は存在しても診断はなされません。そのような状態にもかかわらず「大」うつ病という名称だけで運用されていることが問題なのではないでしょうか。DSM5では神経性無食欲症が神経性やせ症に、解離性同一性障害が解離性同一症へ変更されることが発表されましたが、特に神経性無食欲症の改訂は当然だと思います(確かDSM-IV-TRにも食欲がないという表記は誤りであるとことわり書きがあったように記憶しています)。DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン:https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/dsm-5/files/dsm-5_guideline.pdf

    主うつ病というのは目立ったという意味ではなく、「主な」という意味だと思います。けろすけさんのように抑うつ症状の鑑別を行い、内因性とその他を区別して治療されるなら問題ないと思いますが、大うつ病性障害は現実にはその鑑別を不問としてしまいました。大うつ病という名称が適切でないというのは、うつ病患者をきちんと診分ける必要があるという現実から生まれたもので、少なくとも対外的には誤解を招きかねない名称であると私は思います。


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