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『ロールシャッハテストはまちがっている』を読む-第2章 テストの誕生:ロールシャッハ・インク図版の始まり

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過去ログ
『ロールシャッハテストはまちがっている』を読む-プロローグ(06/03/14)
『ロールシャッハテストはまちがっている』を読む-第1章 心を映すエックス線:ロールシャッハテストの威力(06/03/17)
を未読の方はまずそちらからどーぞ。
この本のレビューの続き。
あまり反響のないこのシリーズですが、当ブログ経由でこの本を購入してくださった方が何人かいらっしゃるところをみると、興味がないわけではないのですよね…と信じたい今日この頃です。

ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議 ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議
ジェームズ・M. ウッド スコット・O. リリエンフェルド M.テレサ ネゾースキ

北大路書房 2006-02
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※ご注意
ロールシャッハについて学んだことのない方はこのエントリ及び上記書籍はお読みになられないことを強くお薦めいたします。
受ける前にロールシャッハについての知識を得てしまうことで、本来それによって得られるはずの利益が得られなくなる可能性があります。それは検査を受ける側にとっても行う側にとっても不幸な事態であると言えます。
それでもネット上で知識を得てしまうことはあります。もし、受ける前にそうした知識を得てしまった人がロールシャッハを受けることになった場合は、その旨をテスターにお伝え下さい。それなりの力量がある検査者であれば、適切な対処がなされるはずだと思います。

では、上記の注意事項を読まれた上で以下を読んでも良いと判断された方のみ続きをどうぞ。


第2章ではまず、ヘルマン・ロールシャッハ(Rorschach, H.)が彼のインクブロットテストを考案した初期の歴史について述べられてます。この辺、すっきり簡潔にまとまっておりわかりやすいです(ロールシャッハのイケメンフェイスを拝むこともできますヨ)。
ま、その歴史の部分はとりあえずおいといて…その後、ロールシャッハの業績の最も重要な部分である、主要なスコアに対する批判が展開されているわけですが…。
確かに「まちがいの源」の節(p.39-41)で述べられているように、当時の(そして現代でも)臨床心理学者・精神医学者が犯しやすい落とし穴に関する指摘は的確です。ヘルマン・ロールシャッハの研究におけるサンプル数の少なさ、ロールシャッハ以外の変数つまり外的基準がないこと、確証バイアスを避けるための手続きをとっていなかったことは、研究上、致命的なことであるのは間違いありません。
ただ、問題はその前の主要スコア・主要概念に対する批判の部分にあります。
各指標に関して、筆者らは一部その妥当性を認めながらも、大部分は仮説を否定していきます。で、その中には私も個人的に「それはどーよ?」と思うような研究もないわけではありません。しかし、ここで挙げられている研究の他にも基準関連妥当性の面から様々な研究がなされていますがそれらは無視されていますし、なによりも科学性云々言うのであれば追試して同じ結果がでないことをまず示してみる必要があるのではないかと思いますよ。手続き上の不備があるのであれば、その点を修正した上で追試が必要でしょうし。
結局、この人たち、文献レビューの結論を元に「○○の心理学的意味がわかったということはできないというのが本当のところである」と断じているのですよね。
それはお前、科学じゃないだろう、と。私はこう言いたいわけですよ。
あと、これは科学的視点からは離れてしまうかもしれませんが、この本の筆者らは現象学的視点からのロールシャッハ研究はどのように捉えているのでしょうかね?…てかこの人たち、シャハテルのロールシャッハの体験的基礎これもロールシャッキアン必読の良書!)は完全無視ですか?
解釈仮説への現象学的理解ってのはこの本を読むとわりとすんなり入ってくるんですけどねぇ…シャハテルの名前は一度しか出てきませんよ(それもあまり重要な部分じゃない)。
簡単にまとめると「言っていることに納得できる部分もまあありますが、反論の論拠が弱すぎる部分が目立つ」ってところでしょうか。流して読むと「ふーん。それは間違ってるんだー」で終わりかねないところが多々あるんですが、「何でそれは否定されるの?」って思う部分も多々ありますよ。
こんな感じでどうでしょ?異論・反論・オブジェクション持ってらっしゃる方は是非ともお聞かせくださいな。

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