臨床心理学

『ロールシャッハテストはまちがっている』を読む-プロローグ

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06/02/09のエントリ、【いずれ】ロールシャッハテストはまちがっている【レビューをば】で予告した通り、この本のレビューをしようと思います。

ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議 ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議
ジェームズ・M. ウッド スコット・O. リリエンフェルド M.テレサ ネゾースキ

北大路書房 2006-02
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レビューというかたぶん「反論」になると思います。
で、この本、実はすげー良書だと思います。なんでかと言うと、とにかく引用文献が多いのです。個人的には引用文献が多いだけで「良書のハードルその1」はクリアだと思っております。ま、もちろんあからさまに間違った引用の仕方をしている書籍というのは世の中にあったりもしますが、少なくともこの本はある程度妥当な引用の仕方をしています(ように思えます。今の段階では)。
で、歴史的に重要な位置づけにある文献をかなり網羅している上ロールシャッハの歴史を詳細に追っており、それだけでも読む価値はあります。
そんなわけでかなりお薦めです。ロールシャッハを実際に使っている人はマストバイだと思います。
当ブログでは1章毎にレビュー(てか反論)していく予定です。ですので、是非ともこのレビューを読まれる方にはご購入をお勧めします(はいはい。商売商売)。実際に本を読みながらレビューを読んでいただけると、理解も深まるというか面白いはずですし、私が変なことを言っているのであれば、是非とも再反論していただければと思うのです。
その上で一つ注意したいことがありますですよ。それは…


・ロールシャッハを勉強したことがない人は読まない方が良いです
それはこの本だけではなく、このレビューも、です。これはあくまでも私個人の意見ではありますが、ロールシャッハを用いている多くの方はそのように考えるはずです。
「ロールシャッハについて詳しく知られたら困るんでしょ?」と言われたら、「言ってみればそういうことです」と答えさせていただきます。ただそれは「反論されたら困る」ということではなく「テスティー(=受ける側の人)がロールシャッハについて知ってしまうことはテスター(とりあえずそう書きます)にとってもテスティーにとっても不利益をもたらす」という意味で困るのです。
正直、ここまで書いてしまっている時点で「どうなのかなぁ」と自ら思わないでもありません。ここまで読んで興味のある人…特にロールシャッハに対して懐疑的な人は「買いてぇ」「読みてぇ」と思われるかもしれません。でも「ロールシャッハは使える可能性があるのかも」と少しでも思ってらっしゃるのであれば我慢してください。
端的に言ってしまえば、こうした本を読んで知識を得ることで結果が歪んでしまう可能性が十分考えられるのです
私は各種心理アセスメントを行う際に、それまでそうした心理検査などを受けたことがあるかどうかは必ず尋ねることにしています。で、もし受けたことがあるのであれば、それは解釈の際に当然考慮しますし、可能であればそのときのデータも取り寄せるよう努力します。
で、可能性が考えられる場合(例えば文学部心理学科在学中の人とか)には、心理検査について勉強したことがあるかどうかも尋ねることにしています。それについて学んだことがあるかどうかも結果に影響を与える可能性があるからです。
どうしてもこの本を読みたくて読んでしまった人。そういう人がこれからロールシャッハを受ける可能性は0ではないですよね。そういう意味では私だって、これから「患者」「クライエント」としてロールシャッハを受ける可能性は皆無ではありません。
読んでしまってある程度知識がある人がこれからロールシャッハを受ける機会があったら、それは是非とも「ある程度知識がある」旨をテスターにお伝えください。そうすることで、テスター・テスティーともに無駄な時間を過ごさなくて済むかもしれません(やる方もうける方も大変ですから)。
そして少しでも「ロールシャッハは使えるのかもしれない」と思うのであれば、(もしも受ける機会があった場合に)その恩恵を最大限に受けるためにも読まないでいただきたいのです。
あとこれからロールシャッハを勉強したいと思っている方へ
そういう方も同じです。
これから勉強される方は、ロールシャッハについて知る前に(できれば図版さえも知らない状態で)是非とも自分がテスティーを体験していただきたいです。予備知識なくまっさらな状態で。それも可能であれば習熟した人にやってもらってください。学び始めの学生同士とかじゃなく。
そうすることで、かなり純粋な意味での被検者体験(とは言っても別にクライエントとして受けるわけではないので100%同じではないですが)ができます。それは今後の臨床実践の上でかなり貴重な体験になるはずです。
余談ですが、ロールシャッハについて何も知識がなく図版も見たことがないような、そしてこれから心理臨床の職に就くかどうかもわからない学生に対して、面白半分で図版を見せてしまうような教員は糞だと思います。個人的に。
ついでに学生同士でロールシャッハをとらせる教員もいかがなものかと思います。個人的に(ただこれは学生数が多いとどうしようもない面はあるとは思いますが…それでもなぁ…)。
てかぶっちゃけ、この本、ロールシャッハを知らない人が読んでも面白みは半減だと思うですよ
せっかくの詳細なデータもそれが何を意味しているのかわからなければ、やはり面白くはないです。切り口は痛快なので、それはそれで面白いんですが。
………………………
そんなわけで不定期にはなると思いますが、この本、1章ずつ読んでいきます。第1章 心を映すエックス線:ロールシャッハテストの威力 は今週中にアップ予定(予定は予定で決定ではなかったり)。
レビューを読まれる方は是非ともご購入くださいませ(最後にもう一度貼っておこう)。

ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議 ロールシャッハテストはまちがっている―科学からの異議
ジェームズ・M. ウッド スコット・O. リリエンフェルド M.テレサ ネゾースキ

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