臨床心理学

【ふーん】「専門家は『自傷行為をしてはいけない』という姿勢を崩すべきではないし、自傷行為は厳しく否定されなければならない」んだって。初めて知った【へー】

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個人的にはずっと気になっていたのですが…。そのうち誰かツッコミ入れるかな?と思っていたんですけれども、少なくとも専門家(と思しき人)は誰もコメントしていないので(誰も読んでない…わけではないですよね?)、ちょこっと言及してみますよ。
takashiさんのさいころじすと日記の08/08/22のエントリ
[時事問題][心理学小話]リストカットの告白をするのであれば、そういった告白記事を取り上げるのであれば
です。
一応魚拓もとっておく。
(cache) リストカットの告白をするのであれば、そういった告白記事を取り上げるのであれば - さいころじすと日記
ちなみに、過去ログ
自傷行為(05/11/28)
『自傷行為』再掲(07/02/28)
でも触れておりますが、今、私の手元にこんな本がありまして。

自傷行為―実証的研究と治療指針 自傷行為―実証的研究と治療指針
Barent W. Walsh Paul M. Rosen 松本 俊彦

金剛出版 2005-02
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詳しくは上記過去ログをご覧いただければと思いますが、これ、ホントいい本ですよ。原著“SELF-MUTILATION : Theory, Research, and Treatment”は1988年の本であり、内容的にはちょっと古いんですが(DSM-III-R準拠だったりする)、それでも非常に有用な本だと思います。
この本を参照しつつ、takashiさんのエントリにツッコミ入れていきたいと思いますよ。
…の前に、上記書籍データを確認していたら、こんな本も見つけました。

自傷行為治療ガイド 自傷行為治療ガイド
松本 俊彦

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ヤベ。これ買おう。
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さてさてようやく本題に入ります…。

自殺に対してもそうなのだから、自殺未遂とも言えるリストカットの自傷行為に関するマスコミの扱いについても問題だらけだ。こういった有名人の告白を取り上げることは、結果として多くの人の自傷行為を受容・共感、そして肯定してしまうことになり、自傷行為の抑止とは逆の方向に働く。

マスコミの自殺報道に関する意見に関しては、私もtakashiさんの意見に同意します。
で、自傷行為に関する報道に対しての私の意見ですが、基本的には芸能人の売名行為的な形で使われるのはどんなものかと思うし、自身の自傷行為をある意味でセールスポイントにせざるを得ないタレントなんてのは、その時点で既に商品価値としてどうだろうなあと思ったりもします。
そして当たり前の話ですが、自傷行為を積極的に推奨したり肯定したりするつもりはありません。「やらないに超したことはないだろうなあ」と思いますし、とりあえず良いことだとも思いません。
なんですが、とりあえずその辺はおいといて、上記takashiさんの記述ですよ。
「自殺未遂とも言えるリストカットの自傷行為」って…何すか?
つか、そもそも専門用語としては「自殺未遂」って言うよりは「自殺企図」なんじゃね?と思ったりもしますが、それ以前に自傷と自殺は別の概念として考える必要があり、当然、対応というのも違ってくるはずなわけですよ。てか、そういう考え方ってご自身の臨床実践にも影響与えてくるんじゃないかと思うんですが…takashiさんは自傷と自殺を同じ物だと思ってんですか?
現に『自傷行為―実証的研究と治療指針』では第2章と第3章の丸々2章を使って「自傷と自殺をいかに見分けるか?」ということが述べられております。もちろん、「深刻な自殺企図を繰り返す自傷者」の一群ってのもあるわけですが、あくまでも「少数派」なのですよ。
E. S. シュナイドマンの『自殺とは何か』でも、「自殺と自傷行為のおける特徴の比較」ってことで「刺激」「ストレッサー」「目的」「感情」「内的な態度」「認知の状況」「対人関係における行動」「行動」「一貫性(consistency)」という10項目に渡って相違が取り上げられております。
「そんな重箱の隅をつつくようなこと…」なんて言わないでくださいね>takashiさん
繰り返しますが、これ相当重要な概念上の違いであり、当然その違いはそれぞれの行動への対応にも影響を与えてくるものです。「重箱の隅」じゃないっすよ。

専門家にしても、マスコミにしても、「自傷行為はしてはいけない」という姿勢を徹底すべきだ。自傷行為にいたった経緯や気持ちはともかく、行為として結果としての自傷行為は厳しく否定されなければならないと考える。告白する有名人にしても、それを取り上げるマスコミにしても、扱うのであれば「自傷行為は間違った行為である。やってはいけない」というメッセージを強く伝えるべきだし、リストカットに代わる手段を伝えたり、専門機関の紹介やそこに行くことも強く伝えるべきである。

へえ…「行為として結果としての自傷行為は厳しく否定されなければならない」ですか…。
…あの…takashiさん、思春期・青年期の女性のケースって担当したことあります?(つか、今は小学校でも自傷してる児童がいたりするわけですが)その年代だと自傷行為が見られるケースはかなり多いんじゃないかと思うんですが、「自傷行為を厳しく否定する」ことで面接がうまく行きましたか?
もしそれで全てのケースがうまくいっているとしたら、takashiさんはすげえ能力の持ち主だと思いますね。それが心理臨床実践に関する能力なのかどうかは私にはよくわかりませんが。
少なくとも、自傷行為と一口に言っても、その原因は様々であり関わる要因も非常に複雑です。一律に「否定されなければならない」という態度で良いかと言うと、そうではないでしょう。
WalshとRosenも「境界性人格と自傷」「精神病における自傷」「精神遅滞と自閉症における自傷」と大きく3つにわけ、それらにおける様々な要因の検討を行っています。
器質的な要因が強く影響しているような自傷行為の場合は「厳しく否定されなければならない」という態度では何の解決にもならないですし、BPDのケースなんかは自傷行為が治療者を「特別かつ強烈な関係へと巻き込んでいこうとする操作の試みとして用いられる」ことが多く、「厳しく批判する」なんてのは正に巻き込まれている状態である可能性もあります。そうしたケースにおいては自傷行為そのものを扱うよりも重要なことってありますよね…
てかホントに臨床実践の中でどう対応してるんすか?>takashiさん
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私は当ブログでもしばしば「ネット上の書き込みから書き込んだ人の臨床実践の能力を把握することはできない」と書いてきましたが、これは「臨床実践や臨床の知識と関係のない、ネット上の書き込み」についての話なのですよ。臨床に関する知識のなさや間違いを露呈しているような書き込みを見た場合は、やはりその人の能力に対して疑問符をつけざるを得ません。
あ、別に具体的にどう対応してるとかコメントいただかなくてもいいですよ>takashiさん
その辺に関してはケースバイケースでしょうし、それにこれから何を書いても後出しジャンケンにしかならないでしょう。
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なんてことを書きつつ、さいころじすと日記の昨日のエントリ
[時事問題][心理学小話]今後臨床心理士資格はキャリアアップやスキルアップのための資格と成り下がるだろう
なんかを読むと、正直腹が立ってくるんですがねえ…。

そもそも、臨床心理士が増えすぎて、毎日SCの仕事ができるなんてことはなくなった。人余りの激しい都市部では、既に「SCは1人1校まで」という制限があるし、来年度はさらに予算が減らされる可能性が高く、遅かれ早かれ時間数・日数が激減するのは確実である。

SCの状況は確かに厳しいかもしれませんが、必要とされる人材はやっぱりそれなりに働けて、それなりの収入は得てますよ。私の知ってる中でも収入が減って困っている人もいますが、そうでない人もいます。本当に必要とされていて結果を残している人は、SCの予算が削減されても生き残っていけるでしょうね。
そのためにみんな日々努力してるわけですしね。

病院で常勤で働けたとしても、そう給料がもらえるわけではない。看護士とは比較にならない。公務員の心理職も、ある程度の年齢にいかなければそんなに多くもらえるわけではないし、児童相談所・警察、矯正施設など、過酷な勤務の職場が多い。時間給に換算するとサラリーマンよりは低い場合が多いだろう。といっても、いずれも常勤職なので、募集があれば教員並に競争が激しくなる。

一応、自分が恵まれた状況にいるのは理解しておりますが、ワタクシはそれなりに家族を養っていってますよ。同年代の同業者の話を聞いてみても、結構それなりにやってる人は多いです。
とりあえず自分の状況があまり良くないからといって、それを心理職全体の話として一般化するのはやめませんか?自分の現状の問題を自分の能力に帰属させるのは辛いことかもしれませんが、その辺を把握せずに世間が悪いなんて話をしていても何も解決にならないと思うのですよね。
…と言うだけの根拠がこのエントリで挙げたところの問題ですよ。ご自身の知識のなさに気づかないまま、間違った内容を垂れ流してんじゃねーかと思ったので。
ちなみに前から述べておりますが、私も大した知識や能力は持ってないですよ。それは自覚しているので日々勉強の毎日ですし、知識が少ないからこそネット上で臨床実践に関することを書く際には間違った知識を披露しないように注意しているつもりです。
そんな私でも何とか働くことができているわけですから、ありがたいものだと思いますよ。
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