臨床心理学

【ロテ職人的】困ったオーダー【模範解答】

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では私の考えるところの解答をご披露しようかと思います。

 

まず問題は「このオーダーを出した精神科医Kの問題点を3つ以上箇条書きにし、なぜそれらが問題であるのか各項目に関して臨床心理学的および精神医学的観点から説明せよ」ということでしたが、2つ以上(まともな)解答を書いていただけた方には6点×2で12点ゲットです。皆さんの解答を見たところ、とりあえず2つは妥当な解答がなされていたようなので、皆様12点以上はとれております。

 


さて、問題は残りの18点ですね。

ここでDSM-IV(-TR)の診断基準について見ていきましょうか。そんなのは聞かなくても分かってる…と言われても、とりあえず見てみましょうよ。

DSM-IVでは全ての症例を軸に即して記録します。ここで言う軸とは情報の種類のことです。それぞれの軸についてみていくと

 第1軸 臨床症候群 ここに精神疾患、例えば統合失調症、双極性障害などを記録する。臨床的関与の対象となることのある他の状態(境界知能は除く)も第1軸に記録する(これは臨床診断を保証するほど重篤ではない問題である。例えば、対人関係の問題、死別反応)。
 第2軸 人格障害と精神遅滞 精神遅滞と人格障害はここに記録する。防衛機制と人格傾向もここに記録してよい。第1軸診断と第2軸診断とは併記できる。患者が精神科を受診する理由となった第1軸あるいは第2軸の状態を、主診断と呼ぶ。
 第3軸 身体疾患あるいは状態 患者に身体疾患、たとえば肝硬変がある場合にはここに記録する。
 第4軸 心理社会的および環境的問題 患者の生活における現在のストレスを記述する。離婚、外傷、親しい人の死。
 第5軸 機能の全体的評定(global assessment of functioning:GAF) GAF尺度(省略)に従って、患者の社会的、職業的、心理的機能の最高水準を点数化する(以下略)

で、DSM-IVの適応障害の診断基準を見てみると

A. はっきりと認識できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に、情緒面または行動面の症状の出現。
B. これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のどちらかによって裏付けられている:
  (1) そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものをはるかに越えた苦痛
  (2) 社会的または職業的(学業上の)機能の著しい障害
C. ストレス関連性障害は他の特定の第1軸障害の基準を満たしていないし、すでに存在している第1軸障害または第2軸障害の単なる悪化でもない。
D. 症状は、死別反応を示すものではない。
E. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない。

(カプラン, H. I., サドック, B. J.(編著) 融 道男・岩脇 淳(監訳) カプラン臨床精神医学ハンドブック DSM-IV診断基準による診療の手引 メディカル・サイエンス・インターナショナル より)

さて、問題のK医師による臨床診断の項目を見ると

臨床診断:適応障害・アルツハイマー型痴呆

とありますね。この時点でダウトです。

そもそもこの「適応障害」というのはDSMあるいはICDに基づく概念であるということが前提としてあります。その上で第1軸診断であるアルツハイマー型痴呆が併記されているという時点で間違いになるわけです。診断基準のCの項目に反しますからね。

ということで残りの得点の採点基準ですが「適応障害」に触れていればプラス6点、DSMの診断基準を取り上げて(DSMの名前を出していなければプラスになりません)プラス6点、適応障害とアルツハイマー型痴呆が併記されている点に言及してプラス6点とします。

配点ははっきり言って適当ですが、全ての基準で6点となったのは期せずしてバランスが良かったかも。一応、満点はいないと思いますが、別に後だしジャンケン的に採点基準を決めたわけではなく、出題の段階でちゃんと基準はありました。次回は答えていただけた方の解答を見ながら、今回のこのオーダーの問題点について改めて考えてみたいと思います。

※この採点基準で問題があると思われる方はどんどんクレームください。当方、間違っていた場合には謝る気満々です。どんどん訂正もしちゃいますよ。

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