臨床心理学

【同じ穴の】心の闇とかに言及してしまう人【ムジナ】

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takashiさんのさいころじすと日記11/14のエントリで、女子高生タリウム母親殺人未遂事件(長い)に関するこの記事に対する言及がされていますよ。
Sankei Web - 少年犯罪 ネットで犯行誇示 専門家分析…心奥の敵意表出
記事の全文コピペしてみますよ。

少年犯罪 ネットで犯行誇示 専門家分析…心奥の敵意表出
 母親(47)に劇物のタリウムを飲ませて殺人未遂容疑で逮捕された静岡県伊豆の国市の県立高校一年の女子生徒(16)が、ブログ(日記風簡易ホームページ)に衰弱する母親の様子を記録していたことが社会に衝撃を与えたが、重大な事件を起こした少年や少女がネット上で“犯行予告”や“犯行過程”を書き込むケースが続いている。「過剰な自己顕示欲」「深層心理の中の敵意が表出しやすくなっている」…。専門家の指摘からは、少年たちの「心の闇」の深さが浮かび上がる。(豊吉広英) 
 平成十二年五月、九州自動車道で起きた西鉄高速バス乗っ取り事件。わずか十七歳の少年が起こした凶行への恐怖とともに、少年のネット上での言動が驚きを持って伝えられた。
 「佐賀県佐賀市17歳 ネオむぎ茶 ヒヒヒヒヒ」。犯人の少年が犯行の約四十分前に、インターネット掲示板にこう書き込んでいたことが、事件後に発覚した。警察は“犯行予告”めいたメッセージとみて調べた。
 十五年十一月。家族三人を殺傷した大阪府河内長野市の大学一年の少年=当時(18)=に同行していた交際相手の高校一年の少女=同(16)=は、自身のホームページで、少年と共通の趣味だった奇抜なファッション「ゴスロリ」(ゴシック・ロリータ)に関する記述とまじえ、犯行をこう“予告”していた。
 「いってきます。捜さないで下さい。その方が幸せだから」
 精神科医の町沢静夫氏は「お互いに『これだけやった』という顕示欲の競争が行われているようだ」と分析する。「平成九年に神戸で発生した児童連続殺傷事件の『酒鬼薔薇聖斗』を頂点として、『悪の英雄になりたい』という気持ちがあるのではないか」
 今年六月に高知県土佐市の私立明徳義塾高校の教室で同級生をナイフで刺した少年=同(17)=は、犯行前日に自分のHPで「明日こそ殺してやる」と明確に犯行を予告していた。警察の調べに「他人の日記を見て、自分でもつけてみようと思った」と、ほかから影響されたことを供述した。
 このほかに、いたずら目的でネット上に「犯罪を起こす」という予告を書き込む例にいたっては、全国各地で次々と発覚している状態だ。
 「自分の事件を人々に知られ、報道されることが犯行の目的になっている」。帝塚山学院大教授(犯罪精神医学)の小田晋氏は「情報発信手段が多様化する中、不特定多数に自分の行為を知らせる手段としてネットを利用し、達成感を感じている」としたうえで、「自己顕示欲を満たしたいなら犯行後に自首すればいいはずだが、実際には捕まるのは嫌で、逮捕されれば、否認したり、のらくらと逃げ回る。子供たちの心の内に矛盾する感覚がある」と指摘する。
 一方で、ネットでの激しい書き込み内容と、少年、少女の実像のギャップに驚く捜査関係者も少なくない。河内長野市の事件の少女は逮捕後、関係者から「あなたのホームページに皆が驚いている」と言われ、「あれは冗談ですよ。真に受けたんですか?」と淡々と答えたという。「少女の様子は普通で、真意がどこにあるのか分からなかった」。警察のベテラン捜査員でさえ、凶悪犯罪を起こした少年、少女の実像をはかりかねるケースが出ているほどだ。
 静岡の女子生徒のブログについて町沢氏は、「自己顕示欲だけではない、違うものを感じる。自分の親を殺害しようとし、それを冷静に観察し、書き表すことができるというのは、普通の精神状態ではない。自分が自分ではないような感覚があったのではないか。アイデンティティー(自己同一性)がおかしくなっているような感じを受ける」と驚く。
 一方、小田氏は「同性の親への敵意自体はどの子供にも起き得る。娘の母親への敵意は『エレクトラコンプレックス』と呼ばれるが、通常は強く抑圧されるもの。しかし最近の教育の中で、親への孝行ということが軽視されるようになり、また、尊属殺人に対する処罰が以前より軽くなってきた流れを受け、抑圧してきたバリアが低くなり、心の深層にあった敵意が浮上してきた可能性がある」と指摘している。

で、それに対してtakashiさんは

だから、どうして、精神分析的な視点からしか物事を見られないのか? 精神分析的な解釈を簡単にマスコミ上で垂れ流すのか? 完全に「捉えまちがっている」。

とおっしゃっていますが、私もそう思います。
で、その後

※これらの事件について、「容疑者の少年少女が発達傷害である」と主張しているのではありません。また、「発達障害の人の犯罪率が高い、犯罪を犯しやすい」とくれぐれも短絡的に解釈しないようにしてください

と注意書きをした上で

誤解を生じるかもしれないが、これら事件については、発達障害の可能性も含めて検討されるべきで、もし発達障害であるならば精神分析的な解釈など無意味だ。

と論じてらっしゃいますが…
…正直、発達障害の可能性も含めて検討するのであれば、その他の全ての可能性をまずピックアップする必要があるんじゃね?と思うわけです。で「精神分析的解釈」が「発達障害という観点からの解釈」にすり替わっただけで、こういうことについて論じている時点で同じ穴のムジナじゃね?と思うわけです。
私は2/15のエントリ、少年の凶悪犯罪に臨床心理学的立場から言えることで、今回のtakashiさんと同じように、大阪寝屋川の小学校教職員殺傷事件を取り上げてこう述べておりますよ。

実際臨床心理学を専門としていたりすると周りの人から「あの事件って心理学的に見てどうなの?」とか「あの犯人の心理ってどうなってるの?」と質問されることもないわけではありません。私はそういう時は必ずこう答えることにしています。
「実際に犯人に会ったわけじゃないからわからない」
「こうかもしれないっていう仮説は立てられるかもしれないけど、責任を持った発言はできないからコメントは差し控えさせていただきます」

と。
会ったこともない人のことを、マスコミからの情報という限定された、そしてかなりバイアスのかかった情報のみから判断するなんて、常識的に考えて絶対不可能じゃないですか。人間なんて直接会ってたってよく分からないんですから。
「こういうことを考えることに意味があるんだ」という主張もあるかもしれませんが、ブログを読んだ人の中に新たな誤解というかバイアスを作りだす可能性があるということを考えると、むしろ無責任に発言しない方が良いと思うのですがねぇ…。
上記の過去ログにも書きましたがもう一度言わせてもらいます。
大切なのは、無責任な仮説を垂れ流すことでは決してないはずです。

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