臨床心理学

クライエントの悩みを「くだらん」と思うのは何故いけないのか?

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12/5のエントリ、クライエントの悩みに対して「くだらん」と思う人が盛り上がっています。
皆さんから色々とコメントをいただき、統計職人さんの件の発言のどこが問題だったのか?クライエントの悩みを「くだらん」と思うのは何故いけないのか?改めてここでまとめてみたいと思います。


当該エントリのコメント欄でミナミノシマさんからこんなコメントをいただきました(ミナミノシマさん、コメントありがとうございました)

35. Posted by ミナミノシマ 2005年12月06日 21:06
おひさしぶりです。
あれ、「『くだらない』と思ってもブログに書くべきじゃない」と、「『くだらない』って思うべきじゃない」が混じってきてるような?
例えば「つるかめ算が分かりません」っていう小学生の悩みなんて、すごい「くだらない」ものじゃありません?
でも、小学生の家庭教師をする人は、「くだらないところでつまずいてるなぁ」って微笑みながら、鶴の足の本数と亀の足の本数について大真面目に語ってあげるのでしょ。
「くだらない」って思うのは全然アリだと思ってます。「くだらない」問題に対して、いかに現実的に対応するか、っていうところが、プロなんですよねえ。

「『くだらない』と思ってもブログに書くべきじゃない」というのはそうですね。
Tさんは以下のようなコメントをくださってます。

16. Posted by T 2005年12月06日 00:08
「蜂が群がるように一気に叩く」というか・・臨床心理関連のブログって、専門職の方だけでなく、クライエントの方がご覧になっていることがあると思います。そのブログをご覧になったクライエントの方に、臨床家みんなが「『くだらん』と思うこともある」なんて思われたくないと考えたり・・

こういう可能性を考慮すると、不用意に「臨床家としての自分がクライエントの悩みを『くだらん』と思うことがある」なんてブログに書くことは避けなければならないでしょう。
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ここでちょっと脱線。
私は使えないカウンセラー、能力のない臨床心理士はクライエント・患者に迷惑をかけるだけなので、この世からいなくなって欲しいと思っています。そういう考えに基づいて「○ね」と言う言葉を使うことがあります。
ただ、過去ログを見ていただければわかると思いますが、クライエント・患者に対して「○ね」と言ったことは絶対にありませんし、ついでに言えば、実際の面接がどうだったかなんてことも書いたことはありません。たまに「今日SCの日だったんだけどこういうことがあって~☆」なんて書いているブログ管理者もいたりしますが(そういう人のところにはリンク張ってませんけどね)、当事者が見たら気づく可能性は大ですよね?
実際の臨床場面で起こったことについての話なんて、スーパーヴァイズや事例検討会、あるいは学会などですればいいだけのことであり、ネットに書き込む理由が全くわかりません。というか、そういうことをしてしまう時点で、何も考えていないということは明白であり、その人の臨床実践に対する態度、考え方、さらには臨床の技量に関しても推して知るべし…ということになりますね。
…以上、脱線でした。
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さて、ミナミノシマさんのコメントの中の問題点の2番目、「『くだらない』って思うべきじゃない」ということについてですが、ミナミノシマさん自身は

「くだらない」って思うのは全然アリだと思ってます。「くだらない」問題に対して、いかに現実的に対応するか、っていうところが、プロなんですよねえ。

と書かれています。
実際問題、話を聴いていて「くだらない」と思うことはひょっとしたらあるかもしれません。このブログで何度も述べているように我々は聖人君子ではない、平凡な人間です。人間ですから当然、クライエント、あるいはクライエントの訴えに対してネガティブな感情を抱くこともあるでしょう(ただ、統計職人さんの場合、どんな訴えを「くだらない」と思われるのか大変気になるところではありますが…)。
で、それに対してミナミノシマさんは「いかに現実的に対応するか」としていますが、カウンセリング・心理療法の場面だとしたらそれは違うのではないかと思うのです(統計職人さんは「クライエント」と呼んでいることから、それは「生徒指導」の場面じゃないですよね?)。
「現実的に対応する」となると、それこそ「つるかめ算について大真面目に教える」というようなことになると思いますが、そうではなく(既に何人かの方からご指摘いただいていますが)結局、自分の逆転移に気づいて、それに対して対応するということになるでしょう。
以下、憶測で語らせていただきますので、もし事実誤認等ありましたらご訂正・ご反論ください>統計職人さん
あちらのブログの当該エントリのコメント欄での統計職人さんの書き込みを見ていると、そうした「自分の逆転移に気づいて対応する」ということはまずできていないように思って間違いないでしょう。それは統計職人さんの

できる限り共感的に否定し打ち切りたい内容がある。

というような発言を見ても推測可能かと。
ここで統計職人さんは恐らく「共感的に聴いて、その上で否定して話しを打ち切る」ということをおっしゃりたいのだと思いますが、わざわざ「共感的に」なんて言わなくても、それは基本的態度なわけじゃないですか(この辺りはさいころじすと日記「受容」って何だ?シリーズ・しゅう兄さんの臨床心理士的生活受容・共感・自己一致など参照のこと)。
そんな基本的な言葉をトンチンカンな形で使ってしまう時点で臨床実践の能力も推して知るべし…だと思うのですよね。で、前に戻るのですが、それに気づかずに書いてしまうのもどうよ?となるのです。
…なーんて皆さん既にわかってらっしゃるであろうことを、つらつらと書いてしまいましたが、反論等ありましたらよろしくお願いします>統計職人さん&他の方々

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