08/09/26のエントリ、ブログの引用とネットを利用した研究手法に関しての追記の続き。
未読の方、これまでの流れをご存じでない方は以下の過去ログをまずはご参照ください。そしてコメント欄でのやりとりは必須です。未読の方はこのエントリを読む前にどうぞ。
・ネットを用いたサンプリングの問題(08/09/25)
・ブログの引用とネットを利用した研究手法に関して(08/09/26)
・ブログの引用とネットを利用した研究手法に関しての追記(08/09/26)
一連の流れの中で、[家族心理.com]管理人さんから学会の自主シンポで議論をしたいとの申し出がありました。
正直、何でネットで議論できないことが、学会の自主シンポで議論できるのかという疑問はあります。少なくともコメント欄での議論は何人かの方とは成立していると思います。
なぜ[家族心理.com]管理人さんはネットでの議論ができないのか。さらにエントリを修正する前には「ネットでの議論するのは、研究者として品位に欠ける行為である」とまで書いてらっしゃいました。本当にそうなのか?と思ったワタクシはネットでの議論と学会の自主シンポでの議論はどのように違うのか、思いつくままに表にまとめてみました。
ネット | 自主シンポ | |
---|---|---|
時間 | 無制限 | 制限あり |
費用 | 基本的に無料 | 有料(学会による?) |
実名 or 匿名 | 匿名でも可 | 実名 |
参加者の社会的立場 | 不明確 | 明確 |
なりすまし | 可 | 不可 |
参加資格 | 特になし | 会員のみの場合もあり |
議論に参加できる人数 | 制限なし | 制限あり |
参加者 | 不可視 | 可視 |
議論の方向性 | 双方向 | 双方向 |
発言の際の思考時間 | 比較的長い | 比較的短い |
品位 | ? | ? |
項目の順番は適当です。
まず「時間」ですが、基本的にネットでの議論は無制限です。それに対し自主シンポでの議論は当然のことながら時間制限があります。もちろんいずれの場合も最終的に結論を出す必要はないのですが、時間に制限がない方がとりあえず自由度が高い、やりやすいということになるのではないでしょうか?
次に「費用」です。PCがあって、ネット接続の環境が整っていれば、基本的にネット上での議論には参加可能です。自主シンポの場合は、学会への参加費の他、遠方の場合には交通費・宿泊費等が発生する可能性があります。上で「時間」について挙げましたが、移動時間等もかかるという分、不便です。
「実名 or 匿名」という辺りはやはりネットで問題になりがちなことですね。ただ、個人の同定が可能であれば、つまり、ハンドルネーム等からどの発言がどの人のものなのかがわかるのであれば、逆に匿名であることの利点は生きてくるのではないかと私は思います。
[家族心理.com]さんは
教員ですから手続き等の「お作法」には熟知しているつもりです。
と書いていますが、教員だからと言って必ずしも研究法に熟知しているとは限らないですよね。色んな教員いますから。逆に、教員でなくとも研究法がちゃんと身についている人もいるはずです。てか、教員云々は議論の流れには全く関係ないです。
匿名の議論で「自分は教員です」と言っても意味はないですし、教員であることが必ずしも発言の正確さを担保するわけではないのです。学会の自主シンポなんかの場合、権威に弱い人は「相手は大学教員だから」みたいな理由で発言内容とは関係なく意見が流されてしまう可能性がありますが、ネット上での議論ではそうした事態を恐れる必要がありません。
そしてこれは「社会的立場」が明確か否かというところに繋がります。学部生もそして大学の教員も、対等の立場で、社会的立場を気にせずに発言内容のみが問題になるというのは、ネットでの議論の良さですね。自主シンポに限らず、現実場面での議論においては、上記のように社会的立場の高さが悪い意味で威力を発揮する場合があります。「そんなことを言っても、言ってる人間が学部生では説得力がない」みたいな。説得力ってのは発言の内容と論理の整合性だけに本来はかかっているはずなのですがね。
さて、「なりすまし」の問題です。ネット上の議論においてはこれは結構深刻な問題かもしれません。Wikipediaの「ハンドルネーム」の項目にはこのような記載があります。
通常、一人の人間が色々な場面に応じて複数のハンドルネームを使いわけることは珍しくない。ただし、同じ場で複数のハンドルネームを使い分け、あたかも複数の人間が活動しているかのように見せかける行為は自作自演として激しく非難される
他人になりますまし、複数の人間の発言であるかのように見せかけつつ、実は自分で自分のことを擁護している…みたいなことがあるわけです。この辺は疑いだしたらキリがないので、ネットでの議論に関しては相互の信頼がないと成立しないということになるかもです。ひょっとして[家族心理.com]さんは私が「なりすまし」「自作自演」をするような人間だとお思いなのでしょうか?だとしたら非常に残念です。
そんなことをしてもむなしいだけですし、逆から言えば、そういう信頼がない中では自主シンポなんかもできないですよ。実際に会ったら、それこそどんなことをされるかわからないですし。有意義な議論をするためにはネットであっても自主シンポであっても、信頼関係は必要不可欠です。
次は「参加人数」ですが、ネットでの議論の場合、当然人数制限はありません。自主シンポの場合には開催される会場の大きさによって、当然参加者は制限されます。参加者は多い方がそれだけ多くの意見が出るわけで、発言が多い方が実りの多い議論になる可能性は高いのではないでしょうか?「発言が多すぎると収拾がつかなくなる」という意見もあるかもしれませんが、ネットでの議論の方が自主シンポよりも収拾はつきやすいとも思います。
…という感じで長くなってしまったので、続きはまた明日。
これまでのこの話題に関してのご意見お待ちしておりますし、ネットでの議論と自主シンポでの議論の違いに関して他に重要な項目がありましたら是非ともお教えくださいませ。
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