資格問題

参加した人いますか?『 心理専門職に関する国際シンポジウム~国家資格化をめぐって~』

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昨日、東大で行われた『心理専門職に関する国際シンポジウム~国家資格化をめぐって~』ですが、参加された方はいますか?
当ブログの06/09/28のエントリ、再び!だそうでのコメント欄にてAnonymousさんがレポートしてくださっております。あと、ある方からはメールで感想もいただきました。
私ですか?私は家事と育児で忙しくて参加できませんでしたよ。残念。
事前に私が所属している地域の臨床心理士会から「予約参加者が少ないからふるってご参加ください」という旨のメールが届いてたりもしたのですが、参加者はどの程度いたのでしょうかね?
とりあえずAnonymousさんのレポート、コピーしてみますよ(改行は読みやすいように改変してあります)。

国際シンポ行ってきました!
冒頭は、河村議員からのビデオレターでした。
昨年に法案に反対声明を出していた、精神科診療所協会、精神神経学会からも、来賓がありました。反対は反対のようですが、話ぐらいはしようと思ってくださっているようで、質疑応答の際には、発言がありました。
よく来てくださったと思います。今後も対話が必要のように思います。

確かに対話の席につかないことには(ついてもらえないことには?)何も始まりませんわな。そういった意味では精神科診療所協会および精神神経学会からの来賓が参加したということ事態に意義があるのかもしれませんね。

心理学諸学会連合からも、理事長が挨拶に来ておいででした。条件つきながら、2資格1法案を支持してくださるのは、たしかなようです。

一応、それが規定路線なのでしょうね。

招聘外国人の先生方の中では、とりわけPritz博士のご発言が印象に残りました。Pritz博士は、欧州心理療法協会の事務局長で、心理専門職の資格化について、豊富な経験をお持ちだそうです。また、フロイトの名を冠した、ジクムント・フロイト大学を最近、創設したとのこと。
精神科診療所協会の先生から、「医療心理師だけかと思っていたら、臨床心理士も全部医療に入ってくるのか、
という驚きがあって反対した。我々も心理職に独自の専門性があることは認めている。医行為は一部だと言っている。」とのご発言があった際に、Pritz博士が、「下に兄弟ができたときの状況に似ている。これまでと何もかも同じというわけにはいかないが、そのうちよい遊び相手に育つだろう。」とおっしゃったのが、印象に残りました。
また、「精神科の医師の専門性は高く、それに対して、我々は十分な敬意を払わなければならない。
しかし、我々もまた、それと同等の敬意を求めたい。」ともおっしゃっていました。

「医療心理師」と「臨床心理士」を別物として分けて考えるその考え方、いいかげん何とかならないものなのですかね?いや、確かに別物なのですが、将来的には「医療心理師と臨床心理士の2つの資格を持った人」も出てくる可能性はあるわけじゃないですか。…そういう問題ではない?
ちなみに「それと同等の敬意を求めたい」というのはどうでしょ?私個人としては医師の専門性に敬意を払っているつもりですが、果たして心理職の全てがそれと同等の敬意を払われるに値するとは思えないのですよね。少なくとも現状では。そのためのカリキュラムの整備なのでしょうが…医療に偏ったカリキュラムになった時に、果たして「敬意を払われるに値する専門性」が得られるのかどうか。微妙なところだと思います。
もちろん国家資格化の目的は「敬意を払われること」だけではないとも思いますが。

また、産業医の先生から、「自殺者3万人という中で、医療につながっている人は約3割。産業医と仕事をしていて、臨床心理士と産業カウンセラーが、医療につなぐという役割を、よくやってくれていると感じている。医療の枠組みがもっと広がればよいのだが、医療というのはそう簡単に広がっていかない。医療の中での心理というだけでなく、医療の外での心理職が、医療につないでくれる、という点が、今後、重要ではないか。医療の外にも心理職がいることのメリットについて、海外の先生方にもうかがいたい。」とのこと。
ここでも、Pritz博士が、「医師は疾病をみる。心理職は情緒に対してアプローチする。近いところで聴いてもらっていると思ってもらえる。病気でなくても、情緒に障害を感じれば、専門家にかかってよいんだと思ってもらえることが、メリット。」
またKinderman博士(リバプール大学教授)は、「イギリスでは、心理職を国家資格化して、自殺率が下がった」
とのこと。
精神神経学会の先生から、「心理職が医療以外にいた場合、医療が必要な人に会ってしまうことがありうる。そういう場合、諸外国ではどうなっているのか?」との質問。
「これは私たちの国でも、もめた。身体的な疾病が考えられる場合には、医師に紹介しなければならないという条文を付けた。しかし、医師の指導・監督を受けなければならないという条項はない。また、こちらも医師に紹介する義務があるのだから、医師もまた、情緒的なケアが必要な人は、心理士に紹介しなければならない、という義務を定めるよう条文を入れさせた。お互いに相手の領分を侵してはならない。」
また、
「アメリカで、心理職にも、薬の処方権を与えようという話が出て、製薬会社は乗り気だったが、私は、心理職はそのようなことを考えるべきではないと思う。」とのこと。

この回答に「精神神経学会の先生」は納得されたのでしょうかね?
「心理職が医療以外にいた場合、医療が必要な人に会ってしまうことがありうる。そういう場合」ってのは現状でもスクールカウンセラーなんかはよく遭遇する場面だと思います。そうした場合に適切な対処が出来てこそ、初めて「専門性」ってことを主張できるのだと思うのですよね。
…やはりこういう質問が出てしまう時点で、何か認識が間違っているというか…どんな状況を危惧しているのやら。それをはっきりさせた上で、そのような危惧する事態をできる限り避けられるような資格制度なり養成課程なりを整備していく必要があると思いますよ。

そして終盤、医療ソーシャルワーカー協会の方の発言が、特に印象に残り、感動しました。
「まるで自分たちの30年前を見ているよう。デジャブーを感じる。自分たちのときも、2つの資格を創ると国から言われた。社会福祉士と医療福祉士。医療の中と外は別物だから、2つの資格が必要だと国が言う。自分たちは同じことをやっているのに、どうして2つ?と思った。国家資格が何をもたらしてくれるのか。私たちの中にも、未だに、医療行為ということでいいから、国家資格を、というグループがある。彼らの求めているのは待遇改善。しかし、待遇は私たちの実力に伴ってついてくるもので、国家資格化したからといって、待遇は変わらない。
で、待遇改善でないとすると、国家資格がもたらすものは3つ。1つは、名称。2つは、業務内容。これはいい。しかし、3つ目。養成課程。たとえ一部でも医行為が含まれるとなると、それは、医学中心の養成課程になる。国家資格の科目は13科目とだいたい決まっているので、専門を削って、4割近くが医学系科目。自分たちは話し合った。そして、その話を断ったんです。(注:そのため当時、社会福祉士だけが成立。今でも、精神保健福祉士はいるが、精神科以外の医療ソーシャルワーカーは、無資格状態。)
自分たちのアイデンティティはソーシャルワーカーだ。医療のことをやるわけではないのに、医学中心の養成課程が残されてしまうのはどうか。自分たちは、どういうことをして患者さんの役に立ちたいのか。その後も何十年も戦ってきた。私たちが死んでから、もしかしたらそういう資格(=医療職でない福祉専門職の医療ソーシャルワーカー)ができるのかな、と思っていた。
病院は海だ。海で泳ぐには魚でないと、と国は言う。しかし、自分たちはイルカだ。姿は似ていても哺乳類なんだ。白衣を着ていて患者さんに会っていても、医療職ではないんだよ、と思い、そう言ってきた。しかし、今年の春に、突然、日本医師会が、社会福祉士という資格で医療の中に入ってもいい、診療報酬も算定する、と言い出した。長い間の矛盾はこれで解決はするが。突然のことで。」とのこと。
 
感動しました。待遇改善のための国家資格化、と考えていると、やはり後でいろいろ後悔しそうです。また、医療職以外のアイデンティティを求めるなら、このぐらいのつもりでならなければいけないのだな、と思いました。

私はこのブログでも何度か主張してきましたが、国家資格化されることで待遇が改善されるとは思っていません(なので、はっきり言って国家資格化自体はあまり強く望んでいなかったりします。そりゃ国家資格化されるならそれに超したことはないとは思いますが…)。
で、専門性に関しては心理学というベースを持ちつつ(これは大学院入試レベルでいいかと)、医療とそれ以外の領域を広く網羅した心理臨床学を修得するって感じでいいんじゃないですかね?(※10/11:文章若干改変しました)「修士課程修了」という条件はそこでうまく機能していくのではないかと。
…というわけで、このレポートを読んでもあんまり私の考えは変わらないです。
他に参加された方がいらっしゃったら感想いただきたいところです。あとこのエントリ自体に対するコメントもいただけたらと。
…結局カギを握るのは養成課程の問題だと思うんだけどなぁ…
参考エントリ:
ぼくのかんがえたりそうのりんしょうしんりしようせいかてい(06/03/03)
ぼくのかんがえたりそうのりんしょうしんりしようせいかてい その2(06/03/05)
ぼくのかんがえたりそうのりんしょうしんりしようせいかてい その3(06/03/06)
私の考える理想の臨床心理士養成課程Vol.1(06/03/20)
私の考える理想の臨床心理士養成課程Vol.2(06/08/03)
私の考える理想の臨床心理士養成課程Vol.3(06/08/16)

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