資格問題

奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載された「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」を読んでみた その1

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我々、臨床心理士資格保持者の職能団体として一般社団法人 日本臨床心理士会があります。その設立趣旨は…

協会が認定する「臨床心理士」資格取得者の相互の連携を密にし、「臨床心理士」の資質と技能の向上をはかり、もって国民の心の健康の保持向上に寄与することです。

だそうです。

そして、各都道府県ごとにも臨床心理会があります。

都道府県臨床心理士会一覧 l 一般社団法人 日本臨床心理士会

その中の一つ、奈良県臨床心理士会のウェブサイトにこんな文章が掲載されておりました。

お知らせ[緊急・国家資格化に向けて鳥取県から]|奈良県臨床心理士会

なかなか興味深い内容だったので、引用しながらコメントしていきたいと思います。ちなみに公開されている文章であるということは、引用等するのは問題ないということですよね。もし何か問題等ありましたらご指摘ください。

鳥取県臨床心理士会から、以下のメールが届きました。

臨床心理士の国家資格化にむけて、日本臨床心理士会の臨床心理士に対する背信行為はもはや疑うすべはありません。

臨床心理士の職能団体である日本臨床心理士会が暴走して臨床心理士を否定し、文部科学省を困惑させているのです。

このままでは国家資格になるならないを問わず、日本臨床心理士会の愚行によって、これまでの活躍により構築してきたはずの臨床心理士の信用は、失墜してしまうかもしれません。何が起こっているのか、知ってください。それでも、臨床心理士諸兄は沈黙のままに自滅を待つつもりですか?

いきなり過激な感じになってます。「日本臨床心理士会が暴走」して「臨床心理士を否定」し、「文部科学省を困惑」させている…どういうことでしょ?

鳥取県臨床心理士会は、2項目の照会(質問)を平成24年4月16日、日本臨床心理士会に対して行いました。これに対して、日本臨床心理士会は、デリケートな問題なので、説明会を開催したうえで、口頭で対話しながら伝えたいということでした。しかし、説明会をするにしても、仮称「心理師」案の推進はもう日本臨床心理士会としてどんどん進めているし、とても重要な問題なのでまずは文書での回答を求めました。そして、当会の質問への文書での回答は、未だいただいておりません。ただし、いろいろな場面での日本臨床心理士会の回答を当てはめると次のようになります。

ここ大事です。「いろいろな場面での日本臨床心理士会の回答を当てはめると次のようになります」ということはつまり「憶測」だということですね。ここはしっかりおさえておきましょう。

1. 日本臨床心理士会が推進することにした「心理師」案は、臨床心理士資格以上の水準の資質を国民に対して担保すると保証できるのでしょうか?

→今の段階では保証できないというご回答を口頭でいただきました。
(平成24年4月29日資格法制化問題担当者会議での菊池の質問への回答から)

これは当たり前と言えば当たり前でしょう。そもそもまだ現段階においては、細かい養成カリキュラム等は決まっていない状態ですし、例えば3団体要望書パンフレット(全国保健・医療・福祉心理職能協会 全心協サイトより※PDF注意)の「受験資格」のところを読む限りでは、現行の臨床心理士養成における指定大学院のようなシステムはないようですし(もちろん、指定大学院制度に対する批判も色々あるのは知ってますよ)、学部卒+実務経験数年でも受験資格が得られるという時点で「臨床心理士資格以上の水準の資質を国民に対して担保すると保証」はできないでしょうね。

それはいいんです。問題は質問2の方です。

2. 「心理師」案推進は、臨床心理士にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?臨床心理士の資格が使えなくなったり、資格としての価値を落とすなどのマイナスの影響はないのでしょうか?

→ご回答をいただいておりません。ただし、新潟県での説明会で、名称独占の仮称「心理師」資格が仮にできた時、心理師を持っていないと臨床心理士が名乗れなくなる可能性があるという見解が示されたことを、新潟県臨床心理士会から教えていただきました。

えーと…なんで名称独占の「心理師」(仮)資格ができたとして、「臨床心理士」を名乗れなくなるのでしょうか?その理由については全く書かれていないのですが…なぜそうなるのかご存じの方はいますか?

ひょっとして「しんりし」の音が同じだから?…まさかねw

仮に「心理師」資格ができると、臨床心理士は臨床心理士が使えなくなる可能性が高いこともわかってきました。

前の文では「可能性があるという見解が示された」がここでは「可能性が高い」に変わってますね。これは何なんでしょ?うまいことミスリードを誘おうとしてるんでしょうか?それにしてはちょっとあからさますぎません?

実は、心理師ができると、臨床心理士が使えなくなるということは、かなり前から日本臨床心理士会としてもわかっていたことです。そうであるのに、これまで日本臨床心理士会は、臨床心理士資格は上位(専門)資格として残ると主張していました。

えー、それはひどいですね(棒)。「わかっていた」なんて「心理師ができると、臨床心理士が使えなくなる」ということが既成事実であるかのように扱われていますが…あれ?「可能性がある」ってくらいの話だったんじゃないですか?

しかし、これは偽りであり、新潟県での説明会で、そのままでは臨床心理士が残らないことを初めて日本臨床心理士会も認めたのです。

だから…「認めた」んじゃなく「可能性がある」…。

臨床心理士も心理師案も、ともに汎用資格で、臨床心理士が上位(専門)資格として残る保証は全くないし、実際、文科省も心理師ができたら名称独占により臨床心理士が使えなくなるという見解であることは、日本臨床心理士会も当然把握しているはずです。

「上位(専門)資格として残る保証は全くない」というのはその通りです。「上位」とか「専門」の辺りに関しては。

ただし資格として残らない可能性は「ある」(「高い」ではないです)として、それがなぜなのか、どういう理由で使えなくなるのか、ここまで読んでもさっぱりわかりません。ひょっとしてその辺は、政治の機微に通じてないとわからない類のことなのでしょうか?私みたいな若造には理解不能なことなのでしょうか?

そしてここで突然「文科省」が出てきてますね。文科省が「心理師ができたら名称独占により臨床心理士が使えなくなる」という見解なのですね…いや「はず」ということはこれまた「憶測」ですよね。

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えー、こんなに長くなる予定はなかったのですが、ツッコミどころが満載なのでとりあえず今日はここまで。

ただ一つ言いたいのは、「鳥取県臨床心理士会事務局長・資格法制化問題担当者 菊池義人」名義で出されたこの文章の内容について。これは鳥取県臨床心理士会を構成する会員の皆さんの「総意」であるということでいいのでしょうか?それともあくまでも「菊池義人」氏の個人的な意見なのでしょうか?

その辺りについて、鳥取県の方のご意見をうかがいたいところですが…アクセス解析を見る限りではこのブログの読者で鳥取在住の方はあまりいないような気がするのですよね。

中の人の意見が聞いてみたいな…。

そんなわけで続きます。

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