こんなん見つけました。
心理学は役に立つか?(不登校・ひきこもり・ニートを考えるブログ)
ブログ主であるところの巨椋修氏というのは、こんな方なのだそうで。
巨椋修 - Wikipedia
巨椋 修(おぐら おさむ、1961年 - )は、日本の漫画家、作家、映画監督、総合格闘家。陽明門護身拳法の師範。兵庫県神戸市出身。
不登校・ひきこもり・ニート・ワーキングプアといった社会問題を取り上げることが多く、書籍『不登校の真実』を発表し、同タイトルの映画で自ら映画監督を務めた。また、2006年10月より、ニート問題を扱ったインターネットラジオ『オールニートニッポン』のパーソナリティを担当。2008年8月より不登校・ひきこもり・ニートについて取り上げるインターネット映像放送局『FHN放送局』を主宰している。
とのこと。とりあえず、心理学を専門に学んだ人ではありません。
心理学を専門に学んでいない人が心理学を批判してはいけないという理由はどこにもありません。心理学についてちゃんと知った上での批判であれば、それは正当な批判になり得ると思いますし、むしろ専門外の人からの批判というのは意外に専門家が気づかない内容を含んでいるかもしれないという点で貴重であるとも言えます。
しかし、よく知りもしないものに対して、あたかも知っているかのように(あるいは知っているつもりになって)批判するのはいかがなものかと思うです。
今回取りあげるエントリは、まさにその「よく知らないものに対する、あたかも知っているかのような(あるいは知っているつもりになっての)批判」なんじゃないかと思うです。
いちいちツッコミどころ満載なので、とりあえず引用しつつ細かくツッコミ入れていこうかと思いますよ。
問い:心理学は役に立ちますか?
答え:ほとんど役に立ちません。問い:心理学は科学ですか?
答え:ほとんど文学や占いのジャンルです。ちょこっとだけ科学。(笑)
心理学を学んだことがある人で、この文を読んで「ムッ」っとした人は、心理学をちゃんと学んでいない人です。
ちゃんと学んだ人は、もっともだとうなずくことでしょうね。
えーと…この方の知ってる「心理学」って何なんでしょうか?
とりあえず過去ログの
・心理学を知らない人のための心理学入門書(05/09/14)
・【皆さん】心理学を知らない人のための心理学入門書その2 【ありがとう】
辺りでご紹介している本を読んでいただければわかるかと思いますが、心理学って「臨床心理学」だけじゃないですし、様々な分野の心理学が様々な分野で応用され、様々に役に立っておりますですよ。あ、もちろん「臨床心理学」も役に立ってますけどね。
以下、ちょうど手元にあったこの本
マンガ心理学入門―現代心理学の全体像が見える (ブルーバックス) Nigel C. Benson 清水 佳苗 大前 泰彦 講談社 2001-03 |
を参考にしていきます。
とりあえず認知科学の一領域としての認知心理学の成果は、問題解決や複雑な思考の分野で応用されております。例えば、私が知っているような例だと「わかりやすいマニュアル作り」なんかに使われたり。
ユーザ・読み手の心をつかむマニュアルの書き方 海保 博之 共立出版 1987-08 |
健康心理学はストレス、近親死、結婚や離婚、自滅的行為(喫煙、アルコール中毒)、性行動等、様々な問題に対処するために使われておりますよ。
喫煙の心理学―最新の認知行動療法で無理なくやめられる (GAIA BOOKS) Kristina Ivings 福池 厚子 産調出版 2007-05 |
健康心理学に関連してスポーツ心理学がありますが、これは動機づけ、自負心、集団力学等の心理学の基礎的理論が使われてます。
スポーツメンタルトレーニング教本 日本スポーツ心理学会 大修館書店 2005-04 |
こんな感じで「心理学」は色んな領域で役に立っております。
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また引用していきましょうかね。
心理学の一分野であり、現在病院などで、使っている精神分析学などは、ハッキリと擬似科学と断じる科学者もたくさんいるくらいです。
精神分析批判なんて今に始まったことじゃないですけどね。1952年のアイゼンクから延々と続いておりますが、その辺に対する反論として治療効果に関する様々な研究が行われておりますよ。事例研究からメタ分析まで、多様なレベルで。
現実の話しとして、心理学者が人の心がわかるとすれば、凄いことになっているはずです。
心理学で理解できるのはあくまでも一部であり、人の心の全てがわかるわけじゃないですわな。
心理学を修めた人が政治経済を席巻するとか、もの凄い人気者になっている人がたくさん出てきてもおかしくないハズなんですね。
「心理学を学べば人の心が読める」みたいなことがあるのならそうかもしれませんが、そもそも心理学ってそういう学問ではないです。それを期待しているのならそもそもお門違いですし、そういう人は「心理学」について知らない人でしょう。
あ、でも「政治経済を席巻する」なんてことはありませんが、行動経済学って学問は心理学の一分野(あるいは一近接領域)と考えてもいいですわな。
行動経済学 - Wikipedia
上記リンク先にもあるように、2002年には行動経済学者であるダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞しておりますね。
ところが、実際、心理学を学ぶ人や心理学者は、人付き合いが下手で、人から「変わり者」とか、「困り者」と言われているような人が少なくなかったりします。(笑)
これ、学者レベルだったら「変人の宝庫」なのは心理学に限りませんわな。逆に学部レベルなら、他学部と同様、心理学に関連した職に就く人間はそもそも一握りなので、やっぱ普通の人が圧倒的に多いでしょう。
もともと心の不安定な人が、自分の心を知りたくて、心理学を勉強する人もいるんですけど、
いろいろな病気や症例をみているうちに、巻き込まれてさらに自分がどんどん悪くなっていくというパターンがとても多かったりしますね。
「とても多い」んですか?実際にそういうケースはどの程度ご存じなのでしょうか?あるいは、どの程度のデータを元に「とても多い」とおっしゃっているのでしょうか?興味深いところです。
もちろんそういうケースがないとはいいませんし、私自身もそういう人はそれなりに知ってますが、それをもって「とても多い」とは言えないですね。もし自分の知っているケースのみを根拠に一般化してしまったら、それは過度の一般化ということになる可能性があります。
これじゃあ、心理学を学ばなかった方が良かったなんてことになりかねない。
てか、自分の問題の解決のために心理学を学ぶなんてのがそもそも間違いですし、それは心理学に対する誤解・偏見でしかありません。学部生の中にはそういう目的で心理学科に入ってくる人もいるかもしれませんが、それなりにちゃんとした大学であれば、入学1年目くらいにはそんな幻想は打ち砕かれるはずです。
逆に、学部を卒業して大学院修了までそうした幻想を持ってしまうような場合は、大学における教育が悪いか、あるいはその個人の問題が相当根深いかのどちらかでしょう。
また、現実として精神医学を急速に発達させたのは薬学ですし、人の心を解明しつつあるのは心理学ではなく脳科学であったりします。
精神療法・心理療法と比較した場合、薬物療法の治療効果は非常に高いということは否定しませんが、精神医学の発展は精神薬理学だけではなく、精神病理学や診断学など様々な領域を含むものなんじゃないですかね…ってか、それは「心理学」批判とはまた別の問題ですわな。
そして出ました、「脳科学」。最近、すげえこの言葉が気になるんですが。
いわゆる「脳科学」的なことを知ってる人ってのは、「脳科学」という言葉は使わず「神経科学」と言いますわな(そういう意味であのモジャモジャの功罪ってのはそれぞれ大きいです)。そして、神経科学というのは幅広い学問領域であり、確実に「心理学」とかぶっている…というか心理学の一分野と捉えることも可能ですよね。
心理学は、「実験」をすることで心を知ろうとしましたが、その実態はせいぜい白ネズミの実験から出てはいなかったりします。
その「白ネズミの実験」からスキナーは行動主義心理学を確立し、現在では応用行動分析ってのはそれこそ様々な分野で役にたってます。
自閉症児のための明るい療育相談室ー親と教師のための楽しいABA講座 奥田健次 学苑社 2009-05-20 |
応用行動分析で特別支援教育が変わる―子どもへの指導方略を見つける方程式 (シリーズ教室で行う特別支援教育) 山本 淳一 池田 聡子 図書文化社 2005-11 |
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こんなもんでどうでしょ?これでもまだ「心理学は役に立たない」「ほとんど文学や占いのジャンル」ですかね?
長くなりそうですし、まだツッコミ終わってないので続きます。
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