スクールカウンセラー 臨床心理学 資格問題

改めて考えてみる。スクールカウンセラーの時給は適正?

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SC推移

※上記図表はあくまでも「イメージ」であり、当エントリで主張している内容とは直接関係はありません…多分。

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当ブログを読んでらっしゃる専門家の皆様方の中には、スクールカウンセラー(以下SC)として学校臨床の領域で働いておられる方が数多くいらっしゃると思います。過去に一度でもSCをしたことがあるという方も含めれば、さらにその数は増えることでしょう。

これから書くことは、そうした方々、特にこれから学校臨床の領域で働きたいと思ってらっしゃる方を、ある意味では「敵に回す」ような内容になってしまうかもしれません。

ただ、個人的にはそういう方のご意見こそうかがいと思っておりますので、まずはお読みいただけると幸いでございます。

さて、タイトルにもありますが、改めて皆様にご質問させていただきます。

現在のSCの時給は適正だとお思いですか?

時給5000円代…って結構良くない?

さて、まずはこちらのページを見てみましょうか。

各都道府県等のスクールカウンセラー報酬心理学入門/臨床心理士指定大学院 入試対策

各都道府県のSCの報酬ですが、平均すると5000円代前半〜半ばというところでしょうか?(ちゃんと計算してないので、あくまでも大体で)。

例えば大学生が普通にするアルバイトなんかと比較すると(職種にもよるでしょうけれども)、結構な時給という感じはするかもしれません。ただし、もし未婚者がSC専業でやっていたとしたら、保険・年金・税金等はすべてSCの給与のみから捻出せねばなりません。非常勤任用ですので、昇給・賞与もありません。

さらに「週5日」勤務というのはなかなか難しいことを考えると、実質的な月収はかなり低くなるでしょう。

参考までにWikipediaの「スクールカウンセラー」の項目より引用。読みやすいよう改行等加えてあります。

スクールカウンセラーの平均時間給は、全国的に約5000円前後の水準とされ、一見すると数字上は要求される高度な専門性と比例し高給であるように見えるが、文部科学省の任用規程に掲げられている「週8~12時間」の勤務形態のうち、いまだ活用体制の整備が遅れている自治体があるため、実際の平均的な勤務形態は「週4~8時間」に留まっている現状がある。

したがって、平均月給換算すれば「8万円~16万円」程度でしかなく、さらに「非常勤任用」のために、保険料・年金などの福利厚生、出張費などの諸経費、病気休暇・傷病手当金などの社会保障も認められないことが多い。その上、春休み、夏休み、冬休みなど、教育機関の長期休暇中は実勤務不可能として報酬が支払われないことが多く、賞与なども無いため、通算の実勤務は「年間35週」前後と見積もられている。すなわち、スクールカウンセラーの平均年収は、額面で「140万円(最低70万円~最高210万円)」という現状で、臨床心理学系修士号や医師免許の取得が必須要件とされるレベルの職務への任用にもかかわらず、収入はいわゆるワーキングプア水準であり、1ヶ所の教育機関に勤務しただけでは安定した生活を送ることが困難であるため、複数の教育機関を掛け持ちしていたり、別の医療機関・研究機関にも所属していたり、あるいはクリニック・相談室の私設開業と並行しながら、スクールカウンセラーとして活動している専門家が多い。

という感じです。

かなり厳しいわけなんですが、そんなSCをつかまえた上で「時給は適正?」とはどんな了見だ?と思われる方もいるかもですね。

…でもですね、もう一度考えてみましょうよ。

新人もベテランも一律

上で取り上げた「各都道府県等のスクールカウンセラー報酬」をご覧いただければわかるように「スクールカウンセラー」という大まかな区切りがあるのみで(「準ずる者」というのもありますが、それについては後述)、経験年数等による時給の違いはほとんどないようです。

掲載されている中では唯一島根県のみ、SCとしての勤務経験に基づいて4000円〜5000円までの幅があります。この辺については地域の懐事情に加えて、なかなかベテランが集まりづらいという面があったりするのではないかと推測できます。

しかし、このように新人もベテランも一律という給与形態・雇用形態に対して、SCの皆さんは疑問をもたれないのでしょうか?特に何十年もやってらっしゃるベテランの方は、ご自分の給与と修士課程を修了してたかだか2〜3年の新人が同じ給与であることに対して、不満を抱いたりしないのでしょうか?

以前、このブログでも触れたかもしれませんが、現在のSCの時給というのはある程度のベテラン、それこそ大学教員などを想定して設定されていた金額だったと思います。ソースは…失念したのですが、SCに本来求められる専門性を考えると、間違っても臨床経験数年の人間に務まるものではないはずなのですよね。

その時点で既にこの時給は若手にとっては「適正ではない(=不当に高い)」と考えられるわけなのですが…いかがでしょうか?

「スクールカウンセラー」と「準ずる者」の違いって?

さらにこちら、最近(8月8日)アップされてたので取り上げてみます。栃木県のH26年度スクールカウンセラー募集の資格要件及び選考方法等についての書類です。

平成26年度スクールカウンセラー募集のお知らせについて  資格要件及び選考方法等(※PDF注意)(栃木県公式ホームページ

1 資格要件
○「スクールカウンセラー」として選考できる者
次の各号のいずれかに該当する者
(1) 財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
(2) 精神科医
(3) 児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に
規定する大学の学長、副学長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)の職にあ
る者

○「スクールカウンセラーに準ずる者」として選考できる者
次の各号のいずれかに該当する者
(1) 大学院修士課程を修了した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務につ
いて、1年以上の経験を有する者
(2) 大学(短大を含む)を卒業した者で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務に
ついて、5年以上の経験を有する者
(3) 医師で、心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験を
有する者

はい。出ました。「準ずるもの」…って何?

簡単に言えばSCになれるのは、臨床心理士資格保持者か精神科医、または大学教員であり、それ以外の人はどれだけ高い専門性を持っていたとしても「準ずる者」にしかなれないわけです。

学校心理士あるいは臨床発達心理士の資格を持っていたとしても、臨床心理士資格を持っていない場合は大学教員でない限りSCにはなれません。経験年数がどれだけあったとしても。

同じく栃木県のSC募集の書類にはこう書かれております。

3 報酬
スクールカウンセラー 1時間当たり 5,000円
スクールカウンセラーに準ずる者 1時間当たり 3,500円

1500円の差がありますね。

「臨床心理士である」というだけで、この1500円分の専門性の差が生じるってあり得るのでしょうか?

私には、この差は単純に「臨床心理士派とそれ以外の政治力の差」によって生じているとしか思えません。ある意味では「先達の努力の賜物」なのでしょうけれども、SCの皆様はどうお考えでしょうか?

「文句があるなら臨床心理士を取得すればいいだけだろ」って意見もあるかもしれませんが、それはそれで横暴すぎやしませんか?

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ということで、久々にSCについて考えてみました。

過去ログの「スクールカウンセラー」カテゴリ、特に

スクール・カウンセラー制度-その構造的問題-(1)(05/02/03)
スクール・カウンセラー制度-その構造的問題-(2)(05/02/04)
スクール・カウンセラー制度-その構造的問題-(3)(05/02/05)
スクール・カウンセラー制度-その構造的問題-(4)(05/02/16)

辺り(8年前!)で述べている内容と重複する部分も多いかとは思いますが、心理職の国家資格創設が現実味を帯びてきている今こそ考えねばならない内容だと思うのですよね。

特に「他の資格と比較して臨床心理士の専門性はそれほど(少なくとも時給1500円分の差が出るほど)秀でているのか?」という観点については。

臨床心理士にとっての既得権益である現在の時給を守ることよりも、例えばSCの常勤化なんかを進めることによって、より適正な給与水準にするという方向がより良いと私には思われるのですが…大きな変革には少なからず「痛み」も伴わざるを得ないでしょうし。

是非とも皆様のお考えをお聞かせください。

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