臨床心理学

教師が臨床心理士資格を取得するということ

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知り合いに何人か現職の教員(大学教員にあらず。小・中・高校の先生のこと)で臨床心理士資格を持っている方がいます。多くは内地留学(現職教員(公務員)が給料をもらいながら大学院に通うシステム)を利用して大学院で修士論文を書き上げ、その後臨床心理士資格を取得された方々です。
で、学校心理学に関する知識は素人に毛が生えた程度でしかない私は、基本的に教師が心理士資格をとったところであんまり意味がないのではないかと思っています。教師が臨床心理士資格を持っていたからといって、教師である限りはSCはできないし(もし教師という役割とスクールカウンセラーという役割が同時に成立するという人間がいたとしたら、その人は臨床心理学の専門家として失格だと思います)、お題目のような「カウンセリングマインド」という言葉にそれほど大きな意味があるようにも思えません(てかそういうことを言っている人を見る度にどんどんうさんくささが強まるばかりです)。
そんな批判的視点から、知り合いの心理士資格持ちの教師にこんな質問をぶつけてみました。
「なんで臨床心理士の資格をとろうと思ったのですか?」と。
そこで返ってきた回答が…



「生徒を病院に連れて行くよう親を説得しやすくなるから…と校長から言われて」
とのことでした。
その方の名誉のために言わせてもらえば、その方自身はちゃんと勉強したいという気持ちを持っている方で、修論も本当は別にやりたい内容があったとのことですが、「教師」で「内地留学」という縛りがあったため、本当にやりたい内容の論文はできなかったとのことです(ってのも大変おかしな話ではありますが)。私が言うところのSCの構造的問題についても理解してくれていますし(初心者がSCをやっちゃいけないとか)、上記の発言は多分に自嘲を含んだものであったというのは私の気のせいではないと思います。
「生徒を病院に連れて行くよう親を説得しやすくなる」ということを限りなく好意的に曲解してみれば、「連携をよりスムーズに行うため」という解釈もできないわけでもないですが…恐らくはそういうことではなく単純にやっかい払いをしやすくなるということなのではないでしょうか。で、そのために教師に臨床心理士資格を取得される…と。
なんつーか大変効率の悪い話だと思いますよ。でも可能な限り学校内部で問題を処理したいってことなのかもしれません。
………………
心理学というか研究のために必要な論理的・科学的な思考を身につけることは教師にとってプラスになるとは思います。それによって問題解決場面で安易な精神論に走ることもなくなるでしょうし、単純な因果論(「親の育て方が悪い」とか「他の教師が悪い」とか)で片づけるようなこともなくなるかもしれません。
でも、それだったら別に資格は必要ないんじゃないですか?
………………
ま、そんなこんなで資格認定協会も底抜けのバカではありませんから、現職の教員が心理士資格を取得することには慎重な姿勢をとっているようでして、そういう方が「面接で落とされた」というケースもいくつか存じております。実際個人面接を担当することは難しいでしょうし、SVを受けるといってもなかなか定期的な機会を作るのは大変なことでしょう。
それでも実際に資格を「とってしまった」ケースをやはりたくさん存じております。そういう人達のその後というのは、実際のところどうなんでしょうね?
………………
教師が臨床心理士資格を取得する(それなりに妥当な)理由が未だつかめません。詳しい方がいらっしゃったら是非とも教えてください。「心理学を学ぶ・心理学的研究をする理由」ではなく、あくまでも「資格を取得する理由」です。
私はtakashiさんお薦めのこの本でちょっくら勉強でもしてみますかね。

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