食育

栄養的に極端な偏りがなければ偏食してても問題ない

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06/08/25のエントリ、娘の偏食その2のコメント欄であままさんからこんなコメントいただきました。

「栄養的に極端な偏りがなければ特に問題はない」
このコメントとーっても気になるんですけど。極端ってのがロテ職人さんにとってどの程度かは分かりませんが、偏食してたら結構栄養的に偏っちゃうでしょ。これから体を作っていく子供が偏食していて特に問題ないってどーゆーことでしょう?食にこだわってるのに栄養面は大してこだわらないの?返答求ム!

ほんとはこのネタ、上記リンク先の「実践女子大の二木先生の調査」へのツッコミの後に述べようと思っていたのですが…まあいいや。順番は逆になってしまいますが、先にやっちゃいましょう。

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まずはこちら↑の本から引用。

 偏食を困り事としてあげる保育者(母親)は4人に1人の割合で見られる。保育者は、子どもに何でも好き嫌いなく食べて欲しいと願うが、子どもは野菜をはじめ肉、魚などを嫌うことが少なくない。栄養学的観点からは、ある特定の食品を嫌っても、栄養価の類似した食品(同じ食品群)が食べられれば問題ない。

(第6章 幼児期の食生活 4. 幼児期の栄養・食生活上の問題と保育者としての対応 1. 幼児の食事上の問題と対応)

 ところで幼児は、偏食があるように見えてもしばらくするとそれが消え、次には違った食べものを嫌がるというようにこの時期の偏食は固定化しない特徴がある。したがって、ある特定の食品を嫌っても偏食と決めつけないことが大切である。

(同)
さらにこちら↓の本から引用。
日比逸郎 1993 小児栄養の生物学と社会学 形成社(Amazon.co.jpでは品切れ)

 特定の食べ物を嫌って食べないのを偏食というのなら、偏食のない子どもはいないといえる。しかしその程度が強くても、たとえば野菜は一切ダメ、肉も魚もダメ、焼飯の中に入っているひき肉まで一粒一粒ほじくりだして残してしまうといった具合になると、お母さんが心配するのも当然である。そこでなんとか偏食を直そうとして、涙ぐましい母性愛の物語が展開することになるのだが、いつもハッピーエンドを迎えるとは限らず、子どもの抵抗に手をやいて疲れはてて、小児科医のところに助けを求めにくるという結果を迎えることも少なくない。

(第10章 子どもの食生活の心理的側面 4. 偏食)

もちろん、好き嫌いがなくて、なんでもよく食べてくれる場合のほうが栄養のバランスがよくとれて、安心できることは確かであるが、偏食の強い場合でも、栄養のバランスは案外よく保たれていて、偏食のために子どもの健康や発育がそこなわれているということはめったに見かけない。野菜が一切ダメとなれば、ビタミンCやカロチン、食物繊維の不足がおこりやすくなるが、野菜の代わりに果物を喜んで食べてくれるのであれば、これで十分野菜の代わりになる。魚は一切ダメでも、卵や肉はよく食べるというのなら問題は何もない。魚も肉もハムもソーセージもダメということでも、牛乳やチーズ、卵が食べられればそれでよい。このように偏食がかなり激しくても、これが食欲不振と結びつかないかぎり、つまり他のものならよく食べるということであれば、バランスが乱れるということはまずないのである。

(同)
別に「本に書いてあることが全て正しい」という気はないのですが、とりあえず最近の専門家の見解として、この辺は一致しているようです。
で、栄養的な問題よりも私が危惧するのは養育者のメンタルヘルスの問題だったりします。
引用した2つの文献にあるように、多くの母親が子どもの偏食を気にしています。で、ごくごく当たり前に存在する「偏食」に対する不安・心配が、育児ストレスの増加に繋がる可能性があるではないかと、私は危惧しているのですよね。
そう考えると「栄養的によほど極端な偏りがない限りは問題ない」と養育者に伝えることは、育児ストレスの軽減に繋がるかもしれませんし、逆に「偏食はわがままを助長し、意欲や好奇心をなくす」というメッセージを送ることは養育者の不安・焦燥をかき立てる可能性があるわけです。
だからこそ、そういうことを言ってしまう人にはその根拠を明確にして欲しいし(もし妥当な根拠があって言っているのであれば、私も考えを変えるかもしれません…そんな根拠はないけどね)、もしその根拠がデタラメなものだったとしたら、それに対してはキツいツッコミを入れようと思っている次第であります。
もちろん「うちの子はこれしか食べないから楽でいいよね~」とかアフォなことを言いながら、特定の食品しか与えない養育者がいるとしたら言語同断です。引用した部分にもあるように、幼児期の偏食は固定化しない傾向がありますし、その後の食生活のバラエティへの可能性を広げるという意味では、色々工夫しながら様々な食品を与えていく必要があると思います(もちろん、それが過度の負担にならないように…という点も留意しなければならないかと)。
こんな感じでいかがでしょうか?>あままさん
さて、そろそろ問題の「実践女子大の二木先生の調査」に言及したいところですが…今週中にできるかどうか微妙なところ。なんで、応援おながいします。
・・・・・・・・・・・・
全然関係ない…わけでもない話。
上で取り上げた本の著者である上田玲子氏。こちらの本も執筆していたのですね。

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この辺、実は全部我が家にあります。なかなかいいレシピが満載。てか、『大全科』1冊だけでほぼまかなえちゃうくらいすごい本だったり。

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