臨床心理学

母乳神話とか母乳信仰とか-そして粉ミルクで育つと『素行』が悪くなりやすいらしいよw

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しばしばネタ的話題を提供しがちな発言小町でこんなトピックを見つけました。
必死におっぱい外来通っています

生後四ヶ月の母です。

うちの子は産まれてきてからずっとおっぱいを嫌がります。産前は母乳で育てるのが当たり前のように思っていましたが今ではおっぱいを目の前に出すだけで大泣きします。これでも一ヶ月以上産院に通い、出産した産院では手に負えなくて見放され、諦め切れなくて現在は二軒目の産院です。こんどこそはと毎日必死に授乳の練習や母乳がしっかり出るようにと生活習慣も改善しました。しかし、なかなか飲んでくれなくて、、、今日ついに見放されました。

どうしても完全母乳にしたいと必死です。なにかよい方法があったらどなたか教えてください。毎日号泣されて辛いですが頑張っていましたが今日はさすがに参ってしまい、お昼からずっと涙が止まりません。。。

個人的にはなんかこういうの見ると「うわうわうわ~」ってなっちゃいます。トピ主からのコメントは全くありませんが、レスは読んでるんでしょうか。まあ読んでいただければわかると思いますよ。
そりゃあ、母乳のみで育てられるのであれば、それに超したことはないと思いますよ。何より経済的だし。発達心理学的にも、粉ミルクと比較してなんかいいことあるっぽいような気もします。相対的には。
んでも、個人差ってのは厳然としてあるわけじゃないですか。母乳の出方はほんと千差万別で、出ないことに悩む人もいれば出過ぎることで困る人もいたり。そして赤さんの方も色々で、「おま、どんだけ飲むの?」みたいな赤さんもいれば、結構少量で済む子もいたりして。
さらに社会的要因も色々で、お母さんが働きたかったり働かざるを得ない場合、どこかに預けなきゃいけなかったりするとなると、搾乳して保存できりゃあいいんですがそこまで出ない人もいるわけですし、そういう場合はやっぱり粉ミルクの方が楽であり。
完全母乳にこだわることで件のトピ主のように苦しむことになったりするケースもあったりするのですよ。そこまでしなきゃいけなくなってくると、単純に完全母乳であることの利点が完全母乳にこだわることによってスポイルされてしまうんじゃねーかと思うのです。あんな精神状態で育児をするくらいなら、粉ミルクに切り替えて気楽にやった方がいいと思うですよ。
って考えると、完全母乳にこだわらざるを得ないような状況を作ってしまう人たちってのは、「母乳神話」にこだわってるというか「母乳信仰」に染まりきってしまってる人たちであり、そういうのが他の母親の育児に悪影響を及ぼす可能性があるってことに目を向ける必要があると思いますです。
…ってところでふと思い出したんですが、わりと最近出た『現代のエスプリ』はこんなんでした。

子育てを支える心理教育とは何か 現代のエスプリ493号 (現代のエスプリ no. 493 サイコエデュケーションシリーズ) 子育てを支える心理教育とは何か 現代のエスプリ493号 (現代のエスプリ no. 493 サイコエデュケーションシリーズ)
松本 真理子

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この話題にもちょこっと関連するかもね…。目次は至文堂のサイトでどぞー。
子育てを支える心理教育とは何か 現代のエスプリ493号
・・・・・・・・・・
で、ここまでが前振り。予想していた以上に長くなってしまいました。ここからが本題です。
ワタクシ以前から拝見させていただいておりましたが、愛知県在住のある臨床心理士さんが書かれているこんなブログがあります。
豆柴日和
そちらの本日のエントリ
「知らないほうが良かった」
でこんなことが書かれておりました(以下引用。読みにくいので改行は変更させていただいております)。
一応魚拓もとっておこう。
(cache) 豆柴日和:「知らないほうが良かった」 - livedoor Blog(ブログ)

自分「戦後にアメリカで粉ミルクが推奨された時代があってその頃に赤ん坊だった子ども達が青年期を迎えた時に、すごく治安の悪化したんだって。そこで慌ててアメリカ政府が粉ミルクから母乳を推奨したらそれ以降の世代では比較的治安も良くなったらしいよ」

おかん 「・・結局、粉ミルクで育つのと母乳で育つのとどう違うの?」

自分 「まあ、端的に言えば、『素行』が悪くなりやすいってことだね」

母乳で育つのと比較して粉ミルクで育つと『素行』が悪くなりやすいのだそうです。
へー。


つか、引用文にある「戦後にアメリカで~」って話のソースは何なのでしょうね?なんか母乳神話とか信じてて、やたらと完全母乳を推進しようとするような人たちが、その理由としていかにも使いそうな話って感じなんですが…。
ちょこっとネットで調べた限りではそのソースは見つからなかったんですが、うちの妻にこの話を振ってみたところ知ってましたよ。昔、大学時代の講義で聴いたそうな(妻は福祉系学部卒です)。その時は「だから完全母乳で!」的な文脈ではなかったそうなんですが、とりあえず話していたのはおじいちゃんな小児科医の先生だったそうな。
んでもさあ、ちょっと考えればなんかおかしい話だって思いませんか?
戦後にアメリカで粉ミルクが推奨された時代があって、その頃に赤ん坊だった子ども達が青年期を迎えた時にすごく治安が悪化した。そして政府が母乳を推奨したらそれ以降の世代では比較的治安が良くなった…というのが事実だったとしましょう。
とりあえずこの事象だけでは「粉ミルクで育つと素行が悪くなりやすい」という因果関係は証明され得ないのではないでしょうか。
つかものすごく単純に考えて、粉ミルクor母乳のいずれを推奨するかどうかって要因よりも10数年後の治安に対して、より強い影響を与えそうな要因って色々考えられません?それこそ、物価とか景気動向とか失業率とか社会情勢の変化の方がよほど影響強そうな気がするわけですが。…それとも粉ミルクor母乳って問題は10数年後の失業率にも影響を与えるくらいの要因と言えるのでしょうか?
そういう諸々の要因というか変数が全く変化しない状況であれば、純粋に粉ミルクを推奨するか母乳を推奨するかということが治安に与える影響ってのは評価できるでしょうけれども、そんな状況が現実にあるはずもなく。
むしろこの話は逆に考えた方が論理的には納得しやすいんじゃないでしょうか。不景気になって治安も悪化したので、政府ができるだけ支出を抑制するために母乳を奨励するようになった…みたいな?
まあそもそもソースがわからん話ですし、細かい点についてはどうこう言えないのですが、とりあえずこの話ご存じの方がいらっしゃったらコメントいただけたらと思います(当該ブログ主からのコメントも大歓迎でございますよ)。
・・・・・・・・・・
ついでに前から気になっていたことを書いちゃおう。
上記リンク先のブログ、左サイドバーのところに【海外講演実績】とか【国内講演実績】ってのがありますが…

【海外講演実績】
「Services as a tyro Psychologist in Psychosomatic Medicine」 19th world congress on Psychosomatic Medicine, Quebec City (Quebec) Canada August 26-31, 2007

【国内講演実績】
「医療サービスにおける“環境と接遇”に関する調査」-治療者の意図と患者さんの受け取り方の異同の観点から-(第49回日本心身医学会)平成20年6月北海道開催

「前人的医療の観点による心理面接担当ケースの多面的調査」(第49回日本心身医学会)平成20年6月北海道開催

違ってたらごめんなさいなんですが、これ単なる学会発表じゃないんですか?学会発表=講演実績なのかなあ?個人的にすげえ違和感あるんですけれども。
そして「前人的医療」って何すか?「全人的医療」なら知ってるんですが…。
ちなみに「前人的医療」でググってみると…
前人的医療 に一致する日本語のページ 5 件中 1 - 5 件目 (0.29 秒)
ってことで件のブログが検索結果のトップに躍り出るわけなのですが…ひょっとして新手のSEO(Search Engine Optimization;検索エンジン最適化)?
ブログ上の細かい誤字・脱字は私もありますのであんまり言いたかないんですが、とりあえず自分の業績を書き間違えるのは恥ずかしいから止めません?
…ってもし「前人的医療」って言葉があるのなら、その意味を教えてください偉い人!
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なんだか長々しくなってしまったのでまとめ。
最初の発言小町の例のような母親がいるかもしれないってことが想像できるのであれば、冗談やネタでも「粉ミルクで素行が云々」なんて書けないと思うのですがね。しかも臨床心理士であることを明かして、そして自分の居住地や業績を明かして…ってことはつまり容易に自分を特定できるような形で。
何考えてんのか正直わかりません。
ってことで、異論・反論・オブジェクション、何でも受け付け中でございます。

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