資格問題

日本臨床心理士資格認定協会の意見報告の提出が「悪手」だと思う3つの理由

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将棋盤

日本臨床心理士資格認定協会のサイト更新情報から

公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会のサイトは、今年の3月28日にリニューアルして以来、長らく更新されていなかったのですが、6月9日・10日と立て続けに更新されておりまして。

9日の更新は「議員立法で進められている公認心理師法案に関する情報を掲載します」とのことで、先頃、臨床心理士各位に送付された公認心理師の骨子案に対する懸念事項に関しての書面と、あとは5月20日の公明党厚生労働部会による公認心理師法案についての意見交換会での配布資料、6月5日の民主党文部科学部門・厚生労働部門合同会議におけるヒアリングでの配布資料です。

「臨床心理士」各位へのお知らせ(※PDF)
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会からの意見報告(5/20 公明党厚生労働部会意見交換会での配布資料)(※PDF)
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会からの意見報告(6/5 民主党文部科学部門・厚生労働部門合同会議におけるヒアリングでの配布資料)(※PDF)

5月20日の資料と6月5日の資料、目的はほぼ同じでありながら若干の改訂がなされているのが気になります。5月20日の結果を受けて改訂したのか、それとも時間があったため練り直したのか…どちらかはわかりませんが、一応、現時点での完成版は6月5日のバージョンということになるのでしょうかね。

あと、6月10日の更新はまさにその当日、6月10日づけで国会議員(全員?)に送付された要望書がアップされてます。

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会からの要望(※PDF)

基本的に私個人の意見は資格認定協会からの要望とそれほど変わりません。現在の流れの中で気になるのは二点だけです。

それは何度も書いておりますが、「医療以外の領域での医師の指示」問題と、あとは公認心理師が出来た後に「臨床心理士」という資格が残るかどうかです。

前者に関しては、現実的に運用して行く中で絶対に様々な問題(=国民にとっての不利益)が生じると考えられるからです。ただ、問題が生じないよう運用することが可能な法律ができるのであれば、それは是非そうしていただければと思う次第であり、そうなれば何も言う事はありません。

そして後者。臨床心理士が残るのであれば、公認心理師に学部卒ルートがあるのは別にいいです。そもそも臨床心理士だって指定大学院制度が出来る以前は、学部卒+実務経験で取得可能な時代もあったわけですし、学部卒の現任者が公認心理師資格を取得できなくなるのは困るはずです。

さらに当ブログでは何度も言っていますが、公認心理師+臨床心理士のダブル資格がスタンダードになるよう持って行けば何の問題もないし、むしろそうなるように動くのが政治的にはベターだと思います。そしてそれが理想だとすると、私から言わせてもらえば今回の資格認定協会の動きは「悪手」だと思います。

なぜこれが「悪手」なのか理由を挙げ、そしてもし私が資格認定協会の担当者だったらどうしたか、ちょこっと考えてみたいと思います。

「悪手」である理由その1 内部分裂ととられる可能性

以下、基本的には最新版である6月5日版の「意見報告」に沿って話を進めます。

「意見報告」の「1 本法案に関する臨床心理士当事者四団体の議論の現況」「2 臨床心理士に直接関係する当事者四団体の議論を踏まえた要望」に書かれている内容をまとめると要するに言いたいのは、「臨床心理士関係四団体、すなわち、一般社団法人日本心理臨床学会一般社団法人日本臨床心理士会日本臨床心理士養成大学院協議会公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の間では、未だ国家資格創設に関する意見の合意は得られていない」ということなのだと思います。

でもこの意見報告を受ける国会議員の皆様としては、「臨床心理士の側から国家資格創設を求めてきたんじゃないの?」と疑問に思われることでしょう。中には「内部分裂してるの?」と思われる方もいるかもしれません。

法案成立に向けて、出来る限り現実的な範囲内で国民にとって利益の多いものにしようとしなければならない中で、(それが事実ではないにせよ)内部分裂していると思われてしまうことは、利害関係のある他団体から攻撃される隙を作るだけなのではないかと思います。

「悪手」である理由その2 法制化に反対する妨害工作であるととられる可能性

理由その1とも関連しますが、法制化の動きがここまで現実的になっている中で「まだまだ議論が足りない」というのは、あたかも現在公開されているの公認心理師の法案成立には反対であるかのように見られる可能性があります。

もし「法案成立反対」であればそう書けばいいだけの話ですし、そうでないならば更なる議論を求めるというのは妨害工作であると誤解されてしまうかもしれません。

本気で国民にとって有益であり、そして我々臨床心理士の専門性(そんなものが本当にあるのならば)を生かしていく(殺さない)ことを考えるのならば、「臨床心理士が肝心な所で妨害工作をした」と見られるのはやはり他の団体から攻撃される隙を作るだけであり、議論や交渉を不利にするだけだと思います。

「悪手」である理由その3 自ら臨床心理士資格を消滅させてしまう可能性

意見報告には「公認心理師法案に、臨床心理士への特段の特別配慮」を求める記載があります。しかし、現実的に考えてそんなことが可能だと思いますか?

仮に臨床心理士が他の資格よりも優れている点があったとして、「だから法律で特別扱いしてくれ」という要求が通ると本気で考えているのでしょうか?

もしも他の資格と比較してその質が高いとするならば、法律の中で特別扱いをしてもらうことよりも、その質の高さを積極的に今以上に世間に対してアピールしていくことが、結果的には臨床心理士の資格の生き残りに繋がるのではないかと思います。

非現実的な要求をすることは、他の資格を擁する団体から反発を買うだけであり逆効果となるでしょう。世間的にも「いかに臨床心理士が現実を直視できていないか」と見られることになり、質の高さをアピールするどころではありません。

それは自らの首を締める行為であると言っていいのではないでしょうか。

打開策は「交渉のポイントを1点に絞る」こと

6月10日づけの要望書を見ると、そこには3点の要望が記載されています。

それは「医師の指示」に関する規定、学部卒者に関する規定、そして臨床心理士資格の位置づけ、この3点に関する要望です。

私は、これを1つめの「医師の指示」に関する規定のみに交渉のポイントを絞ることで、今後の展開が有利になるのではないかと思います。

そもそもこの要望書では「危惧の理由」として「秘密保持」に関わることしか書かれていません。しかし、基本的に我々同様、医師も守秘義務を負っている専門家であり、現状でも連携するためにはクライエントの情報交換は必須となっています。

医療機関以外でも医師の指示が必要となった場合、どんな不都合が起こるかについてもう少し考えられるのではないかと思うのです。だいたい、今でさえ忙しい医師の仕事が回せないくらいに増えてしまうような事態も起こりうるのではないでしょうか?

その辺りを慎重に、かつ現実的にシミュレーションした上で、淡々と問題点について挙げていくのが交渉のやり方としては賢いのではないでしょうか。

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いかがでしょうか?

私は政治や法律の専門家ではありませんので、色々と穴はあるかと思うのですが、私なりに現状をより良い方向へ導くために考えてみた次第です。

皆様のご意見等お寄せいただけますとうれしかったり。

あと、急いで書いたので乱文失礼しますでございます。誤字・脱字などにつきましてもご指摘いただけたらと。

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