先日のエントリ、臨大協の「公認心理師法案の国民と臨床心理士への影響について」に全く意味不明な部分がある件(14/06/27)と臨大協の「公認心理師法案の国民と臨床心理士への影響について」がいつの間にやら改訂されている件(14/06/30)で取り上げた、日本臨床心理士養成大学院協議会(以下、臨大協)の「公認心理師法案の国民と臨床心理士への影響について」という文章(改訂版)について、改めてその中身を見ていきたいと思い読んでたんです。
・公認心理師法案の国民と臨床心理士等への影響について(改訂版)(臨大協)
で、ふと思ったのです。
「公認心理師の「医師の指示」条項って実は色々抜け道があるのではないか?」と。
もちろん、専門家である政治家及び官僚の皆様は、当然色々考えて抜け道がないように法律を作るんでしょうけれども、細則等が明らかになっていない現状では抜け道っぽいものは色々あるような気がするのです。
ただ、私も激しく勉強不足ではありますので、その論自体に多々問題点があると思います。そうした点につきましてはご指摘いただけますとありがたく存じます。
とりあえず見やすい&引用しやすいので、法案については心理士まとめの「公認心理師法案」を読みやすく横書きA4のWORDファイル10枚にまとめましたものを使用させていただきます。
問題になるのは第四十二条(連携等)の2
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
ですね。
さてさて…
「主治の医師があるとき」ってどう定義されるの?
今の自分的に最大の問題はここです。
条文の「その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるとき」の「主治の医師があるとき」って、どういう意味なんでしょ?
「そんなの、単に並行して病院に通ってるってことだろ」と言われるかもしれません。
じゃあ、それってどういう基準で判断されるんでしょうか?
クライエントが「特に病院に通ってはいません」と言ってしまえば、実際には病院に通っていたとしても、医療機関外の心理職であればその申告の真偽を正確に確認する術はありません。
そうした場合、当然、主治の医師の指示なしで心理的支援が始まってしまうわけですが、それで当該心理職が罰せられたりするんでしょうか?
あるいは虚偽の申告をしたとして、そのクライエントが罰せられるのでしょうか?
それ以前に、そもそも罰則規定って設けられるんでしょうか?
うーん…よくわかりません。
病院を変える・セカンドオピニオンを求めればいいのでは?
患者が公認心理師の支援を求めているのに、「主治の医師」が指示を出さない…
…ならば、主治医あるいは病院を変えればいいのでは?
患者にはその権利があるはずです。
臨大協の「公認心理師法案の国民と臨床心理士等への影響について(改訂版)」の「1 国民への影響」の
④ 心理職は、被支援者の意思決定の過程を支援することができなくなる。WHOの「精神保健ケアに関する法:基本10原則」に則って患者の自己決定の過程の心理的支援を行うことも困難になる。
とありますが、このWHOの「精神保健ケアに関する法」というのはつまりそういうことを言っているのでは?
すぐに主治医を変えるのが困難ならば、セカンドオピニオンを求めるという手もあるはずです。
患者が通うの止めた瞬間に「主治の医師」ではなくなるの?
上記2つの項目と関連するのですが、患者が受診を止めた場合、その瞬間から主治医ではなくなるのでしょうか?
普通はそうですよね?
ならば、公認心理師が「病院通ってらっしゃる方の場合、主治医の指示がないと心理療法はできないんです」みたいなことを言った時、患者が「じゃあ、病院通うの止めます!」と言えば、心理的支援は出来ちゃうんでしょうか?
「そんな細かいことグダグダ言うなよ」「屁理屈言うな」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、法律ってのは「そんな細かいこと」にこだわらねばならないものなのではないでしょうか?そして全く「屁理屈」ではないと思います。やっぱり法律ってそういうものだと思うのです。
そういう意味では、少なくとも今の段階では公認心理師法案は結構な「ザル」のような気がします。
大事なのは主治医との協力と連携
まあ、結局なんだかんだ言いつつ、まともな心理職はこれまで同様、主治医がいる場合はその主治医と協力・連携していくことは必須なわけで、ただそこに「指示」という法律での縛りがつくってことだけのような気がします。
まともじゃない公認心理師は指示を受けることが出来ないでしょうし、そういう意味では「医師の指示」条項ってのはまともじゃない公認心理師をあぶり出すという役割を担うんじゃないでしょうか?…ってのは良く取りすぎでしょうか。
もちろん、緊急で心理的支援が必要になる場合もあると思いますが(でもそういう場合って大概、精神医学的な支援も必要になる気はするんですけどね。それこそ連携が必須)、そういうのはやっぱり細則的なところで現実的に対応していただくのがよろしいかと思います。