臨床心理学 資格問題

「臨床心理士が同業者を批判しちゃいけないの?」という話題から公認心理師法案関連のことを考えてみる

投稿日:

新・臨床心理士になるために 平成25年度版

読者の方のコメントから

14/04/17のエントリ、自身のうつ病経験をセールスポイントにするカウンセラーに、臨床心理士の資格を持ってらっしゃる松本真由美さんという方からコメントいただきました。

そのままコメント返信してもよかったのですが、色々と広がる議論かと思いとりあげさせていただきたいと思います。

いただいたコメントはこちら。

臨床心理士です。

公認臨床心理士法案の刻々とした動きや多くの分野の専門書をいつも紹介していただいて大変勉強になります。有難うございます。

ただ、臨床心理士の資格を取って、すぐ開業された方へのコメントやご自分の病気を告げて開業している方に対するコメントが手厳しい感じがいたします。臨床心理士がその方たちのことをどうのこうのいうのではなくて、最終的には相談者の方が選択される問題だと思いますし、もっとニュートラルな伝え方があるような気がいたします。

反対にこのような内容にはこのブログを書いてる臨床心理士の方たちの傲慢さを感じます。

私などよりも聡明な方たちで日々研鑽に努めていらっしゃる姿勢がブログからはうかがえますのでもったいない気がいたします。

これからも拝見させていただいて、勉強させていただきます。楽しみにしています。

投稿日時:
2014.07.6 @ 11:26 AM
投稿者:
松本真由美

コメントありがとうございます。

さて…

まず前提の整理から

「臨床心理士の資格を取って、すぐ開業された方へのコメントやご自分の病気を告げて開業している方に対するコメントが手厳しい感じがいたします」の「ご自分の病気を告げて開業している方に対するコメント」というのは上記リンク先の記事ですね。

そして「臨床心理士の資格を取って、すぐ開業された方へのコメント」というのは、こちらでしょうか。

臨床心理士資格取得して即開業ってすげえ(色んな意味で)(14/04/15)

で、それが「手厳しい」と。

ちなみに

反対にこのような内容にはこのブログを書いてる臨床心理士の方たちの傲慢さを感じます。

私などよりも聡明な方たちで日々研鑽に努めていらっしゃる姿勢がブログからはうかがえますのでもったいない気がいたします。

「臨床心理士の方たち」「聡明な方たち」とありますが、このブログは私(=ハンドルネーム・ロテ職人)が個人で運営しております。したがいまして、いただいたコメントは私個人に対するご意見として承ります。

ここまでが前提です。

「手厳しい」ですか?

松本さんは「手厳しい」とおっしゃいますが、私個人としてはむしろ「なまぬるい」くらいの感じで思っておりました。

うつ病経験をセールスポイントに〜」も「資格取得して即開業って〜」も、いずれも該当するサイトやブログへのリンクは張っておりません。

直接批判(というか攻撃?)したいのであればリンク張ってます。リンクを張ってない時点で「手厳しい」とは言えないんじゃないかと思います。繰り返しますが、あくまでも私個人の感覚として、です。

目的としては、直接批判するというよりも、むしろ問題提起のつもりで書いていました。「自身のうつ病経験をセールスポイントにしているカウンセラー」や「資格取得して即開業する臨床心理士」に対して自分はこう思うけれども、皆さんはどう思いますか?という感じで。

これは「手厳しい」んでしょうか?

相談者の自己責任ってことでいいの?

松本さんは

臨床心理士がその方たちのことをどうのこうのいうのではなくて、最終的には相談者の方が選択される問題だと思いますし、

とおっしゃっており、それは一理あるとは思います。

私から見たら「ろくでもない」と思えるような臨床心理士・カウンセラーに助けを求めて、それで被害を被る相談者がいたとしても、それは相談者の自己責任と言ってしまっていいかもしれません。松本さんがおっしゃっていることはそういうことですよね?

単に私から見たら「ろくでもない」だけで、実際には優れた臨床家なのかもしれないですし。

ただ、私はそういう方々と「同業者」だと思われるのは嫌なんです。

そして出来る事ならば、「ろくでもない」臨床心理士や自称・カウンセラーに援助を求めて被害を被る人が減ればいいなあとも思うのです。

公認心理師法案との関連

そして、話は突然飛ぶのですが、例の公認心理師法案との関連についてです。

公認心理師法案というか、心理職の国家資格創設というのは上で挙げたような「ろくでもない」心理職を少しでも減らすための方法なのだと思います。

その目的を「優れた」「質の高い」心理職を増やすことだと考えると、恐らく1000年経っても国家資格創設は不可能でしょう。

現行の臨床心理士制度も「ろくでもない」心理職を減らすことにある程度は成功したと思います。

しかし、それでも「資格取得してすぐに開業する臨床心理士」や「自身のうつ病経験をセールスポイントにする臨床心理士」は存在するのです。

繰り返しますが、そうした臨床心理士が本当に「ろくでもない」かどうか、実際のところはわかりません。ただ、その可能性は高いと思いますし、そう思う理由については当該記事に記載してありますのでそちらをご覧いただければと思います。

一部の臨床心理士は、自分たちがいかに優れているか、いかに社会貢献できているかを喧伝し「だから国家資格が出来た際にも臨床心理士資格保持者を優遇して欲しい」と言います。

社会貢献云々はともかく、少なくとも私は「臨床心理士」という資格が優れた臨床家を生み出すものだとは思えません。もちろん、優秀な人もいますが、私のように、あるいは上で挙げた「資格取得してすぐに開業する臨床心理士」や「自身のうつ病経験をセールスポイントにする臨床心理士」のように、優秀でない人も少なからず存在するのです。

国家資格創設問題をこじらせた原因の一つは一部の臨床心理士の傲慢さでは?

歴史のifを妄想しても仕方ないのですが、それでも、もし一部の臨床心理士が自分たちの能力に関する優位性を喧伝しなかったら、あるいはレベルの底上げのために同業者に対する適切な批判が出来ていたら、ここまで国家資格創設問題はこじれなかったのではないかと私は思います。

いくら「我々は優れている」と言ったところで、内部にそういう「ろくでもない」人達がいる時点で「ホント?」って思われてしまいますよ。そして実際、近接領域の方々からはそう思われている部分も少なからずあると思います。

同業者に対するある程度の批判ができていれば、もう少し臨床心理士全体のレベルは底上げされていたのではないかと私は考えます。

もちろん、その辺は複合的な問題で、単に批判出来ているか出来ていないかという話ではありません。

それでも批判した方が少しはマシなんじゃないかと思うのですよね。

批判しない方が傲慢では?

ここで最初の松本さんのコメントにもどります。

このような内容にはこのブログを書いてる臨床心理士の方たちの傲慢さを感じます。

この「傲慢さ」というのは、どんな意味なのでしょうか?

「『自分は優れているのだから、他者を批判してしかるべき』と思っているんじゃないか?」ということでしょうか?

私は自分が優れているとは微塵も思えないです。たくさんの優秀な同業者を知っているので。

ただ、あまりにもひどいと思う場合には、私にだって他者を「批判する自由」があってもいいんじゃないでしょうか?

逆に「臨床心理士だから優れている」「だから批判する必要はない」と考えている人間がいるとしたら、それこそ「傲慢」以外の何物でもないと思います。

また、他者の「批判する自由」を奪う行為というのも、それはそれで傲慢なんじゃないかと思います。

松本さんは

もっとニュートラルな伝え方があるような気がいたします。

とおっしゃっていますが、おっしゃるところの「ニュートラルな伝え方」と私が伝えたいところの「批判」を両立させるためにはどうすればいいんでしょうか?私の能力では全く思いつきません。

「お前が批判することではない!」というご意見

「それはお前が批判することではない!」というご意見をお持ちの方もいるでしょう。確かにそうです。本来私がすべきことではないでしょう。

でも、誰も批判しなかったから(あるいは批判されてもそれが届かなかったから)ろくでもない人たちはろくでもない人たちになってしまったし、これからもろくでもない人たちのままなんじゃないでしょうか。

そういう人を変えることは(少なくとも私には)出来ないと思いますので、直接リンクは張らないということもあります。

ただ、問題提起としての批判はあってもいいと私は思うんですけどね。皆さんはいかがお考えでしょうか?

長々と書いてしまいましたが、皆様のご意見いただけるとありがたいです。

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