心理・精神医学本

【タイトルが】稲垣 諭 著『大丈夫、死ぬには及ばない 今、大学生に何が起きているのか』【秀逸!】

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大丈夫、死ぬには及ばない

書店で発見して、まずはこのインパクトある表紙に釘づけになってしまいました。そして、それ以上にこのタイトルにかなり惹かれる感じでございますよ。

あと、帯を書いているのが最近(2016年1月現在)ネットで話題の精神科医の香山リカ氏であるという辺りもいろんな意味でインパクト大です。

香山リカ氏が絶賛!
「テツガクと大学とリアルと心理学がつながった! こんな本は初めてだ」
拒食嘔吐、自傷、強迫、SM、幻視、離人、倒錯、死への憧憬……。
「心身の事故」を生き、死の淵をのぞきこむ大学生の日常に伴走した気鋭の若手哲学者が提言する異例のケアの記録にして、意表を突く「癒しのテツガク」!

■内容詳細
「リスカ、やっぱり、やっちゃうのか?」
「やめたいけど、どうすればいいのか分からない。どうしても切りたくなる。」
「じゃあ今度、付き合いたい男を見つけるときには、切らせてくれる彼氏を探すように。」
自傷、SM、拒食嘔吐、幻視、離人、倒錯、強迫、死への憧憬……。
大学生は、大人たちが想像もできない日常を生き抜いている。
生きることは、苦しい。ひとは、不自由だ。でも気づいてほしい。きみの魂は、シブトイ。傷みうつろう日々にも、生きていることのかすかな、でも確かな感触がきみのなかにはあるはず──。
「心身の事故」を生きる大学生に伴走した、気鋭の若手哲学者による異例の「臨床哲学」の記録であり、「心の回復力(レジリエンス)」を育てる「事故と自己の現象学」からの提言!
カバー装画に浜崎あゆみのCDジャケットで知られる人気イラストレーター、宮島亜希氏の作品を使用!

出版社のサイトの紹介ページでは…

…紹介ページ、ないですね。“What's New”を見ると、昨年の7月の更新が最後です。せっかく良い本なのにもったいない。

株式会社 学芸みらい社 「学芸を未来に伝える出版社」

※17:00 訂正1
出版社のサイトは移転したそうで、上記リンク先は旧サイトとなります。

新サイトはこちら。

学芸みらい社(http://www.gakugeimirai.jp/)

紹介ページもしっかりあります。目次が見られますよ。

大丈夫、死ぬには及ばない  今、大学生に何が起きているのか
訂正1ここまで


Amazonさんの紹介文に書かれている通り、著者の稲垣氏の専門は「現象学・環境哲学・リハビリテーションの科学哲学」ということで哲学者なわけですが、この本が哲学書なのかというとさにあらず。

確かに随所に哲学や精神医学、精神病理学などの知見は出てきております。しかし、この本で圧倒的に鮮烈に生き生きと描き出されているのは、筆者の講義のリアペ(リアクションペーパー)を通して見る、様々なモノを抱えた若者たちの姿です。

著者に対してすげえなあと思うのは、それが学生相談の面接室や精神科の診察室での出会いではなく、大学の教室で講義の前後であったり、あるいは筆者の大学のオフィスでの出会いであるということです。

確かにこの手の人たちに、日常の臨床実践の中で普通にお会いすることはあります(とは言いつつ、誰一人として全く同じ体験をしている人はもちろんいないわけですが)。でも治療的な枠組みのないところで、治療者-クライエントという関係ではなく、教員-学生というより個と個に近い関係として出会うのは、ワタクシとしては正直「こわいなあ」と思ったりします。もし自分が著者の立場だったら、こういう関わり方はできるのだろうか?と考えてしまいます。

しかし、そうしたスタンスの関わりであるからこそ、我々の業界的な「事例研究」とは一線を画すような、若者の「生の姿」が描きだせるのだろうなあとも思います。

筆者は本書の序章でこのように述べています。

本書で僕は、大学および専門学校での講義で出会った学生の経験を手がかりに、彼らが現代社会をどのようにして生き抜いているかを、そして死ぬには及ばないと言えるほどの優れた策略をめぐらしながら生きている現実を、提示したいと考えている。

哲学の課題としてそれは、「人間の可能性を最大限に引き出し、死に抵抗する試み」「死ぬには及ばないほどの経験の寛容さの獲得」であり、どんなに苦しく辛い現実があっても、「大丈夫、死ぬには及ばない」と声をかけられるほどの信頼と安心の空間を形成すること、そして苦しんでいる他者のなかに、そこから一歩でも前へと足を踏み出すための手がかりを作り出すことである。

著者の稲垣氏はケアの専門家ではありませんが、本書の中で描かれた若者たちとの出会いを通して、かなりの部分でこの課題を達成されているのではないかと思ったり。

あ、ひとつ要望を挙げるとしたら、ホントは掲載されている学生さん達のリアペ、その本人の直筆原稿(っていうのか?)で読んでみたいなあ、と。実際のところ、この本のサイズだと解像度的に難しいのかもしれませんが、Kindle版とかあればそれも可能なんじゃないかと思ったり。生の文字で読むことにより、さらにリアルに追体験ができるような気がします。

この年代の方々のケアに関わる専門家はもちろんですが、今現在も様々な思いを抱えながら生きている同世代の学生さん達、そして過去にそうした学生さん達であった全ての方に読んでいただきたい本でございます。

本日、2016年1月15日現在、Amazonさんではこの本、「在庫切れ」「入荷時期は未定」なんですよね。ホントもったいない。

楽天さん紀伊国屋書店さんには在庫があるようですので、すぐに欲しいという方はそちらからポチっとどーぞ。

※17:05 訂正2
出版社の方からご連絡いただいたきました。

アマゾンは、本日までに追加搬入分が入荷の予定です。

とのこと。

おそらく在庫が補充されるでしょうから、注文されてもよろしいかと思います。気になる方は在庫状況をご確認の上、ポチっとどーぞ。

『大丈夫、死ぬには及ばない 今、大学生に何が起きているのか』 - Amazon.co.jp

訂正2ここまで

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