気づいたら結構前の話になっちゃってますが、3月12日・13日の二日間、千葉県市川市の和洋女子大学におきまして、日本集団精神療法学会の年次大会が開催されました。
最近「グループづいている」ワタクシもそちらに参加いたしまして、書籍販売でこちらの本を購入いたしました。
…
…っていきなり嘘つきました。ごめんなさい。
この本、自腹で買ってないです。もうこれもかなり前のお話になりますが、ご恵贈いただいた本です。
しかも「ロテ職人」名義でいただいたわけではなく、実名の私宛にいただいた本でございました。
精神療法には、一対一で行う個人療法のほかに、グループで行う集団精神療法がある。適切なグループで運営される集団療法は、個人療法に勝るとも劣らない効果を発揮すると言われる。本書は、そうした治療グループを立ち上げてゆく際に必要な事項や問題点を丁寧に解説し、グループセラピストの技法についても述べた極めて実践的なガイドラインである。グループづくりを始めようとしている人たちの指南書となるばかりではなく、理論学習のテキストや研究資料としても活用できる。
出版社の紹介ページでは目次が見られますよ。
・AGPA集団精神療法実践ガイドライン(創元社)
私が所属している集団精神療法の研究会が、この本の訳のチェック(というほどのこともなく、日本語としてこなれているかどうかの確認?)を担当したということがありまして。担当した箇所はホントに少しだけなんですが、それでお礼的な意味でこちらを贈っていただいたという経緯があったのでした。
あれくらいのことでご恵贈いただけるなんて、逆に申し訳ない気持ちもあったりいたしますが、その上でご紹介するのがこんなに遅れてしまったことを翻訳を担当された先生方、そして出版社の方々におわび申し上げる次第であります。
さてさて、この本の感想ですが、とにかく「集団精神療法の基本的な理論を概観する」という目的においては、これ以上の本はないと個人的に思いました。
グループの理論を学ぶ際に、もう一冊、「これだけは」というのを挙げろを言われましたら、私はこちらをお勧めいたします。
こちらはとにかく引用文献の量も質も圧倒的ですし、それを踏まえて体系的にまとめあげているのはものすごい作業だと思うのですが、いかんせん、ボリュームが多すぎるのですよね。専門書ってそんなもんですし、内容を考えれば「むしろ安い」とも言えるのですが、初学者にとっては8000円超えはお気軽に手をだせる価格とは言い難いです。
その点、『AGPA集団精神療法実践ガイドライン』は、これからグループを始める人にとって、間違いなく役に立つ上にボリューム的にも価格的にも手に取りやすい一冊なのではないかと思います。
そうはいっても内容が薄いわけではなく、『ヤーロム グループサイコセラピー―理論と実践』同様、グループをどのように考え、どのように作り、どのように実践していくのかといったことが、理論的に体系づけられており、かつ読みやすいというのが素晴らしいです。
日本集団精神療法学会教育研修委員長(出版当時)の田辺等氏は、「本書を活用するにあたって」でこのように述べています。
本書はコンパクトではあるが、読んで考えながら応用していくタイプの実践ガイドであり、“誰にでもよくわかる”的なマニュアル化された安易な治療手技の教本ではないところがよい。またガイドラインの議論で引用された文献などから、さらに問題意識を掘り下げて検討したいという興味も湧くであろうから、研究面に大いに役立つ資料でもある。
(p5より引用)
ホントそうです。個人的には臨床研究を大事にしたいと考える今日この頃ですので、「研究面で役に立つ」ってのはすごい重要だと思いますし、まさにこの本は引用文献の豊富さからその目的に合致していると思います。
とにかく「集団精神療法に携わる方々にとっては必携の一冊」です。これからグループを始める方も、すでにグループに携わっている方も、持っていないのならば是非ともポチっとどーぞ。
余談ですが、この本をお贈りいただいた際、こんな素敵なものもいただいてしまいました。
心理学の有名研究者の名前と「キーワード」が書かれたクリアファイルです。
自称「ロールシャッキアン」(フロイディアン的な)のワタクシですが、『ロールシャッハ・テストの体験的基礎』を書いたシャハテル,E.G.が新フロイト派だというのを、このファイルを見るまで知りませんでした。
そんな素敵なプレゼントまでくださった創元社のご担当の方、どうもありがとうございました。