臨床心理学

Weinerが行動医学者?

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ちょっと古い話。
08/08/13のエントリ、Irving B. Weinerでも書きましたが、今年の日心臨の大会でのWeiner氏による特別講演“The Value of Personality Assessment in Clinical Practice”「心理臨床に於ける人格査定の意義」聴きましたよ。
なかなか面白い話でしたし、フロアからの質問なんかも興味深い内容が多かったですよ。特に“Projective Test”とか“Unconscious”って言葉の現在…みたいな話とか。
なにが凄いって会場で講演原稿そのまま配布してたことですかね。字はでかいんですが、それでも全24ページ、時間にして1時間半びっちりってのは内容的にも濃厚でございました。てか、ちょっとした論文ですよね。
司会者の話によると、元々は同時通訳をつける予定だったらしいんですが、内容が多いのと討論の時間を増やしたいというWeiner氏の希望からこういう形(講演原稿の配布)になったとのこと。英語苦手なワタクシとしましては、ついていくのが結構大変でした。それでも勉強になったので参加して良かったと思うわけなのです。
さてそれに関連しまして久野能弘氏のブログ、久野能弘の日記の08/09/08のエントリ、日本心理臨床学会に参加して思うことにこんなことが書かれておりましたよ。

シンポジストには外国の方々もお見受けしましたが、数多い行動医学者の中で、何故わざわざこの先生に講演を依頼されたのかお聞きしたいところです。行動療法家はデータなしには講演をしないものです。あれでは精神分析家の講演と違いがないわけです。行動医学者としての彼の国際的な評価は如何程のものなのでしょうか?彼を行動医学の代表として態々この学会の特別講演に呼んだのは何故なのでしょうか?今や数少ない精神分析に好意的な臨床家だからでしょうか?彼がどういう臨床家なのか誰か教えて頂けないでしょうか?わたしの知る限りではPrinciples of Psychotherapy がWileyから1975年に出版されており、この翻訳は秋山たつ子訳で心理療法の諸原則として清和書店から出ている程度です。

これ、最初は「誰のこと?」と思ったのですが、最後の一文を読んでようやくWeiner氏のことなのだなと気づいた次第でございます。
てか、いつの間にWeinerが行動医学者になったのでしょうか?


Weinerの著書を読めばすぐに、その臨床的なオリエンテーションは力動的心理療法であることがわかります。

Principles of Psychotherapy Principles of Psychotherapy
Irving B. Weiner

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つか、こっちなんかはモロに“Psychodynamic”って書いてありますがな。

Prin of Psychotherapy: Promoting Evidence-based Psychodynamic Practice Prin of Psychotherapy: Promoting Evidence-based Psychodynamic Practice
Irving B. Weiner

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あとはロールシャッハの研究者でもあります。

ロールシャッハ解釈の諸原則 ロールシャッハ解釈の諸原則
Irving B. Weiner 秋谷 たつ子 秋本 倫子

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それが何で行動医学者?…と思ってしばらく考えてみて…ようやく気づきましたですよ。
資料の表紙にもこんな感じで書いてあります。

講演者
Irving B. Weiner, Ph.D., ABPP
Clinical Professor of Psychiatry and Behavioral Medicine
University of South Florida

あー、確かに“Behavioral Medicine”って書いてありますね。ひょっとしてこれですか?
でもその前に“Psychiatry”って書いてあるんじゃないですか?
さて、ここでこちらのページを見てみましょう。
USF Psychiatry and Behavioral Medicine
http://health.usf.edu/medicine/psychiatry/index.htm
南フロリダ大学(University of South Florida)の医学部(College of Medicine)の精神医学・行動医学講座?学科?(訳は微妙。Department of Psychiatry and Behavioral Medicineってことです)のページです。
Weiner氏はここのClinical Professorなのですよね…と考えれば氏が行動医学者でないことはすぐに理解できるんじゃないかと思うのですが…いかがでしょ?(私の英語能力の問題があったりすることも考えられるため、間違いがあるのならばご指摘くださいませ>久野氏&皆様)
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ちなみに久野氏は

行動療法家はデータなしには講演をしないものです。

とおっしゃっておりますが、資料のp16-17にもあるようにMeyer et al.(2001)の論文の数値データが講演でも示されていたと思うのですよね。ロールシャッハやMMPIの臨床的な妥当性に関連して。
ちゃんと講演聴いてました?>久野氏
とりあえず、肩書きとかどうでもよくないですか?
心理学者なのか行動医学者なのかはたまた精神医学者なのか、そんな肩書きなんてどうでもいいじゃないですか。肝心なのは講演内容でしょう?その点で批判するのならわかるんですが、なんかつまんない事にこだわってるなぁという感じがします。
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あと

毎回感じることですが、この学会は外国からの参加者が少ないですね!せめてシンポジュームなどには英語の通訳をつければもう少し海外からの参加者も増えると思います。それとも我が国の臨床のレベルが低すぎて観光がてらでさえ、来日する専門家がいないのでしょうか?

私も心理学系のマンモス学会では日本心理学会や日本心理臨床学会の大会にしか参加したことがないのでよくわからないのですが、他の学会はそんなに外国からの参加者が多いのでしょうか?日心でもそんなに多くの外国人って見たことないんですが、やっぱり日本の心理学のレベルが低いからなんでしょうか?
国際学会でもない限り、日本で開催される学会に多くの外国人が参加するなんてことはないと思いますよ。
あ、もちろん日本の臨床心理学のレベルが国際的に高い…なんてことは間違っても言えないですけどね(少なくとも今の私では)。でも、外国からの参加者が少ないのと、日本の臨床心理学のレベルの低さを結びつけるのはいささか短絡的なのではないかと思います。
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まあ、アレですよ。久野氏もブログを更新しているということは、つまり目の前にPCがあるのでしょうし、とりあえず検索エンジンとか使ってみるといいかもしれませんよ。
そしてこの本、気になります。

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Evidence-based Psychodynamic Practiceですからね。
関連エントリ
【これは】ロールシャッハ解釈の諸原則【買いでしょ!】(2005/03/29)
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