17/09/26のエントリ、【ご恵贈】渡邊敦子・安齊順子 編著『対人関係とコミュニケーション』【感謝!】に引き続き「ご恵贈いただいたにも関わらず長い間ご紹介せずにいて大変申し訳ありませんでした」シリーズ第2弾!
お送りいただいたのは、やっぱり去年の夏頃ですよね…本当に不義理をしてしまいました。
さて、本日ご紹介するのはこちらです。
ちょっとしたことで落ち込む、基本的に考え方がネガティブで、自分はツイていない、どうせダメだと思ってしまう。あるいはうまくいかないことを、すべて周りのせいにしてはイライラする……こんな困った「心のクセ」を持っている人に向け、「認知行動療法」でネガティブ思考から脱却する方法を説く一冊。うつその他の精神症状の改善に広く用いられている方法を用いて建設的にものごとを考える技術を、日常的に役立てられるように紹介。
ワークシートを使ったていねいな解説で、読者が自分で簡単に実践できる構成。
シチュエーション別マンガを入れて、さらにわかりやすく。
「どうせうまくいかない」がクセだったネガティブ思考から、「なんだかうまくいきそう」に必ず変われます。
出版社のページではちょっと立ち読みもできますよ。
・「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本 認知行動療法で始める、心のストレッチ(永岡書店)
定価は1000円+税と大変お求めやすく、また中身も漫画やコラムを随所に配して、認知行動療法で使うワークシートとその記載例も豊富に掲載されており大変読みやすいです。ということで、専門家向けというよりは完全にユーザー向けだと思いますが、専門家の皆様におかれましても色々参考になるところは多いはずです。
ユーザー向けというところで、個人的に残念なのは参考文献等の記載がないところです。著者紹介の欄には
※本書の内容は、科学研究費助成金(課題番号 15K13148、24653200など)の補助を受けた研究と山梨大学保健管理センターの“心の探検・心の処方箋”活動の成果に基づいています。
とあり、当然、科研事業データベースから検索も可能です。
・慢性抑うつと心理療法のシアター&スポットライト仮説の研究 (KAKENHI-PROJECT-15K13148)(科学研究費助成事業データベース)
・慢性抑うつの軽減・再発予防に向けた心理療法の統合と自伝的記憶の想起・変容の研究 (KAKENHI-PROJECT-24653200)(科学研究費助成事業データベース)
こちらでとりあえず研究成果は見られるわけなのですが、やっぱり本の中でその辺りに関する記載は欲しかったな、と。Amazonさんのカスタマーレビューで「中途半端な本で、科学的根拠も乏しく、実践的でもなく、余計に悩みそうな感じです。」なーんて書かれてたりするのはちょっと悔しいっすよ。私が著者ではないんですけど。
読みやすく、そして大変使いやすいこちらの本なのですが、もう一つ、使い勝手の面で要望を述べるならば、15種類あるワークシートをネット上でダウンロードできるようにしていただけるとこれは大変ありがたいのではないかと思います。
もしかしたらそういうサービスがあるのかもしれませんが、少なくとも私が探した範囲では見つけることができませんでした(一応、私なりにちゃんと読んでますよ。もし本書の中に記載がありましたらご指摘くださいませ)。
繰り返しますが、とにかく読みやすく&使いやすく、ユーザー・専門家、どちらにとっても大変役に立つ本です。科研費での研究をそのままでないにしても、その成果を一般の方が活用できる技術として還元するというのは学問の一つの理想形じゃないかと私は思いますし、この本はそういったものの一つなんじゃないかと思います。
興味がある方は是非ともポチっとどーぞ。