心理・精神医学本

【ご恵贈】三田村仰 著『はじめてまなぶ行動療法』【感謝!】 @Mitamura_Lab

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はじめてまなぶ行動療法

あー…改めて見てみたら、この本、発行日が2017年8月30日…その頃はまだブログ更新してたんですよね、一応…。お送りいただいたのはおそらく発売後すぐだと思うので…本当に不義理をしてしまいました。

大変申し訳ございませんでした>著者様そして出版社様

そして、ご紹介するのがこんなに遅れてしまったから言うわけではないのですが、これ、本当に良い本だと思います。いや、すごい本ですよ。

行動科学研究から臨床応用まで,心理臨床の歴史そのものと呼ぶにふさわしいほど長い歴史と蓄積をもつ行動療法。「パブロフの犬」の実験から認知行動療法,臨床行動分析,DBT,ACT,マインドフルネスまで,行動療法の基礎と最新のムーブメントをていねいに解説する研究者・実践家必読の行動療法入門ガイド。

行動療法の全体的イメージをつかめるように,心理療法としての行動療法の発展を解説した第I部(第1章),それぞれ行動療法のエンジンとも呼べる「レスポンデント条件づけ」「オペラント条件づけ」を紹介する第II部(第2~3章)と第III部(第4~8章),人間に固有の行動といえる「ものを考えること(認知・言語的行動)」に焦点を当てた第IV部(第9~11章),行動療法の臨床応用において永遠のテーマと呼べるセラピストとクライエントとの関係性にフォーカスした第V部(第12~14章),そして行動療法の世界観を解説した第VI部(第15章)。第1章から順にやさしく読める文体で,基礎知識だけでなく行動療法臨床のエピソードも織り交ぜて解説し,「なるほど,この原理はこういった実践に役立つのか! 」と納得できるよう原理と実践がリンクする内容を心がけて,重要概念を整理した巻末付録「用語解説・定義」や研究論文の文献も紹介しながらさらなる学びにつなげるためのヒントも豊富に盛り込んでいる。

はじめて読んでもよくわかる,行動療法の歴史・原理・応用・哲学を学べる教科書。

出版社のページでは目次が見られますよ。



当たり前っちゃあ当たり前ですが、昨年9月、つまり出版から1年あまりで3刷ですよ。これだけでもいかに売れているかがわかるわけですよ。

すげえなあ…。

…と、ここで唐突な自分語りになります。

ワタクシ、今でこそ臨床実践のオリエンテーションは力動的心理療法なのですが、そもそも大学1年の時の心理学概論の講義の最初に聞いた行動主義心理学の話、めっちゃ面白かったという記憶が残っています。そういや公認心理師のための試験勉強で、久々にその辺りの話に触れた際にもやっぱり面白いと思いました。

さらに、私の出身大学って(今はそうじゃないかもしれませんが)世間的には「行動療法の牙城」みたいな捉えられ方をしてる一面があると思うのですが、そういった流れもあり、学部1年の頃に友人に誘われて障害児教育系の研究室の研究会に出入りし、自閉症児のセッションのお手伝いなんかをさせてもらってたりしました。サーキットトレーニングとかやったなあ…と懐かしく思います。

そんなこんなで実は行動療法に対する親和性は高いワタクシなのです。

そしてこの本です。

出版からもう2年弱でかなり多くの場所で言われていることだと思いますが「はじめてまなぶ」という言葉に騙されちゃいけません。いや、初学者でも大変読みやすい本だと思いますが、ある程度知識のある人、さらに現場で行動療法を用いている実践家の皆さまにとっても、知識を整理し、行動療法の現在までの流れを俯瞰するのに非常に役に立つ本なのではないかと思います。

そもそも本書の「はじめに」の部分では、著者自身がそのコンセプトを明確に説明されております。引用させていただきますね。

 本書は行動療法を初めて学ぼうとする人が、行動療法の基礎的な知識と発想を学ぶための教科書です。(中略)行動療法や認知行動療法についてはすでにたくさんの優れたマニュアルやテキストがあります。本書の内容をよく理解していただければ、そうした応用的な書籍や専門書もより深く理解しながら読み進められるようになるでしょう。言うなれば本書は、行動療法という山を登ろうとする人の足腰を鍛えるための本なのです。

そう。

行動療法という山を登ろうとする人の足腰を鍛えるための本

という表現。実にわかりやすいじゃないですか。

ここからも単なる教科書以上の何かであることがわかります。

そしてまたすごいのが、巻末にある丁寧かつ的確な「用語解説・定義」、さらには実証研究や理論研究についての引用文献の数ですよ。用語解説は辞書的に用いることもできますし、さらにこの引用文献に実際に当たる際には「鍛えた足腰」が大いに役に立つことでしょう。

現在は力動的心理療法をベースとし、その背景として行動主義心理学に強い親和性を持つワタクシが大変興味深く読んだのは「第V部 関係性を築き、介入を始める」(第12〜14章)でした。そう、ここでは行動療法における「セラピストとクライエントとの関係性」に焦点が当てられているのです。

第12章では行動療法においてクライエントとの関係性をどう捉えるかについて述べ、第13章では関係性にもとづく行動療法の実践(=機能分析心理療法 Functional Analytic Psychotherapy: FAP)やクライエントの動機づけを高める関わり方(=動機づけ面接 Motivational Interviewing: MI)について概観します。さらに第14章では、どのように目の前のクライエントを理解し、セラピーを形作っていくのか、つまり機能的ケースフォーミュレーションについて解説しております。

この辺り、今時の行動主義の人々にとっては当たり前すぎることかもしれませんが、門外漢の私としては目からウロコでしたし、改めてこの辺りの技法や理論が行動療法の中でどのように位置づけられるのかについても理解することができました。

これだけのボリュームで3200円というのは破格だと思います。

学部の学生から実践家まで、未読の方はマストバイですよ!

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