書き込みはしてませんが、今でもたまに2ちゃんねる心理学板を閲覧しているロテ職人です。昔から心理学板には臨床叩きが多かったんですが、やっぱり今もその手の書き込みは山のようにありますねぇ(参考スレッド:★カウンセリング・心理療法の失敗例★part2)。こういうことを書くのはどんな人なんでしょうねぇ?(などとわかっていてとぼけてみる)。
もちろん、この手の批判は我々臨床家にとっては無意味なものではなく、真摯に受け止める必要はあると思います。特に失敗例がもつ意味については、真剣に考える必要があるでしょう。現在どんなに優れた臨床家であっても、絶対に過去の失敗例はあったはずです。失敗例から何を学ぶかで、その後臨床の能力が決まってくる、と言っても過言ではないと思います。
で、前述のような臨床叩きの書き込みの中で「臨床の事例研究なんて、成功した例だけを挙げてるような自己満足のものばかりだ!」という意見はよく目にします。確かに『心理○床学研究』などにしばしば載っている読書感想文レベルの事例研究の中にはそういったものも少なくないと思います。ただ、書籍として出版されているものの中には失敗例を取り上げたものも結構ありますので、せっかくなのでご紹介したいと思います。
ありがちな心理療法の失敗例101―もしかして、逆転移? Gerald Schoenewolf Richard C. Robertiello リチャード・C. ロバーティエロ 児島 達美 星和書店 1995-09 |
タイトル通り、逆転移を背景として生じた失敗、101事例が挙げられています。個々の事例はありがちなものから、「え?」と思うようなものまで多岐にわたっており(その辺は文化的・時代的な差異も影響しているかとは思いますが)、こうした一連の事例から何を学ぶかは読む人次第というところでしょうか。
ころんで学ぶ心理療法―初心者のための逆転移入門 遠藤 裕乃 日本評論社 2003-05 |
やはり逆転移に焦点を当てて(まあ、失敗事例となるとやはり逆転移の問題は大きいということですよね)「失敗事例から何を学び取れるか」に迫った良書です。平易な語り口で書かれており、タイトルにもあるように初心者にお奨めしたい本ですね。
失敗から学ぶ心理臨床 丹治 光浩 星和書店 2002-04 |
これもエッセイ風の文章でそれほど深く事例を掘り下げているわけではありませんが、多くの臨床家からの生の声が聞こえてきます。さらりと読めますが、その上で色々と考えてみたい本です。
カウンセリングの成功と失敗―失敗事例から学ぶ 個人・家族療法 白石 大介 立木 茂雄 創元社 1991-04 |
この本は未読なのですが、気になったのでご紹介。家族療法がらみのところが個人的に気になります。
治療の行き詰まりと解釈―精神分析療法における治療的/反治療的要因 H. ローゼンフェルト 神田橋 條治 後藤 素規 誠信書房 2001-06 |
先日も神田橋本をご紹介しましたが(してしまいましたが)、この本の監訳者は神田橋先生です。厳密には失敗事例の本ではありませんが、「第II部 治療の成功例、失敗例における分析家の関与」では反治療的要因とはどんなものかが考察されています。質的にかなりボリュームのある本ですので、じっくり腰を据えて読む必要があるかもしれません。
逆転移 松本 雅彦 ハロルド・F・サールズ みすず書房 1991-10 |
児童分析から精神分析へ D.W.ウィニコット 岩崎学術出版社 1990-05 |
あとは逆転移関連の主要論文ですね。ウィニコットの方は所収された「逆転移のなかの憎しみ」「精神分析的設定内での退行のメタサイコロジカルで臨床的な側面」が関連する論文なのですが…残念ながら品切れ中のようです。
以上、参考にしてみてください。そして私は今日も失敗事例について考えているのでした…。
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