心理・精神医学本

【ご恵贈】リーバーマン, J. A.・オーガス, O. 著 宮本聖也 監訳『シュリンクス-誰も語らなかった精神医学の真実』【感謝!】

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シュリンクス

多くの方はご存知かと思いますが、私は力動的心理療法をベースとした臨床実践を行なっております。精神分析学という学問に対しては、なんだかんだ距離をおきつつも重要視してますし、少なくとも分析的な視点は(私個人としては)必要不可欠なものと考えております…というのが前提。

さてさて、ブログ再開前にご恵贈いただき、ずーっとそのまんまになってた本シリーズです。こちら。

なぜ精神医学はかくも強烈な疑念や批判にさらされ、「医学の異端児」とされてきたのか?――

動物磁気を提唱したフランツ・メスマーの空想的理論、昏睡療法やロボトミーなど無謀な治療法、ジークムント・フロイト派の創設と決裂、脳科学研究を開拓したエリック・カンデルによるフロイト派の王位奪還、伝統あるドイツ精神医学のアメリカの精神科医への影響など、神秘的疑似科学として誕生した精神医学が生命を救済する科学=職業として成熟していく足跡をたどる。精神医学に名を残す英雄と偉大な詐欺師の錯綜した物語(ストーリー)、精神医学の光と影を成す歴史秘話(ヒストリー)、精神力動的パラダイム(心の学問)と生物学的パラダイム(脳の科学)との抜き差しならない葛藤と相克、そして1980年の刊行とともに精神医学のパラダイムを一新した『DSM-III』特別委員会委員長ロバート・スピッツァーの行動と思惟が、膨大な文献と個人的体験を交えながら、一般の読者にも読みやすいトーンで語られていく。

だが本書の目的は精神医学のダークストーリーをスキャンダラスに語ることではない。「精神疾患とは何か?」「いかにして精神疾患を診断・治療するのか?」と絶えず真摯に問い、精神疾患を「不幸な心の状態」ではなく「治癒されるべき病い」として描き、精神医学と精神疾患への偏見とスティグマを晴らす使命こそが、本書が見つめる最終目的だ。

アメリカ精神医学会(APA)会長にして全米科学アカデミー医学研究所会員の碩学ジェフリー・A・リーバーマンによる、誰も語らなかった/誰も語れなかった精神医学の真実。

出版社の紹介ページでは目次を見ることができます。

シュリンクス
シュリンクス

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こちらは電子書籍版の紹介ページ。そう。Kindle版も出てるのですよね。

シュリンクス
シュリンクス

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さらに原書版はこちらになりますよ。

A world-renowned psychiatrist reveals the fascinating story of psychiatry's origins, demise and redemption. Psychiatry has come a long way since the days of chaining 'lunatics' in cold cells and parading them as freakish marvels before a gaping public. But, as Jeffrey Lieberman reveals in his extraordinary and eye-opening book, the path to legitimacy for 'the black sheep of medicine' has been anything but smooth. In SHRINKS, Dr Lieberman traces the field from its birth as a mystic pseudo-science through its adolescence as a cult of 'shrinks' to its late blooming maturity since the Second World War as a science-driven profession that saves lives. With fascinating case studies and portraits of the luminaries of the field, from Sigmund Freud to Eric Kandel, SHRINKS is a gripping and illuminating read. It is also an urgent call-to-arms to dispel the stigma surrounding mental illness and to start treating it as a disease rather than a state of mind.


ざっくりまとめてしまえば米国を中心とした精神医学史に関しての本です。

この本、とにかく面白いです。なんというか「読み物として面白い」です。

タイトルにもなっている“Shrink”とは何かと言いますと…巻末の監訳者あとがきから引用しますよ。

Shrinksは日本人にはほとんど馴染みのない単語であるが、アメリカのテレビドラマや映画を見ると「精神科医」を指す言葉として普通に使われている。

シュリンクとは、本書で何度も述べられているように、フロイトが創始した精神分析を診断と治療の主軸とする精神科医たちを、侮蔑的なニュアンスをこめて呼ぶ俗称である。シュリンクは当初、精神分析を未開のジャングルの祈祷師による原始的な魔術になぞらえて使われはじめたと思われる。

本文中にはこんな風に書かれておりますね。

「ヘッドシュリンカー」という言葉は、一九四〇年代にハリウッドの映画会社と野外撮影地で生まれ、精神科医の新たな役割を表していた。当時は映画館で冒険映画が大流行し、特にエキゾチックなジャングルで、人食い部族が敵のヘッドを狩り、それを収縮シュリンクさせて保存するような映画が人気を集めていた。あいにく、「ヘッドシュリンカー」という言葉を、初めて精神科医に当てた人の名は記録されていない。したがって、その人が「精神分析家は映画スターの大きなエゴをしぼませている」と言いたかったのか、それとも精神分析をジャングルの祈祷師の原始的な魔術にたとえていたのか、定かではない。

ということで、米国における精神分析医に対する侮蔑的な俗称がシュリンク(shrink)なわけです。

本書の前半、「I 診断をめぐる物語」では、精神医学の歴史の中での精神分析学の台頭、米国での繁栄、そんな中で精神疾患に対する革命的なアプローチとしてのDSM-IIIの刊行までが語られます。書かれているエピソードの中には私が知っているものもあれば知らないものもありましたが、改めてそれらの出来事がどのように起こったのかが整理できましたし、何よりもそれが物語として大変興味深かったのです。

特に、後にシュリンクスと呼ばれるような人々(=当時の精神分析家)の激しい抵抗の中で、若手精神科医であるロバート・スピッツァーがどのようにしてDSM-IIIを完成させたのかについては、本当に手に汗握る攻防があったのだなあと思った次第。これは読む価値ありですよ。

恐らく原文が読みやすい文章なのだと予想されますが、訳は大変こなれており、訳本にありがちな不自然な感覚もほとんどありません。

こちらの本、少なくとも私の知る範囲ではあまり話題になっていないのですが(実際は大ヒットしてたりしたらすみません…私が無知なだけということで)、精神医療に携わる方は是非とも読んでみると良いと思います。

興味がある方は是非ともポチっとどぞー。

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