臨床心理学

【ガンダム】「わかりあう」ということ【エヴァ】

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mooさんの発達臨床処 moody cafeのこちらのコメント欄に触発されてちょっと書いてみます。
※カテゴリーは「臨床心理学」にしましたが内容的にはアニメ評論(のようなもの)になっています。興味のない方はパスしてもよろしいかと…


今を遡ること26年前「機動戦士ガンダム」というアニメが放映されていました。私のブログでは何度か使えない心理職を揶揄して「ザク」が登場しておりますが、あれはガンダムに出てくる量産兵器であります。
ガンダムはその後シリーズ化され続編アニメ・OVA・アニメ映画など作品世界は拡がっていくのですが、このシリーズを語る上で重要な概念の一つに「ニュータイプ」というのがあります(その定義についてはWikipediaの「ニュータイプ」の項参照のこと)。作品の中盤くらいから主人公アムロ・レイは高い戦闘力を発揮し出します。頭の中に「ピキーン」って感じで稲妻のような物が走り、高い認知能力・反応性を持って敵モビルスーツを撃退すると。恐らく当初は単にそうした能力の高さを示すための記号だったはずの「ニュータイプ能力」は後に(おそらく後付けの設定なのだとは思いますが…ってどこかで読んだような気がするのですが)「人が理解しあう・わかりあう」ための能力になっていきます。まあ、確かに極度に発達した認知能力というのはテレパシーみたいなものになるのかとは思いますが…
さて、ここで先日のエントリーでも触れた「共感」の話になります。このニュータイプ能力というのは実は高度な「共感」能力なのではないかと思うのですよ。で本当に「共感する」=ニュータイプ能力を持った人と同じレベルでクライエントの感情的・認知的世界を共有するというのは、実際不可能なことだと思うのですよ。「本当に理解した」というのはそうしたレベルで理解することであり…それこそ超能力的な能力を持っていない限りはやっぱり不可能なんですけどね。もちろん、臨床に臨む姿勢としては必要なのだと思いますが…私はそういう考えだからなおさら軽々しく「共感」(「共感的理解」も同じですが)などという言葉使う香具師に対して怒りを覚えるのかもしれません。
そして今回のエントリーの標題にもなっている「わかりあうこと」の難しさ、その不可能性をテーマの一つとして掲げている作品が10年前(もうそんなになるのか~)の1995年に放映された「新世紀エヴァンゲリオン」(以下「エヴァ」)です。ご存じの方は多いかと思いますが、この作品は様々な謎がちりばめられ、そしてTVシリーズの最終2話はそうした伏線が解消されることもないまま、登場人物達の心象風景や内的世界(内省?)に終始したことが一つのきっかけとなり、番組終了後もその人気はどんどん高まっていきました。
さて、エヴァを精神分析学的に解釈する…なんてことはもう手あかがついているテーマなんですが、あえてやっちゃいます。
以下重要なネタばれが含まれますのでその辺を考慮した上で以下はお読みください…っても今さら「ネタばれ?」って感じもしますが。「実は死んでるのはブルース・ウィリスの方なんですよ~!」とか今でも言っちゃいけないのかな?
いくつもの謎めいた言葉が登場するこの作品ですが、そうした概念の一つに「人類補完計画」というのがありました。Wikipediaの新世紀エヴァンゲリオンの項目を見ると、用語解説はされているんですが…なんだか全くもって意味不明ですね。
引用すると

本作品における最大の謎として提示される。エヴァシリーズに搭載されたS2機関同士を共鳴させることでサードインパクトを発生させると共に、アンチA.T.FIELDを物質化することで個体生命が各々持つA.T.FIELDを消滅させることにより、人類を生命の源たるL.C.Lの海へと還元し、不完全な群体生物から完全な単体生物へと人工進化させる計画。

と書いてありますが、訳わからんですよね?
物すごく簡単に言うと「完全な単体生物にする」というのは「全人類をまとめあげて一つの生命体」にするという話になります。つまり不完全な「わかりあえない」存在である人類を一つの自我へとまとめあげ完全な存在にする…と。完結編となった劇場版の描写では「身体の境界を失って液体になる」ことを「自我境界がなくなる」と表現しておりました。自我境界とは…引用するのがめんどくさくなってきたのでこの辺などご覧ください。
リンク先にもあるように、統合失調症の病理の一つとして「自我境界の脆弱さ」が挙げられます。「自分の思考が漏れている」といったように感じるのはまさにこの自我境界が弱体化しているためです。
人類補完計画によって「完全な単体生物」として一つの自我にまとめあげられた人類…その自我は、認識の世界はどんなものなのでしょうか?それは全てが「わかりあえる」世界なのかもしれませんが…そんなの気持ち悪いですよね。
「共感」「受容」に関するエントリーでも述べましたが、私たちは本当にクライエントさん・患者さんのことを「わかる」「理解する」ことはできるのでしょうか?私は本当の意味で「わかる」「理解する」ことなんて無理なんじゃないかと思います。でもやらなきゃいけないんです。カウンセリングやら心理療法やらをやろうとする限りは。
…何かまとまりに欠けますが…何か言いたかったことがあったんだよな…
あ、O先生!転勤前に私が貸した「エヴァ」のDVDボックス返してもらえませんか?お手数ですがよろしくお願いします。

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これかなりお薦めです。TV版全話+劇場版+特典映像てんこもりでコストパフォーマンスも良いです。よかったらどうぞ…
…あんまり慣れないこと(=難しい話)はするもんじゃないですね。
追記:
DVD-BOXは高いです。現実的なお薦めは現在も連載中のコミックスです。

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最新9巻です。ようやくカヲル君出てきたんですね。
劇場版ではあんなことになってしまったラスト、コミックスではどう落とし前をつけるのか非常に楽しみだったりします。

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