臨床心理学

東京都のひきこもり実態調査結果が大変興味深い件

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こんなニュースを発見。
高年齢化の実態明らかに ひきこもりは30代前半が4割超~都調査livedoor ニュース

調査によると、都内において、ひきこもりの状態にある若年者の人数はおよそ2万5千人と推計されることがわかった。これは、都民の0.72%にあたる。このうち、ひきこもり該当者の年齢層を見ると、30歳から34歳が44%と最も高く、半数近くを占める結果となった。

これらの人がひきこもるきっかけとしては、職場への不適応など、就労に関わるつまずきが多く挙げられた。年代別に見ると、34歳以下では不登校が53%と最も多く、次いで人間関係の不信が42%、職場不適応が13%などとなっている。一方35歳以上では、職場不適応が47%と最も高く、以下、人間関係の不信の33%、病気の22%などとなっている。

また、35歳以上ではひきこもり期間が7年以上となる人が61%と圧倒的に多いことがわかった。34歳以下でも7年以上ひきこもりを続けている人が15%となっている。

東京都による報道発表資料はこちら。
東京都のひきこもり実態調査結果・支援事業・講演会
平成20年度「ひきこもりの実態調査結果」について
若年者自立支援調査研究 ひきこもり実態調査結果
19年度調査の報告書はpdfで閲覧可能→実態調査からみるひきこもる若者のこころ 平成19年度若年者自立支援調査研究報告書※985KBとでかいので注意!


上記pdfは大変興味深いです。さすがに分量が多いので(全138ページの報告書です)、全部読んだわけではありませんが、気になったところをちょこっと。
この「およそ2万5千人」ってのは結構な数値だと思うわけなんですが、その推計がどういう形でなされたのか気になりました。
住民基本台帳から無作為抽出した3000人から転居、住所不明、死亡、長期不在を除いた2709人で、有効回答が1388人。有効回答率51.2%。これまた結構な回答率で。
そしてその中でひきこもり群とされたのが10人。出現率は0.72%。で、これを都内の当該年齢人口349万1千人で考えると、ひきこもり状態にある若年者の推定人数が2万5千人、と。しかも、ひきこもり状態にある人の回答傾向が一般よりも低いと推定されることを勘案すると、この数値は下限値である、と。
ほー。かなり妥当な結果っぽいです。
んでもって、上記記事や考察等でも触れられておりますが、「ひきこもり親和群」に注目したってところがまた興味深い。
pdfファイルの28ページにひきこもり親和群と一般群との群分けが載っております。関連する調査項目は「21.家や自室に閉じこもっていて外に出ない人たちの気持ちがわかる」「22.自分も、家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」「23.嫌な出来事があると、外に出たくなくなる」「24.理由があれば家や自室に閉じこもるのも仕方がないと思う」だそうで。
20年度の調査結果および考察によると

●親和群は、学校段階までは適応できているが、人間関係などに困難を感じている者が多く、孤立しがちであるため、孤独感を感じ、ストレスに弱い者が多いと推測される。

●求職者の中には、こうした、ひきこもりに親和的な若者が、かなり含まれており、就労後は、仕事上のストレス、職場の人間関係などの問題から離転職意向に結びつきやすいと考えられる。

だそうです。
「求職者」ってのは「就職経験のある求職者」だそうで、おそらく中途採用希望者ですよね?昨今の景気動向を考えると、「求職者の中には、こうした、ひきこもりに親和的な若者が、かなり含まれており」と言うよりも、就職活動をしていることで、ひきこもりに対する親和性が高くなるってこともあるんじゃないかと思ったり。
とにもかくにも、ワタクシの仕事的にも無視できない問題なので取り上げてみた次第。時間のある人は報告書をゆっくり読むと色々面白いかと思いますよ。「ひきこもり合計群」「ひきこもり親和群」「一般群」の間の色んな比較とか。
興味のある人はこの辺もどぞー。

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