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【基本から】八尋華那雄監修 高瀬由嗣・明翫光宜編『臨床心理学の実践: アセスメント・支援・研究』【応用まで】

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臨床心理学の実践

13/11/18のエントリ、【ご恵贈】八尋華那雄監修 高瀬由嗣・明翫光宜編『臨床心理学の実践: アセスメント・支援・研究』【感謝!】にて、ご恵贈のお礼のみを書いたままになっておりました、こちら。

面接、ロールシャッハ・テスト、SCT、描画法など各種アセスメント、自閉症スペクトラム、いじめ問題への介入など、さまざまな支援の実際と研究の最前線!

八尋華那雄 監修『臨床心理学の実践』金子書房

改めまして、私なりの感想を書かせていただきたいと思います。

面接法を含めた様々な心理アセスメントの技法について述べているこの本の中で、やはり私が一番気になったのは「第3章 ロールシャッハ・テスト」です。

この章の前半はロールシャッハ法に対する批判と、それに応えて作成されたR-PAS(ロールシャッハ・パフォーマンス・アセスメント・システム)について言及されております。

そう。ロールシャッハ批判というとこちらですね。

ロールシャッハ・インク図版テストの長く興味深い歴史を語り、その多くの科学的欠陥と数少ない妥当な臨床的使用について検討する。

あ、こちらは現在品切れ状態なのですね。良い本なのに残念。欲しい方はマーケットプレイスからどうぞ。

…とにかく、このウッドらのロールシャッハ法批判について、簡潔にわかりやすくまとまっています(『〜まちがっている〜』はかなり冗長なんですよね)。

そしてR-PASです。

私はこのR-PASについては存じ上げなかったのですが、なかなか興味深いです。

R-PASとは何か。第3章の執筆者であり、そして編者でもある高瀬氏の言葉を借りて一言で言うならばロールシャッハ法における「徹底的なエビデンスベースト・アプローチ」です。

引用します。

(前略)従来のロールシャッハ・テストが内包していた脆弱性(あくまでも科学という点からみた脆弱性ではあるが)を克服する、1つの道筋でもある。これまで、ロールシャッハ・テストの科学的基礎を強化するという役割は、包括システムが一手に担ってきた。その創始者であるエクスナーは、従来の名人芸的な技法の弱点を補い、より実証的な方法を確立するために、その全精力を傾けてきたのである。今後は、その遺志を受け継いだR-PASが、ロールシャッハ・テストの分析・解釈法における1つの大きな潮流となっていくのかもしれない。

ということで、ロールシャッハ批判が気になっていた人、ロールシャッハ法の「科学性」について疑問を持っていた方は是非ともご一読いただきたいです…まあ、R-PAS関連の元文献を読めばいいって話もありますが、やっぱりこうやってしっかりまとめてくださっているというのは大変ありがたいことです。

そして第3章の後半では、臨床実践におけるロールシャッハ・テストの解釈の留意点について、これまた簡潔にまとめてくださっています。

前提として実施の仕方やスコアリングが身についていて、さらに各指標の解釈的な意味などは理解していることが必要となりますが、その辺りをクリアした初学者にとっては、実践の中でロールシャッハ法をクライエント理解にどう活用していくか考える大きなヒントになると思います。

このように「科学的アプローチ」と「現象学的アプローチ」の双方にバランスよく言及されているという点で、非常に有用な本だと私には感じられました。

他の章については言及してしまうとあまりにも長くなってしまうので簡単に触れますが、TATを日常臨床の中で使うことのない私にとっても「第4章 TAT(主題統覚検査)」は分かりやすかったですし、「第5章 SCT(文章完成法)」は数量的な解釈の可能性も踏まえて過去〜近年までの研究が概観されており、こちらも実践に役立てることが出来るのではないかと思いました。

あと、コラムも充実している本書。その中で私が個人的に最も気になったのは「項目反応理論を応用した知能検査:適応型知能診断(AID2)」というコラムです。

このAID2は

ウェクスラー知能検査が包含する問題を、特にその実施法に焦点を当てて考えてみるとともに、この批判から生まれた新しいタイプの知能検査

であり、日本版の作成が期待されるアセスメント技法の一つだと思います。

そんなこんなで、全体を通して第3章で述べられているような科学的な知見と臨床的・実践的な知見にバランスよく触れられた一冊だと思います。それは恐らく、監修者である八尋華那雄氏の研究及び臨床スタイルを反映しているのではないかとも思います。

特に心理アセスメントに興味がある方、アセスメント業務が多い方にとっては必読の一冊ではないかと。是非とも皆さん、ポチっとどうぞ。

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