資格問題

公認心理師の受験資格が学部卒者にも与えられることに対する批判があんまりイケてない件

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公認心理師法案 意見広告

14/09/23のエントリ、読売新聞に掲載された公認心理師法案修正要望に関する意見広告と賛同者名をテキストに起こしてみるよで、意見広告のテキスト起こしをしてみたわけなんですが、改めてその内容を読んでみると…どうも引っかかる点があるのですよ。引っかかるというか、ぶっちゃけて言ってしまえば「イケてない」と思うのです。

私が「イケてない」と思うのは、臨床心理士有志が公認心理師法案に強い懸念を抱きその修正を要望する、その「理由2」です。

まずは「理由2」を引用してみましょう。

理由2 大学院を修了していない学部卒業者にも受験資格が与えられています

●心の健康に関わるためには高度な専門知識と技能が要求されます。そのため、学部教育だけでは不十分で、少なくとも大学院修士課程における教育・訓練が必要と考えられ、臨床心理士資格は大学院修士課程修了を受験資格としています。学部卒業での受験資格は心理サービスの質の低下を招き、国民の心の健康を維持向上するうえで支障をきたす可能性も出てきます。
●世界的に見て、心理職の国家資格は大学院修士課程修了以上を前提としています。学部卒業者の受験資格を認めれば、世界水準からみてはるかに専門性の低い資格となってしまいます。

さてさて…

「学部教育だけでは不十分」なのは何で?

限られた紙面でさらに専門家にではなく一般に向けての文章なので、言葉足らずになってしまうのは仕方ないと思うのですが、それにしてももうちょっと詳しく書いてもいいんじゃないでしょうか?

確かに「臨床心理師資格は大学院修了を受験資格としています」。そうです。その通りです。

しかし、単純に養成期間の長さだけで言えば、学部は4年間、大学院修士課程は2年間です。「いや、臨床心理士は学部+修士の6年間だ」という意見もあるかもしれませんが、現行の臨床心理士の養成において、学部は心理系の学部でなくてもいいわけです。

現行の臨床心理士の養成課程で行われている教育を、公認心理師を志望している場合は学部の3〜4年次で行う…っていうんじゃダメなんでしょうか?

臨床心理士の養成が「大学院修士課程」で行われる理由って?

そもそも、臨床心理士が修士課程修了を必須としている理由って何なんでしたっけ?

私の理解としては、その理由は臨床心理士の業務の一つに「研究」が含まれているからだと思っていました。

その仕事に研究が含まれているからこそ、研究者養成のための機関である大学院修士課程の修了が必須だったんじゃないでしょうか?

そう考えると、修士論文を課さない専門職大学院なんてものを作ってしまった時点で、臨床心理士の理念というのは損なわれてしまったんじゃないかと思うわけです…というのはまた別のお話。

「修士課程における教育・訓練」のレベルが高いから学部教育ではダメというのであれば、やっぱり同等の内容を学部の3〜4年次でやればいいという話になるように思われます。

「世界水準からみて」って「クラスのみんなはファミコン持ってる」と同レベルの話では?

自分の子どもが「クラスのみんなはファミコン持ってる!」「持ってないのは家だけ!」「だから買って!」と言われたら、何て答えます?

「よそはよそ。うちはうち」なんじゃないですか?少なくとも「みんなは持ってる」という理由だったら、私はそう答えます。

「なぜファミコンが欲しいのか」?「みんなが持っている」という以外の理由を説明できるのであれば、私は考慮しないでもないです。

「世界的に見て、心理職の国家資格は大学院修士課程修了以上を前提としています」だと弱すぎるんですよ。なぜ「大学院修士課程修了以上」が前提となっているかを説明しないといけないと思うのですよね。その理由づけがないと「よそはよそ。うちはうち」で終わる話ですよ。

そしてその理由が「『修士課程における教育・訓練』のレベルが高いから」ならば、上で書いたように同等の内容を学部3〜4年次でやればいいという話で終わります。

改めて臨床心理士の理念を見直す必要があるはずなんだけど…

なんでこんなに公認心理師の受験資格が学部卒者にも与えられることに対する批判がイケてないのかというと、臨床心理士の理念が忘れ去られてしまっているからだと思うのです。

ぼんやりと「修士課程における教育・訓練のレベルが高い」と言うのではなく、臨床心理士の養成課程はどうレベルが高いのかを明確に打ち出さなければ批判として成立しません。

今こそ、臨床心理士の理念を見直す時期ですよ。

…でも、それをやってしまったら「専門職大学院」の存在意義が失われかねないわけであり。そして、あの意見広告に名前を載せていた中には専門職大学院を推進した先生も少なからず含まれているんじゃないかとも思ったり。

さて、どうしたもんですかね?

皆様からの異論・反論・オブジェクション、お待ちしておりますよ。

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