心理・精神医学本

【感想…というか】『エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方』その3【ツッコミ?】

投稿日:

※21:00 文末に追記あり
この本のレビュー…というほどでもない感想文の続き。

エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方 エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方
Elizabeth O. Lichtenberger Alan S. Kaufman Nadeen L. Kaufman

日本文化科学社 2008-10
売り上げランキング : 86635
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

過去ログはこちら。
【ようやく】『エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方』【読んだ】(09/03/10)
【感想】『エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方』その2【書くよ】(09/03/11)
タイトルにも書きましたが、感想というよりはピュアリーさんへのツッコミになりそうな予感も。まあとりあえず書いてみますわ。


さて、「第9章 ケースレポート事例」にはケースレポート2例が掲載されておりますが、ピュアリーさん同様、私も「長すぎだろ」という感想を持ちました。
が、詳細な行動観察、検査結果に加え、相談内容、背景情報、過去の検査データ、さらに指針なども含んだものであることを考えると、まあこんなものかなという感じもします。例えるなら事例研究の問題から考察の一部まで含んだような内容なので、このくらい(37行×30文字で16ページ)は必要だろうなあと思います。
んでも、現場によっては…少なくとも日本の精神科臨床の現場においてこんな長い検査所見書いた日にゃ、同僚はほぼドン引き確実ですよ。私だって読みたくないっす。
じゃあどうするか。
ここで09/03/10のエントリで書いた「先輩からこっぴどく叱られた経験」が活きてくるわけですよ。要は「検査依頼を出した人間は知りたいことがあって依頼を出したわけで、とりあえずその『知りたいこと』さえわかるような形にすればいい」ってことですよ。だからこそ、外勤先に出てる医師(検査依頼主)にわざわざ電話してでも依頼内容(=知りたいこと)を詳細に確認する必要があるですよ。
ここで「要約」が大事になってきます。
「第6章 診断(見立て)と要約」にはこのように書かれております。

 「要約」の項は、レポートの中で最も影響力のある部分である。なぜなら、この要約の部分だけにじっくり目を通す人もいるからである。特にたくさんのレポートを読む必要のある人は、いきなり「要約」の項までページをめくり、主要な内容を確かめようとすることもある。(以下略)

(p121-122)
そう。とりあえずこの要約さえしっかり書くことができれば、とりあえず検査目的の大半は達成できたんじゃないかと思います。
ピュアリーさんは

僕の場合はどんな心理検査をしたとしても、だいたい1000文字以内でA4用紙1ページの中に収まるようにしている。

と書かれておりますが、多分それでも長いです。
私もレポート自体はそれくらいの長さで作成しますが、その上で「今北産業=今来た私にこれまでの流れを三行で説明してくださいという意味の2ちゃんねる発のネット隠語」的な感じでほんと3行程度、多くても7~8行くらいでの「要約」とか「まとめ」さえあればそれでいいんじゃねーかと思うですよ。
もちろん「要約」「まとめ」はそれ以前のものがあってのものであり、この本に書かれているような項目はちゃんと押さえておく必要があります。そして、その辺の長い文章ってのは同業者(同じ職場あるいは外部の心理職)だったり、検査に詳しい関係者が読んだ時に「どんな論理でそのまとめになってるの?」って辺りが理解できるようなものである必要があるかと。
たまに他の心理職が書いたアセスメントレポートを読むと「何でそういう見立てになるの?」みたいなのが結構あったりして…ってのはまた別のお話。
ともかく「要約」は大事。そして付け加えるなら、文面ではニュアンスを伝えにくいような補足情報を口頭で伝えるのもまた大事かもしれません。この辺は前に述べた「同僚とのコミュニケーション」の重要性に繋がってきますわな。
結局、心理アセスメントってのはある意味で「作業仮説」の構築のための作業であり、その「作業仮説」を構築する中でも繰り返し仮説と検証がなされるのではないかと思います。それは知能検査でも神経心理学的検査でも人格検査でも全てのアセスメントに共通するはず(そういう意味でこの本で人格検査を取り上げていないこと自体はそれほどマイナスポイントにはならないっす。個人的に)。
そしてさらに言えば、どんな立場・学派であっても心理臨床実践とは仮説(=見立て)とその検証(=見立てに基づく介入)、さらに新たな仮説の構築・検証・仮説の構築・検証…の繰り返しの過程なのではないかとワタクシは考えます(これはどこかで既に述べているかもしれませんが…)。
仮説なしに行われる介入なんざアレですよ。もうアレでコレでソレですよ。
意味不明であり、同時になんだかものすごく偉そうなのが大変気になる今日この頃ですが、言いたいことが言えたので良いとしたいと思います。
そして皆さんこの本は良い本です。お勧め。興味のある方はどぞー。
※21:00追記
you999さんからはてブにて以下のようなコメントいただきました。

確定診断だけで数十万とるようなアメリカではレポートは長い必要がある。

あー確かに。この辺は医療に関わるコストの問題が大きいかもです(的はずれだったらご指摘ください)。
以前、ある児童精神科医の方とお話したときに、日本の医療は最高にコストパフォーマンスが良い的なことをうかがいました。細かい表現は違いますが、とりあえずそれなりの技術をそれなりの価格で提供できるシステムは、それなりに優れている、みたいな。
庶民は保険を使ったとしてもそんなに払えないでしょうから「数十万もとるような確定診断」は現在の日本のシステムにはなじまないでしょうし、なんかお金をかける=長いレポートってのもどうかなあという感じがしないでもないです。
「数十万もかかるような確定診断」ってのはあれですかね。司法精神鑑定的なものがイメージとしては近いのかなあ…と勝手な想像をふくらませてみたり。

クリックしてくれたら本気出します学問・科学ランキング

-心理・精神医学本

Copyright© ロテ職人の臨床心理学的Blog , 2022 All Rights Reserved.