子育て

【釈明への】共働き家庭における子育て【再反論】

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<これまでのあらすじ>さいころじすと日記の3/4のエントリー、[時事問題][心理学小話]児童虐待問題─cafe_noirさんの問いに答える。でtakashiさんは現在の児童虐待の原因の一つとして、さらにこの問題を悪化させる要因の一つとして

共働きしないとやっていけない状況(少なくとも3歳ぐらいまでは、どちらかの親が休職するか仕事を減らして育児に入れる力を増やして欲しい)

ということを挙げていました。


これに対して私は同日3/4のエントリー、共働き家庭における育児
・母親が働いていること、保育園で育つことは子どもに対して心身発達上のマイナスの影響はない
・家族役割と職業役割を持つことが時間的身体的負担は大きいものの、母親の心理的充足感や幸福感を高めることも明らかにされつつある
・親による子育ての絶対性は認められず、働く母に対する世の憂慮や批判は杞憂であり、保育園に子どもを預けることに対して、現在そうしていない母親(“母の手で”を実践している母親)さえもそうすることが母親にも子どもにとってもいかにプラスかを認めている
といういくつかの研究結果を引用して少なくとも両親が共働きであることは育児の上で何ら問題にならないことを主張しました(ついでにtakashiさんのことを3歳児神話の信奉者ですか?などと揶揄してしまいました。
これに対してtakashiさんは3/5のエントリー、[つれづれ][時事問題]見解、というか釈明か!?

それで----え~、3歳児神話の信奉者ではありませんが、乳幼児期の子育てが重要であるとは思っています。まあ、これは当たり前のことですよね。3歳というのは、3歳児神話というよりは、Erickson, E. H.の発達段階理論の「自律性vs恥と疑惑」とか、自我の芽生えだとかを意識しての発言だったのですが----これが3歳児神話なのかもしれないですが----。

と釈明?していますが…<あらすじここまで>
ここからが今回の本題です。前回のエントリーでのtakashiさんの発言。これこそまさに広義の3歳児神話だと思います。
通常、3歳児神話というとボウルビィ(Bowlby)が提唱した“attachment”(愛着)という概念と関連づけて語られます。出生後の赤ちゃんにとって「大事な人」(=保護者など。一般的には母親)との間に愛着(アタッチメント)の関係を形成することが後の心理的発達に重大な影響を及ぼすとされており、発達心理学的には「愛着」は非常に重要な概念です。しかし、ボウルビィが愛着理論を提唱した際、それは3歳までに完成されるべきものだ述べたため、それが後に「3歳児神話」という悪影響をもたらしました。もちろんこの神話は心理学的にはまったく意味がありません。乳幼児期の子育てが重要なのは当たり前のことですが、BowlbyがEricksonに変わったところでやはり「母親の手で」ってことが重要なわけではないのです。
さらに「少なくとも3歳ぐらいまでは、どちらかの親が休職するか仕事を減らして育児に入れる力を増やして欲しい」という発言の悪影響について考えてみましょう。takashiさんは「どちらかの親が」と言っており必ずしも「母の手で」というわけではないのでしょうが、現実的にはこの場合、母親の方が仕事を辞めるというケースが多くなるでしょう。ここで前に挙げた「子育て臨床の理論と実際(日本家族心理学会)」からまた引用してみます。

人類は少なく産み(ほとんど単胎)長期養育する繁殖戦略をとる種である。このことは、養育に複数の人を必要とし、一人だけでの養育は不利であることは深化心理学が指摘するところである。日本の社会には、“3歳までは母の手で”なることばが広く行き渡り、子どもが誕生すれば女性に育児の責任が一任される有形無形の圧力となり、その結果、しごとを辞めて育児に専念する層が少なくない。その場合、父親は不在となり母親一人が育児にあたることになる。そうした無職の母親に育児不安が強いという事実は、進化心理学の知見に照らせば十分納得できよう。

中略

“母の手で”がよしとされる日本の社会で、女性が結婚し母親となっても職業をもちつづける“働く母”は、子どもや家族によくないと長らく世の批判にさらされてきた。実の親である母親が育てずに保育園に預けるなんて!子どもはかわいそうとも。

もちろんtakashiさんが“母の手で”を奨励しているとは私も思いません。しかし例えば仕事を続けたいと思っているが(そして思っているから「こそ」かもしれないが)育児不安の高い母親が、件のtakashiさんの発言を見聞きしたらどう思うでしょうか?その言葉が彼女の育児不安を一層強くする可能性は少なからずあるのではないでしょうか。そしてその育児不安の高さが児童虐待の遠因になるということも考えられます。
ちなみにtakashiさんは

ただし----引用した論文を含めて、この議論には生物学的な視点がやや欠けていると思われるので(引用した文献は社会心理学寄り?)----

と書かれていますが、一応心身発達における有意差は見られないことから生物学的視点が欠けているとは思えませんし、今回述べたように進化心理学的観点からも共働きをやめる理由は見あたりません。あとこうした研究は家族心理学や発達心理学的側面を持つとともにフェミニスト心理学的側面もあるのではないかと思われます。
とりあえずtakashiさん。こんなことを言っているうちは女性にモテないと思いますよ。(あ、言っちゃった)
皆様のご感想・反論等お待ちしております。
参考サイト:psycho lab.(心理学の基本 : 発達)

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