臨床心理学

【開業の】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど2【条件とは】

投稿日:

06/06/02のエントリ、【臨床心理士の】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど1【惨状】の続き。未読の方はまずそちらから。
まあ、とにかく臨床心理士資格保持者をとりまく経済的な環境はあまりよろしくない…というか基本的には劣悪なのでありますよ。
さてさて、医療機関での待遇はそれほどよろしいものではなく、SCも手取りはそこそこだが先行き不安…そんな中だからこそ、開業することを真剣に考えている人もいるわけです。
前回のエントリの最後の方にリンクした、takashiさんのさいころじすと日記の05/04/24のエントリ、[時事問題][心理学小話]開業って----(開業領域研修会というものに出席されたのだそうな)をみながら、「開業の条件」についてわたくしなりに考えてみたいと思いますよ。


takashiさんのところには「偉い人たち」が考える開業の定義について書かれていますが、takashiさん同様、そんなことはくだらねーと思います(「ポストモダン」とか難しいことはあたしにゃわかりませんが)。
で、その研修会では

さらに彼らは、開業をする場合は、一定の基準(例えば、他の機関で7年以上の実務経験)を設け、さらに臨床心理士会に登録する必要があるとも述べていた。

だそうです。で、takashiさん的には

他の機関での臨床経験などの条件を課すのも個人的には愚かな発想としか言いようが無い。臨床心理士になったのであれば、基本的に何をしようと自由だ。とってすぐの人が開業したってかまわない。医師がそうであるように。

ただ、「自己責任をきっちりとる」ことと、「他の心理士に迷惑をかけない」ということをしっかり了解していればいいことである。腕や才能や適性があれば、ガンガン開業すればいい・させればいい。それを年寄り連中が「経験年数」で規制するのは、ただの老害だ。「経験年数が多いほど臨床心理士として実力がある」なんてものは傲慢な妄想だ。ただのドグマである。それとも、開業臨床は、「病院臨床や学校臨床よりも崇高なものがある」とでも言いたいのだろうか。

とおっしゃっております。
んー…
これ書かれたのは1年以上前のことですし、今はお考えが変わっているかもしれません。もしそうだったらその旨お伝えください>takashiさん
で、おっしゃっていることはわかります。正論だと思います。
ただ「経験年数での規制」ってのは「自己責任をきっちりとること」や「他の心理士に迷惑をかけないこと」の最低限度の保証なのではないかとも思うのですよ。
わたくしが考える「開業の条件」は2つあります。それは
1)アセスメントができること
2)信頼できる腕の確かな医療機関・相談機関に紹介できること

だと思います。これさえしっかりできていれば「自己責任をきっちりとること」や「他の心理士に迷惑をかけないこと」はできますし、なによりも大前提として「クライエントに不利益を与えないこと」というのは守れるはずです。
では一つずつみていきます。
1)アセスメントができること
当然「アセスメント=心理検査」ではありません。あたりまえのことですね。
面接や各種心理アセスメントの技法を通して、クライエントの状態(というのは周囲の環境要因等も含めて)の把握と、臨床心理学的介入が必要か否か、そしてその介入方法の選択まで含めた広義のアセスメント=見立てができなければなりません。
そして、これは「クライエントをアセスメントする」だけではなく「臨床家が自分自身の能力をアセスメントをする」ということをも含みます。自分自身の能力をどの程度客観的に把握できているか、そこは大きなポイントになるのではないかと思いますよ。それさえできていれば、自分の手に負えないクライエントを延々を抱えている…という可能性は少なくなるのではないでしょうか?
で、
2)信頼できる腕の確かな医療機関・相談機関に紹介できること
です。
これ。実はなかなか難しいのではないかと思いますよ。
まず「信頼できる腕の確かな医療機関・相談機関」を知っていなければならないわけで。例えば大学病院だから良いってことにはならないでしょうし、例えば有名な先生(医師だったり心理職だったり)がいるから良いってものでもないでしょう。
さらに、そういう機関を「知っている」だけではなく「紹介できる」という関係ができていなければいけないわけで。これはもう経験とかコネクションとか営業の結果だったりとか、一朝一夕でできるもんでもないと思うのですよね。
さらにさらに、「紹介できる」という「関係」だけではなく、自分の側の気持ちの問題というか、「プライド・自尊心」が邪魔して紹介できなかったり(下手したら「こんなケースも扱えないの?」とか思われたり)、あるいは「営業上の理由から」紹介できなかったり(「紹介する=客を逃がす」ってことなわけで)…ってことがあってはいけないですよね。
・・・・・・・・・・・・
この条件さえクリアしていたら、とりあえず開業するのは問題ないと思います。ただし、これで繁盛するか、食えていけるのかってのはまた別問題だったりしますが。
で、takashiさんがおっしゃっていたように、別に他機関での経験の有無だったり、あるいは経験年数だったりで開業を制限する必要はないとは思うのです…臨床心理士資格を持っていて開業を考えている人間がまともでそれなりに能力があるのであればという前提つきで。
そういう制限をせざるを得ないのは、必ずしもみんながまともで能力があるとは言えないからなのではないでしょうか。
なんだかまた長くなってしまったのでとりあえず今日はこの辺で。まだまだ続きます。そして皆様からのご意見をお待ちしております。

よかったらクリックしてください→学問・科学ランキング

-臨床心理学

Copyright© ロテ職人の臨床心理学的Blog , 2024 All Rights Reserved.