臨床心理学

必要なのは「心理療法・心理面接をすることの怖さ・重みに対する自覚」なのではないかと

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つなでさんの臨床心理職能メモの07/03/05のエントリ、心理療法ができる職場と03/06のエントリ、臨床心理職は何をする人かを受けて、心の探究、あるいは夜の世界のnocteさんは本日のエントリ、病院において心理療法をすることで持論を展開されております。
以下コピペ。

そもそも心理療法を私たちの仕事の核とすることには、いくつかのリスクが存在している。

1つは、その質の問題だ。私たちがクライエントの話をどのように聞き、どのように関わるかによって、そこでどのようなことが語られ、どのような展開がみられるようになるかは変わってくる。私たちが未熟であれば(そして私たちは多くの場合実際に未熟なのだが)、そこで得られる心の動き方、変わり方、連続性等についての理解も未熟なものにとどまってしまう。

また、私たちの見る視点が異なれば見えてくるものも変わってくるだろう。学派の違いということで語られることの多いこうした視点の違いについて、私たちはいつまでも疎通性のないまま独立に話を進めていっていいわけでもない。それらは同じ心の異なる側面に光を当てようとしているのだから。しかし、それでも実際のところ私たちは私たちの立ち位置においてしか物事を捉えることはできないわけで、心理療法のように主に二者関係にとどまるものは、私たちの限界をそのままクライエントの成長の限界としてしまいやすいかもしれない。

なにより、それだけ心を深く理解することである以上、心理療法において私たちは個人の心の領域に深く踏み込むことになるわけで、それだけクライエントの反作用も大きくなるだろう。日常の交流からは身を守ることができても、心理療法における交流に対してはクライエントが身を守る術を持たない可能性もあって、したがって心理療法を行うにはそれなりの責任とまた私たちの側にも覚悟が必要となる。

はい。全くおっしゃるとおりだと思います。
そして付け加えるならば(何度かこのブログでは主張してきたことでありますが)、心理療法・心理面接を行うということは、つまり「人の命を扱っている」のだという自覚が必要なのだと思います
以前、「『人のためになりたいから』という理由で心理職・カウンセラーを目指す人の中には、そういった仕事に就かないことがよほど世のため人のためになるような人もいる」ということを書いて反発を受けたことがありましたが、でも本質はそういうことなのではないかという考えは今も変わっておりません。
nocteさんはこのように続けています。

一昔前の人の話を聞くと、臨床心理を志す人がたとえ病院で働くことができても、そこですぐに心理療法ができたわけではないという。事務作業をしたり、雑用をしたり、今で言うOTやPSWの仕事をこなさなければならなかったり、仮に心理として仕事ができてもテスターとしてとにかく来る日も来る日もテストを取り続けたり、そうした日常業務を行う中で築かれた信用の上にはじめて心理療法のオーダーが出されたという。心理療法を行うということはそれだけの重みがあることなのだと思う。

テスターとしての業務に関してはともかく、事務だったり雑用だったり、OT・PSWの仕事をこなしたりといったことだったり、あるいはそれによって信用を得るってことだったりは実はそれほど重要なことではないのではないかと。
むしろ重要なのは、そうした業務の中で何を考え、そして改めて自身の専門性が持つ意味を自覚していくことが必要なんじゃないでしょうか?それがなければ、どんなにたくさん心理療法・面接以外の業務をこなしても意味がないと思います。
…という中で改めて大学院での研修について考えてみると、当ブログでは何度も述べているように修士課程の2年間は研究と並行して実践レベルの技能を身につけるのはまず不可能だと思うのです。じゃあ、何が出来るかっていうと、基本的な面接技法だったりアセスメント技法だったりの基礎の基礎をみっちり身につけること、そして上で書いているような心理療法・心理面接を行うことの重みを自覚することなのではないかと。
さらにそれを自覚するというのは、それがつまり心理臨床における倫理教育ということなのではないかと思うわけなのですね。
ぶっちゃけ、基本的が技法がみっちり身についていて、倫理観がしっかり育っていれば(=自分の一言がクライエントの命を奪ってしまうかもしれないという自覚が育っていれば)、かっちりと構造化された面接の経験というのは必ずしも必要ないのではないかと思います。
もちろん、病院臨床で必要とされる知識はどんな分野であっても必要ですし、心理職にとっての、心理職から見た病院臨床とはどんなものなのかということを肌で感じる必要はあると思いますので、病院での実習というのは必須なわけですが、病院での心理療法の経験というのはそりゃできる場があるのは幸せですけど、やんなきゃいけないってほどのものではないのかもしれません。
…と私は思うわけですがいかがでしょ?ご意見いただけたらうれしゅうございます。

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