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収益化できない事業に臨床心理士が参加することで「やりがい搾取」の犠牲になる危険性について @OVA0714

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社畜の安寧

夜回り2.0相談員募集に対する私の感想です

さて、一昨日のエントリ、“夜回り2.0”でおなじみのOVAがサイト開設&夜回り2.0の相談員を募集中で予告していた「私の感想」です。

正直なところ、かなり辛辣なコメントになってしまう可能性もありますので読まれる方はご了承いただけたらと。

また、私の考えに対するご意見・ご批判等もお待ちしておりますので、Twitterfacebook等でもお気軽にどうぞ。

さて…

恐らく、これから書く内容は13/12/13のエントリ、臨床心理士の「収益化」は難しいという話 あと情報の周知とか偏見とかと重なる部分が多いかと思います。そもそも、「臨床心理士の「収益化」は〜」はOVA代表、JIROさんによる、未来の「ココロのインフラ」の話をしよう。【新しい相談文化の創造。相談者・臨床心理士とのマッチングサービス】というブログ記事に対する批判記事だったわけですし。

相談員募集の条件を見てみましょう

ともあれ、ここで改めて、OVAの夜回り2.0相談員募集について見てみたいと思います。

相談員募集【応募期限8月10日まで】 | OVAより引用

■内容
自殺リスクが高い方を対象にした(主に)メールやSkype等の通話アプリを使った相談業務

■対象となる方
・都内近隣にお住まいの方
・精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士 医師・看護師・保健師・その他対人援助の資格を有する方 またはそれらを目指す大学院生など。(資格は一つの目安ですので、自殺予防の相談活動を熱望される方で無資格の方もご応募可能です。ご応募前に伊藤に問い合わせて下さい。)

■募集人数
2名程度

■期間
2014年9月から2015年9月まで(9月より打ち合わせ等を行い、10月頃より相談活動を始めていただく予定です。)

■時間や勤務場所
ご自宅などで、空いている時間で活動していただけます。電話で伊藤と話をしたり 月1度程度和光大学などに集まっていただく事があります。

■謝金
ひとり最大月額5万程度の予算をたてておりますが謝金に関しては、相談件数などに応じてお支払いさせていただく予定です。詳細については面接の際に、お話させていただきます。

「対象となる方」には臨床心理士以外も含まれておりますが、一応、私は臨床心理士ですので心理士限定での話しとさせていただきたいと思います。

お金の問題と「やりがい搾取」

最大の問題になるのはやはり「謝金」です。

「相談件数などに応じてお支払いさせていただく」としながらも「ひとり最大月額5万円程度」というのは…実質的に時給はどの程度になるのでしょうかね?

「ご自宅などで、空いている時間で活動していただけます」とありますが、「自殺リスクが高い方を対象にした(主に)メールやSkype等の通話アプリを使った相談業務」であることを考えると、かなり神経を使いそうですし疲弊もしそうです。

それでもきっと、「やりがい」を感じる方は多いでしょうし、実際に社会に対する貢献度は非常に高い活動だと思います。

…しかし、そうなってくるとこれは「やりがい搾取」になってしまう危険性も感じるのです。

「やりがい搾取」とは…

企業風土が、従業員に“やりがい”報酬を意識させて、金銭報酬を抑制する搾取構造になっていること。賃金抑制が常態化したり、無償の長時間労働が奨励されたりすること。働きすぎの問題として、本田由紀が名付けた概念。

やりがい搾取とは - はてなキーワードより

正確には「やりがい搾取」ではないんだけど…

資本家が労働者から搾取するという構造ではないので、正確に言えば「夜回り2.0」は「やりがい搾取」には当てはまりません。

しかし収益化が出来ないとなると「賃金抑制」は(それは仕方ないにせよ)常態化せざるを得ないし、自殺の危険性が高い=緊急性の高い方が対象であるために「無償の長時間労働」になってしまう可能性が高いです。

以前、OVA代表JIROさんは、夜回り2.0の継続相談をお一人でやっていたためにかなり疲弊されていたのではないかと思われます。一人が三人になったとしても、恐らく状況はそれほど変わらないでしょう。そういう意味ではJIROさん自身も「やりがい搾取」されていたかもしれません(搾取「する」側はいないのですが)。

今回、三菱財団の助成金により新規広告を打ち、相談活動を展開することも出来るようになったとのことですが、恐らく「収益化」というのは難しい状況だと思います。

じゃあどうするか…どうしましょう?

こんな時こそ「ネットでのお金集め」の上手い人の出番では?

さて、ここでJIROさんのブログにあるプロフィールのページを見てみましょう。

代表プロフィール | 壁と卵

影響をうけている人

VEフランクル(精神科医・実存分析創始者)

水谷修(夜回り先生)

家入一真(連続起業家)

SCA代表ヨコヤマ(ソーシャルワーカー)

はい出ました。

クラウドファンディングによりネット上で活動資金を集め、先の東京都知事選挙に立候補したあの家入一真氏です。

そして、以前OVAが企画・実施をした「自殺対策コンテスト!」には、あの方もコメントを寄せてましたね。

そう。プロブロガーのイケダハヤト氏です。

この人達の力というかノウハウを持ってすれば、相談員の2〜3人をまかなう程度の収益は得られるのではないでしょうか?

それは相談業務の対価としての収益ではありませんが、そもそも夜回り2.0は営利活動ではないですからなかなか収益化はむずかしいと思うのです。

むしろ別方向からの収益化、例えばAdSenseを貼ってみたりするだけでもそこそこの収入は得られるでしょうし、もっとドーンとお金を集めたいのであれば、それこそクラウドファンディング・プラットフォームも色々ありますよね。CAMPFIRE(キャンプファイヤー)とか。

http://camp-fire.jp/
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)- クラウドファンディング

そういう形で、運営資金を集めるしかないんじゃないかと思いますよ。いや、ネットでの集金能力の高い人達なら、もっといいアイディアが出るかもしれません。

お金は大事です

お金の事ばっかり言って、私のことをいやしい人間だと思われる方もいらっしゃることでしょう。

はい。それは認めます。

ただ、とりあえず生活していくだけのお金は必要ですし、我々の仕事の質を維持していくためには研修やスーパーヴィジョンは必要不可欠なわけで、そのためにもやっぱりお金はないと困ります。

とにかく、活動されている方の献身や自己犠牲による運営ではなく、心身ともに健康を維持できるような活動を私は望みます。

そうじゃないと、相談員の方が「自殺リスクが高い方」になりかねないですから。

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