心理・精神医学本

【かゆいところに】心理学・社会科学研究のための 調査系論文の読み方【手が届く】

更新日:

※17:30 エントリ文末に追記あり
以前、こんなエントリをアップしました。
【激しく】誰かこれの「心理学版」を「(萌え)マンガ化」してくれねぇかなぁw【他力本願】
統計の本というよりは「研究のための本」「研究の方法論に関する本」ってないかなあと思ったです。いや、そういう本はあるのですが、方法論よりももっと実践よりの本はないのかな、と。
本来、大学院ってのはそういうことを身につけるための場所のはずなんですが…いや、理想的には研究の考え方や方法論を身につけるのは学部の段階で終わらせておいて、大学院はそれを本格的に実践し始める…みたいな感じのはずなのに、それができていないまま現場に出てしまう人が少なからずいるというのが現状だと思うわけです。
その辺のごちゃごちゃした愚痴まがいの主張に関しては「7研究と臨床」カテゴリや「10ダメダメ大学院」カテゴリの過去ログを読んでいただければと思います。
で、何の話でしたっけ?…あ、そうそう。その冒頭で挙げた過去ログで語っている理想に近い本が出ました。これです(マンガじゃないですけど)。

心理学・社会科学研究のための 調査系論文の読み方 心理学・社会科学研究のための 調査系論文の読み方
浦上 昌則

東京図書 2008-07-04
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◎数字や統計記号も恐れることなく,論文を読み解くポイントが見えてくる

本書は,初心者が「調査系論文が読めるようになる」ための本であるが,平均・標準偏差,因子分析など,「これを知れば,論文が読めるようになる」という内容を精選し,直線的に組みたてた。論文を読むには,研究者がどういう意図で文章を書き,統計を使ったかを読みとる力が要る。そのため,より必要な統計手法を意味に重点をおいて説明し,論文に省略された部分も補って,書き手の視点から論文を読む道筋を解説する。これは,自分の研究で論文を書くときにも,きっと役にたつ。


これは私が考える理想型に相当近いですよ。
目次がこんな感じ。

第0章 「論文を読む」ということ
第1章 論文とは何なのか?
第2章 研究における測定
第3章 測定から統計へ
第4章 因子分析・t 検定
 サンプル論文1 動物に対する共感性尺度の作成
第5章 1要因分散分析・相関係数・偏相関係数
 サンプル論文2 介護意識の形成 ― 高齢者との同居経験と高齢者観との関連から ―
第6章 2要因分散分析・因子分析
 サンプル論文3 交際経験が同性との関係観におよぼす影響 ― 大学生を対象として ―
第7章 重回帰分析
 サンプル論文4 40歳代男性の生活満足感に影響する要因の探索的研究
第8章 共分散構造分析
 サンプル論文5 試験への動機づけとその結果の関連 ― 学びの個性に着目して ―

興味深いことに、このサンプル論文(データも先行研究もこの本のために作られた架空のものなのだそうな)を出版社のサイトからダウンロードして読むことができるようになっております。
東京図書株式会社 心理学・社会科学研究のための 調査系論文の読み方(←こちらのページの一番下の方からダウンロードできます※注:pdfファイルですよ)
すげえいい本なんですが、私の文章力ではなかなかその辺をうまく伝えることができません。なのでちょこっと前書きから抜粋。

さて、統計を使った論文が読めるようになることを目指した本書ですが、統計の専門書、概説書というわけではありません。論文の書き方を伝えるものでもありませんし、研究法の本というカテゴリにも入らないでしょう。本書はかなり個性の強いものです。

その個性のひとつは、「論文が読めるようになる」というところへ向けて、直線的に構成した点です。どのような統計の本を読んでみても、平均値や分散といった基本中の基本といえる説明のあとに、いきなり因子分析が紹介されるようなことはありません。セオリーの無視もはなはだしい構成です。しかし、論文を読もうとすると、因子分析がわからないとそこから先に読み進められないことが多いのです。そこで統計法の学習のセオリーはちょっと横において、「論文が読めるようになる」ために必要なことを中心に構成を試みてみました。

私みたいに統計苦手な人間はよくわかるんですが、正直、心理統計の講義だけだとそれぞれの統計手法の目的というか使われ方が理解しづらかったんですよね。で、自分の研究に必要な論文を読むようになって、ようやく使われ方というか考え方がわかったという次第なんですが、その辺をきっちりおさえた本なのだと思います。逆に「どう使われるのか」ってことから統計手法の理解に繋がったりもするのではないでしょうか。

もうひとつは、統計を利用する研究者の視点を積極的に示してみました。論文という文章自体も、またその中で利用されている統計も、研究者が示したいことを示すために使われている手段です。「論文が読める」、「統計がわかる」ためには、この研究者の考えていることを追体験し、研究者の視点を通して論文をみることが近道だと考えます。本書では、論文には決して書かれることのない部分も紹介しています。それを見てもらうことで、研究者が何を考えながら論文を書いているのか。またどういう意図で統計を利用しているのか、何を見ながら分析を行なっているのかということが少しでも伝わればと考えています。これは、自分で研究を行ない、論文を書く時にもきっと役立つと思います。

ここ読んで思ったのですが…こんなことを言ったら「お前、それ穿ちすぎじゃね?」と言われそうですが、んでも思っちゃったので言っちゃいます。
私、臨床実践の中で患者・クライエントの体験を「追体験」するってのがすごい大事な過程だと思うんですよ。この筆者の述べているところの「研究者の考えていることを追体験し、研究者の視点を通して論文を見る」ってのは、臨床実践の中での共感に繋がる部分があるんじゃないかと思うのです。んで、そういう段階を経ることで、患者・クライエントに対する理解、そして研究に対する理解ってのはすげえ深まるんじゃないでしょうか。
これ、将来的に大学院進学したいと思っている学部生には激☆レコメンです。修士課程の学生、ギリギリ1年生ならまだ間に合います。
個人的にはサイズが変形B5判なのがちょっと気に入らないところなのですが、それ以外の部分に関してはまず間違いないです。
興味のある方はポチっとどぞー、です。
そして、この本関連の話題、もうちょっと続くかも、です。
※17:30追記:そういや以前、東京図書の編集者の方からメールをいただきまして…
東京図書編集部の方からメールいただきますた(06/03/16)
その時にこんなことが書かれておりました。

私のほうでも、論文を読むことのリテラシー能力をまずきちんと身につけることで、書くことにもつながるようなテキストを、こちらは調査のしかたにはじまって具体的なデータのとらえかたや分析の読み方などを扱う形で、本の形にすることを、現在、企画を進めています。

ということで、この「論文読みリテラシー」に関する本が今回ご紹介した本だったというわけですね。

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