心理・精神医学本

藤山直樹著『集中講義・精神分析 上巻』

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先日の開催された日本精神分析学会第54回大会(そういや先日のエントリで「第58回」って書いたまま、未だに修正しておりません。あれアップした時、完全に酔っぱらってたんですよね)で、個人に一番の注目本。
てか、価格的にも企画的にも完全に「売る気満々」な感じなんじゃないかというこの一冊。

集中講義・精神分析 上 集中講義・精神分析 上
藤山 直樹

岩崎学術出版社 2008-11-08
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売る気満々であり、そして確実に売れると思います。特に初学者に
で、本の紹介の前に…
出版元である岩崎学術出版社のサイトでは刊行日が2008年10月27日になっており、既刊なのですが、Amazonでは発売日が11月8日で「ただいま予約受付中です」となっております。


ワタクシ的に邪推しますと、発売予定日は11月8日だったと思うのですが、恐らく精神分析学会の大会開催に合わせて発売を早めたんじゃねーかと思うですよ。そのタイミングの違いでずいぶん売り上げ違ってくるような気がしますですよ。
とりあえずAmazonで早く手に入るようにしていただけたらと思います…って、これは誰に言うべきなのでしょうか?Amazonの中の人?それとも岩崎の中の人?ともあれ、よろしくです>誰か
・・・・・・・・・・
さてさて、この本ですよ。
以下、引用は
岩崎学術出版社: 集中講義・精神分析●上巻
http://www.iwasaki-ap.co.jp/2008/10/post_221.html
より

この講義は大部分、2006年の上智大学における精神分析についての系統講義の春学期分をもとにしています。大学学部で講義しているとは言え、フロイトのウィーン大学での講義「精神分析入門」がそうであったように、私はできるかぎり高い志で、私の考える精神分析の本質をまったく精神分析を知らない聴衆にじかに伝えることを試みました。

ええ。すごい高い志だと思いますですよ。
学部の講義内容をそのまま書籍化したものなんですが、いくら上智の学生さんが頭が良いと言っても、多分この内容は理解できねーんじゃねーかなという位のレベルの内容だと思います…というか、藤山氏の研究室のOBの人が「多分、学部の学生じゃわからないと思う」と言っておりました。
当ブログ的大ベストセラーであるこちらも講義内容の書籍化なわけですが

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この辺よりもさらにディープなところを伝えようとしているので、結構難しいと思います。
んでも、ある意味では初学者からそれなりに経験を積んだベテランまで、それぞれの立場で読んでみてそれぞれの立場で得るものはあるんじゃないでしょうか。

精神分析というものはこの国で根付いていません。欧米では、それはひところいくぶん持ち上げられすぎといえるほどの敬意を集め、その後生物学的精神医学や実証主義、より客観的に語ることのできる他のディシプリンの台頭によってその地位が危うくされつつあるという歴史をもっています。しかし、日本でそれは一度も真の意味の敬意を集めたことはないといってよいでしょう。おそらく世界のいわゆる先進国のなかで、一般の知識人と精神分析との距離がもっとも遠い国が日本なのです。

実はそうなのですよね。
個人的には正統な精神分析ってのは近寄りがたいものを感じるってのが正直なところだったりします。精神分析「的」心理療法や精神療法をやろうと思ったら、やっぱ「正統」を知っとかなきゃいけないのもわかるのですけどね。

長年パーソナルなものを差し出して訓練を積んだ精神分析家と自分の時間とお金を差し出して深い意味での幸福を求める被分析者とのあいだで、パーソナルで極度に親密な交流がきわめてフォーマルな枠組みのなかで長期間にわたって真摯に繰り広げられるユニークな営み、それが精神分析です。

私個人はその実質に何の疑いもありません。自分の訓練の過程においても、日々の実践においても、絶えずその力を実感してきました。けれど、その実感と確信を次世代に伝えることがなければ、精神分析という文化は枯れてしまうでしょう。精神分析を分析家としておこなう人、被分析者としてそれに取り組む人、そして精神分析を学ぼうとする人、精神分析という文化が生きつづけるには、こうした人たちの存在が必要です。こうした人たちの人生のあいだにこそ、精神分析は息づくことができるのです。この国の若い人たち、わけても臨床を志す人たちに、できるだけ生きた形で精神分析を提示することは、この意味で、精神分析がその生命を維持するためにとても重要なことなのです。

この辺り、ものすごく高い志を感じます(と、私なんぞが上から目線的に言うのが根本的に間違っているくらい)。
そして、この辺りに拒否感を感じる人もいるかもしれないと思います。でも、それはちょっと…いや、かなりもったいないです。批判するにしても、表層的な理解に基づいた批判ってのは結局表層的なものでしかないのではないかと思いますよ。

私は歴史的な視点というものが重要だと考えます。単に精神分析のさまざまな理論を平板に紹介するのではなく、それがフロイトをはじめとする分析家のなかでどのように形をとり、他の分析家や患者との対話のなかで練り上げられて行ったのか、という生成の過程こそを語りたいと思いました。さらに私は、精神分析の実践をおこなっている分析家としての私が語っているという事実を大切にしたいと思いました。ひとつの営みとしての精神分析という視点に根ざして語りたいと思ったのです。

この本が精神分析への興味を掻きたて、もっと勉強したい、分析家になってみたい、分析を受けてみたい、といった気持ちのきっかけになれば、そのようなことに役立つことができれば、私にとって望外の喜びです。

そしてその目的のためもあってか、この手の本にしては相当価格が抑えられていると思いますですよ。ハードカバーじゃないのも、やっぱり多くの人に読んで欲しいということなんじゃないですかね。
ワタクシ的にも相当お勧めの一冊ですので、ある程度ちゃんと読んだら、またご紹介したいと思います。今のところ、ワタクシ的にはリサーチに関しての言及にグッときました。
そして、早くネットで手に入るようにして欲しいです>中の人
そして、上巻ってことは下巻もあるわけですよね。今から楽しみだったりします。

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