ご存知の方も多いかもしれません。
個人のスキルや知識をワンコインで売買できるWebサービスの『ココナラ』。
・ココナラ - あなたの得意でハッピーが広がるワンコインマーケット
その中のサービスとして「木の絵を描く心理テスト(バウムテスト)であなたの性格等を判断し、悩み事解決のお手伝いをします。」ってのを発見しました。
・木の絵を描く心理テスト(バウムテスト)であなたの性格等を判断し、悩み事解決のお手伝いをします。|その他(占い) | ココナラ
いや「発見しました」というか、自ら宣伝されてるんですけどね。
500円でサービスが買えるココナラというサイトで木の絵を描く心理テストで性格を鑑定し、悩み事解決のお手伝いをしています。 ココナラに無料登録するときに招待コード「8xpjk」を入力すると500円分のポイントがもらえます。詳しくはこちら→http://t.co/L1KJ1TQg4R
— バウム (@baumutesuto) 2014, 11月 24
いやー、ご本人はわかってやってるのかわかりませんが「これはひどい」タグをつけたいくらいひどいですね。
そんなわけで、これのどこがひどいのかご説明していきたいと思いますよ。
ひどいポイントその1 結果については完全に投げっぱなし
サービス紹介のページの「購入にあたってのお願い」にはこう書かれています。
バウムテストは万能なものではございません。
競馬や宝くじ等のギャンブルや株やFX等の投資に関する相談は受け付けません。
また、このバウムテストの結果に関していかなる損害に対して一切の責任を負いません。何かの決断にこのバウムテスト診断結果が影響されたとしても最後に決めるのはあなた自身です。
一行目はいいでしょう。その通りです。二行目も…まあいいと思います。
問題は三行目、四行目です。
「このバウムテストの結果に関していかなる損害に対して一切の責任を負いません。」
どんな結果が出ても、一切責任はとらない、と。
通常、心理検査・心理アセスメントというのは、ただ「知りたいからやる」というものではありません。何かに困っている人がいて、その援助の助けとなる(と臨床家が判断する)から実施のです。つまり、検査は何らかの心理的援助の前提となる「手段」でしかないのです。
こちらのサービスの最大の問題点は、バウムテスト自体が唯一の「目的」となっていることです。
「何かの決断にこのバウムテスト診断結果が影響されたとしても最後に決めるのはあなた自身です。」って、占いじゃないんだから…。
そこには心理臨床家としての倫理のかけらも見当たりません。
ひどい話です。
ひどいポイントその2 カテゴリーが「占い」だ
上で「占いじゃないんだから」と書きましたが、このサービスは完全に「占い」カテゴリーに入ってしまっているのです。
・占い(夢占い、相性占い、前世の占い、その他)をするならココナラ | ココナラ
そりゃあ、占いならその結果に対して投げっぱなしにして良いですよね…
…ってんなわけないじゃないですか!(セルフツッコミ)
まともな(多分)臨床心理学者の方々で、バウムテストを専門にされている方もいるわけですよ。
そういう方々はいいんですか?ご自身の研究テーマが「占い」扱いされることに対してはどう思われるんでしょうか?
研究対象としていなくても、日々の臨床の中でバウムを使用される臨床家は多いと思うのですが、その臨床実践を「占い」呼ばわりですよ。
まあひどい話ですよね。
ひどいポイントその3 サービス提供者のプロフィールが一切明かされていない
こうした批判をかわすためなのかもしれませんが、プロフィールが一切明かされてません。謎です。
あの有名な木の絵を描く心理テスト、『バウムテスト』をしているバウムです。
あなたのお悩みに対してバウムテストの結果に基づいたアドバイスをします。
以上がこの方のプロフィールです。
Twitterのプロフィール(@baumutesuto)もほぼ同じです。
仮にこの方が臨床心理士、あるいはそれと同等の訓練を受けた方でなかったとしても、検査を実施し、解釈し、それに基づいたアドバイスを行うということに対する責任というか、倫理については教育されていなければならないと思うのですよね。
この方はそういった教育を受けていないか、あるいは受けていたとしてもそれを無視しているのか…
どちらにしてもひどい話です。
仮に臨床心理士資格保持者だったとしたら、なおさらひどいですよね。理解していてそういった倫理を無視し、さらに批判をかわすために匿名としているわけですから。
いやはや、ひどい話です。
こういう場合、どう対処するのが正解なのでしょうか?
他にもひどい点は色々あるんですけどね。例えば、本来は専門家としてのスキルであり、それ相応の対価を得ねばならないはずのサービスを不当にディスカウントしているとか。
で、色々とひどい話ではあるんですが、じゃあ、どう対処すればいいの?ってことに関しては今ひとつわからなかったりします。
サービス提供者が臨床心理士なのであれば、一般社団法人日本臨床心理士会倫理綱領のどこかには抵触すると思います。しかし、詳しいプロフィールは公開されてませんので、この倫理綱領に照らし合わせてどうこうすることは不可能です。
…と考えた時に、やっぱり国家資格がないとこういうのには対処しづらいなあと思うわけです。
もちろん、例えば前国会で審議されるはずだった(廃案になった)公認心理師資格が成立したとしても、こういう人を処罰することはできません。
でも、それなりに牽制することは出来るんじゃないかと思うんですよね。
よく見ると、この方に限らず『ココナラ』内には怪しげな臭いのする「自称カウンセラー」が山のようにいて、ワンコイン(あるいは無料)での「カウンセリング」を行っていたりします。
Webサービスという極めてアクセスしやすい場所で、こういう怪しげなことが行われているのは、我々の業界的にもかなりマズい状況なのではないかと思う次第なのでありました。
もし皆様の中で「この手の輩にはこう対処した方がいいよ!」的なアイディアをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけますと幸いでございます。