臨床心理学

村瀬嘉代子・青木省三『心理療法の基本[完全版] 日常臨床のための提言』の感想を書いてみるよ

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心理療法の基本

15/01/21のエントリ、【ご恵贈】村瀬嘉代子・青木省三『心理療法の基本[完全版] 日常臨床のための提言』【感謝】でちょこっとご紹介したこちら。

「本書には,読んではっと気づくという即効性もあるが,時間の中で熟成し自分がいくらか変わるという遅効性もある」(青木)

「心理療法に「天性」などということは殆ど関係なく、この道を志し、歩み入ったならば、自分の中の知見(これはただの暗記でなく、自分の経験と知識に照合し、自分の中を潜らせて、自分のものとして納得し、使いこなせるものになっている)を豊かにするべく不断に努め、安易に自分の生の感情に自分を委ねるのではなく、考える、その結果生じる感情を大切にする、という態度を磨いていくことが求められていると思われるのです。」(村瀬)

初級者からベテランまで,治療者のセンス・資質・心理療法に求められる基本的条件を二人の卓越した臨床家が論じる。「村瀬嘉代子の心理療法」を読み解くための最適な副読本であり,心理療法家をめざすすべての人に。

私なりに読み進めてみての感想などを書いてみたいと思いますよ。

とりあえず「タイトルに偽りあり」な感じは否めません。少なくとも帯にある「心理療法入門」は誤りかな、と。

本書に書かれている「心理療法における支持について」(第一章)、「心理療法の留意点」(第五章)、「心理療法では何を伝えるか」(第六章)なんてのは、まさに「心理療法の基本」ではありますが、その内容は少なくとも初心者向けではありません。

対談集なので読むこと自体は初心者でも出来ますし、表面的に理解することは可能だと思います。

ただ、この内容がしっくりと来るというか「腑に落ちる」人というのは、ある程度長い(そして中身のある)臨床経験を経た人だけなのではないでしょうか。

そう、読んでみて思ったんですが、アレと似てるんですよ。

神田橋條治氏の一連の著作、特に花クリニック刊の『対話精神療法の初心者への手引き』を思い出しました。

対話精神療法の初心者への手引き』も明らかに初心者向けではあります(だってタイトルにそう書いてありますからね)が、理解できるのは臨床実践を始めてそれなりの経験を積んでからようやく…という感じの本だと思います。

ただ本当の意味で「初心者向けではない」「入門書ではない」とは言っても、初学者が読んでムダになるかというと、そういったことは全くないとワタクシ的には断言します。

臨床経験のほとんどない人が、本書を読んで少しでも何か残るものがあればそれでいいんじゃないかと思うのですよ。それがいつか、臨床経験の中でストンと「腑に落ちる」瞬間があるのではないかなあという気がします。

本書の解説にある

「本書には,読んではっと気づくという即効性もあるが,時間の中で熟成し自分がいくらか変わるという遅効性もある」(青木)

というのは、まさにそのことを言っているのではないかと。

そんなこんなで初学者からベテランまで、幅広い層にオススメできる名著です。実際、旧版もそういった位置づけだったと思います。

皆様、是非ともポチっとどーぞ。

…という感じで、久々のブログ更新になりましたが、お贈りいただいた本で紹介していないものがあと何冊かありまして、早急に記事を書かせていただきたいと思う次第であります。関係各位には大変ご迷惑をおかけしますが、今しばらくお待ちいただけたらと存じます。

明日も更新がんばるぞ、と。

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