臨床心理学

発達心理学と比較行動学と我が家の猫 #ロテ職人の臨床心理学的Blog10周年 @thirdplacem

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想像するちから

thirdplaceM(サードプレイス・エム)さん(ブログ:昨日より少し素敵な今日への心理学 TwitterID:@thirdplacem)よりご寄稿いただきました。
どうもありがとうございます。


ロテ職人様のブログをご覧の皆様はじめまして。thirdplaceMと申します。

2015年1月より「昨日より少し素敵な今日への心理学」と題しブログを運営させていただいております。

いつも拝見させていただいている、ロテ職人様のブログに投稿させていただくという機会をいただき、僭越ながら、また、取るに足らないような内容ではありますが、お読みいただければ嬉しく思います。

発達心理学の知見の一部を、比較行動学におけるチンパンジーでの見解を参考にして、我が家の猫について試考してみました。

1.社会的微笑

生後2か月から3ヶ月頃になると乳幼児は他者を知覚するようになり、他者との相互関係が成り立ってくるようになります。それまで見られていた新生児微笑は減っていき、社会的微笑が出現してきます。つまり、誰にでも笑っているのではなく、こちらが笑いかけると、笑い返してくれるようになります。

チンパンジーの赤ちゃんも新生児微笑をすることが確認されていて、生後2ヶ月を過ぎると、新生児微笑から社会的微笑へ移っていくことが観察されているようです。つまり、チンパンジーの親子も、人間と同じように「見つめ合い」、赤ちゃんは母親の視線に敏感に反応をするようになるのだそうです。

このように、二項関係の成立に関してチンパンジーは、人間と同じように発達していくようです。

そして、我が家の猫・・・。

Seira2

話しかければ振り返り、顔を近づければ乗り出してkissをする、呼べばやってくるし、怒って睨むと小さくなる・・・。

とりあえず、あなたとわたしの二項関係はクリアのように思います。

2.共同注意

さて、この先は人間とチンパンジーの発達に差があらわれてきます。

乳幼児は母親の視線を追って、母親が見ているものを見るようになったり(視線追従)、自分が見ているものを母親が同じように見ているかを確かめたり(共同注意)、母親の行動や表情を手がかりにして自分の行動を考えたり(社会的参照)といったことが出来るようになってきます。

「あれ、見てよ!」と指を差したものを、乳幼児が見るようになると、共同注視の成立です。あなたとわたし、そしてもう一つの物や人との三項関係です。

チンパンジーは、二項関係のままで、三項関係は成立しないそうです。例えば、視線追従は成立するものの、基本的に自分の視野にあるものであり、視野にないものを指さしても、チンパンジーの赤ちゃんはそちらを見ることはないのだそうです。

我が家の猫にも、指差しを試してみました・・・。

Seira4

指の動きが大きい時は、その動きが気になってつられてそちらを見ることはありますが、指の方向に何があるのかなといった感じでそちらを見ることはありません。

やっぱり、三項関係は成立しないのでしょうか・・・。

しかし、エサが欲しい時に、自分の餌入れの容器と、飼い主の顔を交互に見て、「お腹すいた」と訴えていることがあります。また、猫がTVを見ている途中に飼い主のほうを振り返り、「TV見ないの」とTVを指差した時は、TVの方をちゃんと見ます。

微妙に、三項関係が成立しているかも?と妄想を抱かせるような行動がみられます。

また、初めての行動をしようとするときは、必ず飼い主の表情を伺っています。よく、悪さをしようとするときに、顔色を伺うといった光景が思い浮かびませんか?

これは、考え方によっては社会的参照をしているとも思えるのですか・・・。

3.観察学習

チンパンジーの学習は、基本的に観察することで成り立つそうです。人間との大きな違いは、子どもと母親と道具の三項関係で学習が進むのではなく、子どもと道具、子どもと母親という2つの二項関係が存在する中での観察学習が行われるのだそうです。

つまり人間の場合は、教えてもらっている子どもは、教えてくれている母親の顔を見るのだそうですが、チンパンジーにはそれがないとのことです。

我が家の猫はどうでしょうか・・・。

当然、教えてもらっているという意識もないので、二項関係に基づく観察学習と試行錯誤学習です。しかし、その観察力の鋭さは並大抵ではないと思います。掛けがねを簡単に開けてしまったり、引き戸を開いたり・・・その個体の能力からは想像できないような行動をとることがあります。

Seira1

また、猫と飼い主Aと飼い主Bという三者関係での空間において、自分(猫)の位置を図っている様子が見られることもあり、今の状態で、自分(猫)は飼い主Aと飼い主Bのどちらに受け入れてもらえるだろうか・・・と表情を読んだりしていることも多くあります。ゴロにゃんする相手を見極めている・・・。

三項関係が成立していないとすると、これはどういう理論で説明できるでしょうか。

「うちの子(猫)は、他の子(猫)とは違う・・・」とか、
「この子(猫)特別なの・・・」といったような、
手前味噌的な妄想が入っていることは否めませんが・・・。

猫と20年近く生活してきて、一般的に言われているように、“猫はわがままで自分勝手である”という考え方は少し違うような気がしています。上述のように、三項関係が部分的に成立しているのではないかと思われるような行動をちょくちょく見かけたりすることもありますし。

猫は猫なりに、“場の空気”を読んで生活しているのかもしれません。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

<参考文献>
水野友有(2004)チンパンジーの親子のコミュニケーション:生後4ヶ月間の発達 滋賀県立大学生活文化学専攻博士論文(未刊行).
Okamoto,S.,Tomonaga,M.,ishii,K.,Kawai N.,Tanaka,M.,Matsuzawa,T.(2002),An infant chimpanzee(Pan troglodytes) follows human gaze. Animal Cognition, 5(2), 107-114.
氏家達夫・陳省仁 (2006) 基礎発達心理学 放送大学教育振興会.


改めまして、ご寄稿いただきありがとうございました。

ぬこかわいいよぬこ

いえいえ、チンパンジーの知見から猫の行動をしていこうという野心的な試み、興味深く読ませていただきました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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