心理・精神医学本

Prifitera, Saklofske, Weiss (編) 上野一彦(監訳)『WISC-IVの臨床的利用と解釈』が一般書店では販売してない件

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日本版WISC-IVが出たのって2010年12月だったんですね。もう1年半も経ってるのか…個人的にはもっと最近のような気がしてたのですが。そう考えると、子どもの心理臨床実践に携わる方の中には既にお使いの方もたくさんいらっしゃると思うのですが、使い勝手はいかがでしょうか?

やはり一つ問題になるのは「マニュアル的な書籍が少ない」というか「ほとんど出てない」ということだと思います。そんな中、今年の5月にこちらが刊行されてたのですね。


WISC-IVの臨床的利用と解釈日本文化科学社
パンフレット(pdf)

WISC-IVの臨床的利用についての解説書
日本版WISC-IVユーザーの検査結果の解釈に役立つ内容

第1部では,「臨床的解釈の基礎」として,WISC-IVについてのアメリカでの研究,FSIQの解釈,一般能力指標(GAI)の紹介と解釈,指標得点の解釈,WISC-IVインテグレーテッドの紹介を掲載。
第2部では,「臨床事例アセスメント」として,LD,ADHD,ギフテッド,知的障害,言語障害,聴覚障害,脳障害などの臨床群へのWISC-IVの利用例とケース研究を掲載。

原著はこちらです。

ちなみに原著の方は2nd.エディションも出てます。

で、こちらの日本語訳版なのですが「一般書店での購入はできません」ということになっているのだそうな。

これは何でしょうかね…やはり問題の詳細について詳しく述べられているからなのでしょうか。

確かにこの手の心理アセスメントにおける課題や刺激の公開というのは色々な問題がつきまといます。私が今、WAIS-IIIを受けたとしたらおそらく各指標で130前後を叩き出すのは余裕でしょうけれども、それが私の能力を反映しているかというとそういうことは全くなく、私が全ての問題の正解を知っていて、さらに何度も施行しているからに他ならないわけです。

それは極端な例ですが、課題が公開されてしまうことで妥当なアセスメントができなくなるということは容易に考えられるわけで、そういった意味では「一般書店での販売はしない」という形にするのが倫理的なやり方であると言えるでしょう。

ただ、書店で買えないってのは使い勝手としては微妙な気もしますけどね。実際に中身を見ていないので詳しいことは言えませんが、課題内容について公開されていないのであれば、通常の流通ルートに乗せるのは問題ないとも思います。

あるいは、この本が「日本語版について書かれているのではない」というところもあるのかもしれません。これが日本語版でのデータを踏まえた内容なのであれば相当数売れるのだと思いますが(実際、ワタクシのブログ経由でさえWAIS関連本WISC関連本はかなり出てます)、原版のWISC-IVに関する訳本ですから。ぶっちゃけてしまうと「それほど売れない」という予測もあるのかもしれません。そう考えれば、流通上のコスト削減のために一般書店を通さないってのはいいアイディアかもです。

もし一般書店での販売をしない理由が前者なのだとしたら、今後、関連する書籍がどのようなルートで販売されるようになるのかは大変気になるところです。ただ、書いているうちに実際の理由はむしろ後者なのではないか?と思うワタクシもいるのですが。

ともあれ、必要な人にとっては必要な一冊だと思いますのでそんな方は是非どーぞ。ワタクシ的には今後、関連本の出版がどのような形になるのか見守っていきたいところでございます。

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