先日お送りいただきましたこちら。
多職種協働現場で働く精神保健医療福祉分野の医療者を対象に,現場で起こる様々なエピソードから紡ぎ出された医療現場のエッセンスを平易な文章で分かりやすく解説.施設のマニュアルやガイドラインからはこぼれ落ちるが,どこの現場でも起こり得る“ささやかだけれども,大事なエッセンス”が満載の一冊.
出版社の紹介ページはこちら。
ようやく少し余裕ができたので簡単に感想を書きつつご紹介いたしますよ。
まずこちら、サブタイトルに「援助者必携 デイリーケアのエッセンス」とあります。一瞬「デイケア」と空目してしまいそうになりますが「デイリーケア」です。
「はじめに」では以下のような説明がなされています。
副題となっている「デイリーケア」はいわゆる精神科デイケアのことではありません。
「精神科デイリーケア」とは、* * * * *
精神科疾患によってさまざまな生きづらさを抱えた人たちが、比較的長い時間を共にするような場での、継続的かつ日常的なケアやサポート
* * * * *
を意味しています。
とのことです。つまりデイケアのみならず、様々な精神保健医療福祉分野で働く、様々な職種にとって役に立つ内容が書かれた本であると言えるでしょう。
多職種向けということで、心理職としての専門性を求める向きにとっては物足りないかもしれませんが、とにかく読みやすいです。取り上げられている具体的なケースというかエピソードは、こうした分野で働く者にとっては「あるあるネタ」であり、そうした意味でも読み物として面白いです。
面白いと同時に、なんというか(当事者・援助者ともに)困っている部分が生き生きと伝わってきますし、それだけにこの本が役に立つ機会というのは結構多いのではないかと思います。
同じく「はじめに」にはこう書かれております。
地域に暮らす方々のデイリーケアやサポートする多職種恊働現場現場にも、それ特有の大変さがあり、専門性があります。その分、やりがいや面白みもあります。それは皆さんが感じていらっしゃる通りだと思います。ですが、その手のことを語る書物は圧倒的に少ないのが現状です。運営マニュアル的なものはあっても、そこでの専門性や面白みについて書かれたものは(狭義の治療や援助に比べて)少ないといえます。
確かに類書は少ないですよね。特にそれぞれの職種の専門性に特化した内容の本であれば、探せばそれなりにありそうですが、私が知る範囲ではこうした本はなかったように思います。
そんなこんなでサブタイトルに「必携」とあるように、精神科領域で働く多くの専門家にとって役立つ一冊なのではないでしょうか。少なくとも価格分の元はとれる(とか言っちゃいけないのかもしれませんが)んじゃないかと思いますですよ。
興味のある方は是非ともポチっとどうぞ。
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最後にこれは今回ご紹介した本の内容からは離れるのですが…編著者の宮脇氏、そして著者の一人である百田氏はいずれも心理職です。巻末のプロフィールの職種はいずれも「心理師」と書かれています。
宮脇氏は全国保健・医療・福祉心理職能協会(全心協)会長であり、心理職の国家資格化の問題を協議する団体の一つ、医療心理師国家資格制度推進協議会の副会長でもあります。ご自分のご著書の中で、今、敢えて職種を「心理職」や「臨床心理士」ではなく「心理師」とされたのには様々な思い入れがあったのではないかと愚察いたします。
実は私は個人的に現在の心理師(仮)の資格に対して手放しで賛成の立場ではありません。ただ、今後も国家資格化の問題について様々な困難があるかと思いますが、一日でも早い、そして少しでもよりユーザーの役に立つような形で国家資格化がなされますよう、宮脇氏の活躍を陰ながら応援させていただきたいと思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。
…って完全な私信ですね。失礼いたしました>皆様