公認心理師

「臨床心理士有資格者は現任者講習を受ける必要はかなり低い」は本当か?

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和光大学青年心理学研究室

昨日のエントリ、日本心理研修センターが公認心理師の現任者講習会実施機関に指定され「講習会の概要」が公表されたけど…の文中で、ワタクシは「自分がどんなルートでの受験になるか」ということで、サクッと“「現任者ルート」(附則第2条第2項)”ってことにしてしまっておりました。

一応、これまた文中でリンクを貼らせていただきました、公認心理師推進ネットワーク様の公認心理師受験資格について―CPNガイド―を参照したのですが、改めて検証してみたいと思います。

…と言いますのも、本日、こちらの記事を発見したからなのでございます。

公認心理師現任者講習を申し込む前に確認すべきこと和光大学青年心理学研究室

はい。確かにこちらの記事。心理職の皆さまにおかれましては、現任者講習を申し込む前に必ずお読みいただきたいです。とても良いことが書かれていると思います。

ただ、気になるのがこちら。

まず初めに,現在すでに臨床心理士を有している方,
あるいは臨床心理士指定大学院を修了し,
受験資格を有している方
は,
現任者講習を受ける必要はかなり低いです。
臨床心理士資格又は受験資格を有している方は,
大学院で経過措置に該当する単位を全て
取得している可能性がかなり高いです

そうなると,Gルート(現任者ルート)ではなく,
Dルートとなります。
このDルートは,講習会の受講が不要ですので,
そのまま国家試験を受けることができます。
ですので,臨床心理士資格又は受験資格を有している方は,
修了した大学院に問い合わせて,
ちゃんと自身が取得した単位が,経過措置に
対応しているかどうかを確認してください。

修了した大学院に問い合わせ、単位が経過措置に対応しているかどうか確認をするのは必須だと思います。

しかし、本当に「現在すでに臨床心理士を有している方,あるいは臨床心理士指定大学院を修了し,受験資格を有している方は,現任者講習を受ける必要はかなり低い」のか?そして「臨床心理士資格又は受験資格を有している方は,大学院で経過措置に該当する単位を全て取得している可能性がかなり高い」のかは非常に気になります。

というわけで、ワタクシなりに検証してみたいと思います。

とりあえず、ワタクシの個人的な体験として。

私は平成8(1996)年度の指定大学院制度導入後の大学院入学ではありますが、まだ移行期間であり、指定大学院の修了が必須となった平成19(2007)年度以前の臨床心理士資格試験受験でした。そのため、指定大学院のカリキュラムでは受けておりません。

大学院での取得単位というか科目としては、確か「臨床心理学特論I」とか「臨床心理学特論II」とかであり、明確に“「①保健医療分野に関する理論と支援の展開」に相当する科目”であるとは言えないため、恐らく経過措置に該当する単位には相当しないはずです。まあワタクシの出身大学院が特殊である可能性もあるわけなのですが。

んじゃ改めて確認してみましょう。

公認心理師推進ネットワーク様の公認心理師受験資格について―CPNガイド―より引用しますよ。

とりあえず最も大事なのはここですかね。

この旧院ルートの必要科目については、資料22ページからの「法附則第2条第1項の省令で定める科目について」以下の説明にあります。23ページ上から5行目を見ると「合計6科目以上相当」とされています。その6科目の数え方については、資料25ページ「受験資格の特例について①」に詳しく書かれていますのでご覧ください。特に、「①保健医療分野に関する理論と支援の展開」に相当する科目が必須であること、この①を含んで、「①保健医療」「②福祉」「③教育」「④司法・犯罪」「⑤産業・労働」の5分野のうちから合計3科目以上に相当する科目が必要であることに注意が必要でしょう。

では、日本臨床心理士資格認定協会が指定大学院を指定する際の要件はと言いますと…

指定大学院とは、学校教育法に基づく大学院(臨床心理学研究科等)について、当協会が、臨床心理業務を行う専門職としての「臨床心理士」の専門資質レベルを一定水準に維持し向上を図ることができると認め、大学院指定制度によって指定した大学院のことです。 この指定大学院は、厳正な審査のもとに6年間の指定を受けています。その3年目に実地視察による中間評価を受け、指定期間が満了する6年目には指定継続審査を受けることになっています。この実地視察や指定継続審査は、大学院の名称や指定領域の組織構成、担当教員の適正な数と内容、臨床心理実習および有料附属臨床心理相談室等の施設と運営実態、学外実習施設の整備状況、適正な教育カリキュラムに基づく授業の実施状況等におよびます。

臨床心理士養成大学院認証事業 | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会より引用)

うーん。わかりづらいです。ということで、大学院指定申請に関する参考資料(PDF)ってのを見てみましょうか。

(4)大学院の課程は、以下の臨床心理学又はその近接領域の授業科目を開設すること。なお、必修科目の「特論」「演習」は、専任の臨床心理士有資格者をもってあてる。また、「臨床心理実習」は、学内外の実習施設において、実際に受理面接、心理査定、心理面接などを行い、ケースカンファランス、スーパーヴィジョンなどを含むものとする。実習に関する科目は、複数の指導者が担当し、すべて臨床心理士の資格を有する者であること。かつ、必修科目及び選択必修科目E群は、当該専攻(コース・領域)者に特化して開講されるものとする。
① 必修科目・単位:
臨床心理学特論… 4単位
臨床心理面接特論… 4単位
臨床心理査定演習… 4単位
臨床心理基礎実習… 2単位
臨床心理実習… 2単位

この必修科目を“「①保健医療分野に関する理論と支援の展開」に相当する科目”や“「①保健医療」「②福祉」「③教育」「④司法・犯罪」「⑤産業・労働」の5分野のうちから合計3科目以上に相当する科目”に読み換えるというのは、なかなか無理筋なのではないかと思います。

② 選択必修科目群:前項①に定める必修科目以外の臨床心理学又はその近接領域に関連する授業科目(実習を含む)は、当分の間、以下の領域に関連する科目とする。

A群 心理学研究法特論 心理統計法特論 臨床心理学研究法特論
B群 人格心理学特論 発達心理学特論 学習心理学特論 認知心理学特論 比較心理学特論 教育心理学特論
C群 社会心理学特論 人間関係学特論 社会病理学特論 家族心理学特論 犯罪心理学特論 臨床心理関連行政論
D群 精神医学特論 心身医学特論 神経生理学特論 老年心理学特論 障害者(児)心理学特論 精神薬理学特論
E群 投映法特論 心理療法特論 学校臨床心理学特論 グループ・アプローチ特論 臨床心理地域援助特論

この内、D群というのは“「①保健医療分野に関する理論と支援の展開」に相当する科目”になりそうですが、あとB群は“「③教育」”分野になりそう…かな?その上であとはうまいこと、「②福祉」か「④司法・犯罪」か「⑤産業・労働」かのどれかに相当する科目の単位が取得できていればいいんですが…指定大学院のカリキュラムってそんな充実してましたっけ?

別に公認心理師制度における単位認定が充実しているとは言いませんが、指定大学院のカリキュラムとは微妙にかぶってないように思うのですよね。

確かに以上の条件を満たす人がいないわけではなさそうですが、「現任者講習を受ける必要はかなり低い」とか「大学院で経過措置に該当する単位を全て取得している可能性がかなり高い」ってのは無理があるんじゃないかなと思うわけでございます。

私のような指定大学院制度以前の大学院修了者であればなおさらなのではないでしょうか。

というわけで、かなりザックリとした検証(というほどのことでもない)なので、色々と穴もあると思います。

ワタクシの誤解・誤認等ありましたら、ご指摘いただけますとありがたいです。よろしくお願いいたします。

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